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フルHDは当たり前、春のデジタルビデオカメラ総括麻倉怜士のデジタル閻魔帳(2/4 ページ)

» 2008年04月07日 15時38分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

――それでは、市場へ登場している代表的なHDビデオカメラについてコメントをお願いします。まずはソニーの「HDR-SR12」です。

麻倉氏: AVCHDを採用しながらソニーが自社ビデオカメラを横方向1440ピクセルにとどめていたのは、業界の七不思議ともいえるのです。ですが、同社は新機軸・新技術へすぐさま移行しないメーカーという側面も持ちます。新しい技術を使いこなせると判断するまで、移行期間的な製品を出すとも言えます。

photo ソニー「HDR-SR12」

 これまでの同社のAVCHD採用HDビデオカメラも画質的にはかなり努力していましたが、フォーカスやコントラストが甘めで、「ハイビジョン」というにはおっとりとした印象が否めませんでした。それは、AVCHDというフォーマットに対する研究が進められている段階だったからではないでしょうか。

 AVCHDはフォーマットそのものからしてS/N指向が強いので、映像にも黙っているとその傾向が出てしまいます。その原因を見極めて対策を取り、なおかつハイプロファイルも採用したことで、ついにフルHDに踏み込めたのです。

 さて、その「HDR-SR12」ですが、実際に使ってみるとなかなか面白いです。フルHD録画モードと1440モードでは映像の傾向が異なり、1440モードはハイコントラスト指向です。先鋭感があり、従来までの1440モードよりクッキリとした映像をとらえます。

 一方のフルHDモードは従来のAVCHD/1440モードが持つ優しい雰囲気をフルHDに展開した感じです。輪郭を強めるというより、全体的な先鋭感を増しつつ、バランスを良くしているという印象を受けます。AVCHDという新たなフォーマットを使うにしてもすぐに全力疾走するのではなく、徐々にトライするという同社の取り組み方を感じさせますね。1440モードのコントラスト感、先鋭感という記号性をフルHD撮影時にもナチュラルに反映されていれば、さらに良い製品になると感じました。

――次はパナソニック「HDC-SD9」です。同社はSDメモリーカードにフルHD記録というソリューションの提案を「カードなフルハイビジョン」として行っていますね。

麻倉氏: 前モデル(HDC-SD5/7)の投入から1年、AVCHDのブラッシュアップに時間をかけたこともあって非常に精細感と力感のある映像に到達しています。同社が「SDカードにフルハイビジョン」という提案を開始してからは本製品が3代目となりますが、これまでの製品は同じAVCHDを採用するソニー製品に比べてシャープネスでは勝るものの、優しげに見せるというフォーマットに起因する傾向も併せ持つ感があったことは否めません。

photo パナソニック「HDC-SD9」

 ですが、新製品は従来製品からの差別化が図られ、細部の出方が鋭く、輪郭に力が入っています。これまでは粒子感の再現に力が注がれ、結果として、全体的な細やかさで微妙なニュアンスを出すように設計されていたように思いますが、新製品はそれにプラスして、力感のある、切れ味を重視した設計がなされているように感じます。「いかにもフルHD」という精細感が得られます。

 個人的な好みからすれば、やや輪郭に力が入りすぎている感もあります。従来からの微粒子感、優しさがより強く出ていれば良かったかとも思います。

 特筆すべきはレンズの収差が少ないことです。四隅のゆがみ、色ズレも少ないのです。フルHD映像は大画面で視聴することになりますから、レンズ収差は業界的にも課題とするべきですが、本製品は優れています。ただ、暗所で白色LEDを撮影した際、赤い偽色が出るのは気になりましたね。

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