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» 2008年05月14日 21時18分 UPDATE

山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」Vol.14:ビートルズの名曲満載の米国盤BD「ACROSS THE UNIVERSE」をヤマハ「DSP-AX863」で堪能する (1/2)

手頃な価格のAVアンプが、HDオーディオに対応し始めた。なかでも4月下旬に発売されたヤマハの「DSP-AX863」と「DSP-AX763」は面白い。ベースは同じ機種でも、実際に聴き比べてみると性格の違いがはっきりと分かる。

[山本浩司,ITmedia]

 昨年の暮れ以降、HDオーディオに対応した高級AVアンプが各社から登場し、大きな話題を集めた。AVアンプの「HDオーディオ対応」とはすなわち、HDMI Ver.1.3aの入力端子を持ち、ドルビーTrue HDやDTS HD MA(マスターオーディオ)といった圧縮解凍時に情報欠落の生じないロスレス圧縮音声のデコードやマルチチャンネル・リニアPCM 音声の伝送を可能にした製品という意味(1080p映像を入/出力するリピーター機能も必要だ)。

 本連載でも、ヤマハパイオニアデノンなどのHDオーディオ対応の各社フラグシップ・モデルを採り上げ、それぞれの魅力について言及してきたが、最新のBlu-ray Discの映画/音楽ソフトのほとんどにHDオーディオ音声が収録されるようになり、このデコード機能の重要性がより高まってきた。この春以降は、比較的手頃な価格の中級機から入門機のAVアンプが、HDオーディオ対応を果たしていくものと思われる。

 実際、ぽつぽつと該当する製品が出始めているが、なかでも4月下旬に発売されたヤマハの「DSP-AX863」(11万250円)と「DSP-AX763」(8万4000円)の出来が素晴らしく、大きな感銘を受けたので、その詳細をお伝えしたい。

photophoto 「DSP-AX863」(11万250円)と「DSP-AX763」(8万4000円)のデザインは共通。AX763にはブラックモデルとゴールドモデルが用意されている

 両機とも、7ch分のパワーアンプを搭載し、サブウーファー出力を2つ用意した“デュアル7.2ch”対応AVアンプ。デュアル7.2ch対応とは、サラウンドバックスピーカーを使用する7.1ch再生とヤマハ独自のフロント・プレゼンススピーカーを使用する7.1chシネマDSP再生をサラウンドプログラムに応じて自動選択できるという意味である。

 ただし、DSPの処理能力の関係上、ドルビーTrue HDやDTS HD MAのHDオーディオ音声に「シネマDSP」を掛け合わせることはできない。シネマDSPとは、ヤマハが時間をかけて採取してきた世界中の音のよいホールやライブハウスの音響データを元にそれを調理、デコーデッド・サラウンド・サウンドに付加して、臨場感あふれる豊かな音場を再現するというもの。なお、シネマDSP自体は、音質をレベル軸、時間軸両面から見直して練り上げた新世代の「シネマDSP-Plus」に進化している。ロッシーコーデックのドルビーデジタルやDTS音声にこのシネマDSP-Plusを掛け合わせてみて、確かにその音質向上が確認できた。

 また、別売りのiPod用ユニバーサルドック「YDS-11」(1万500円)やBluetoothオーディオレシーバー「YBA-10」(1万8480円)のための接続端子を装備しており、手持ちのiPodやBluetooth対応PCなどの音楽を、両機とつながったスピーカーシステムで楽しむことができる。同時にAX863/763ともに圧縮音源で失われがちな高域・低域情報を補間する「ミュージックエンハンサー」機能を装備する。この効果はたいへん分かりやすく、音の厚みや華やかさに欠けるiPodに収録された音楽が、イキイキとした生命力にあふれたサウンドに生まれ変わり、おおいに驚かされた。

 AVアンプって、実際に使ってみると、初期設定がややこしく使いこなすのがタイヘンということがよく分かる。イノベーター層やアーリーアダプター層を想定した高級機ならまだしも、入門〜中級機では、使い方が分からない、難しすぎるというのは、商品として致命傷になりかねない。

photo AX863の横に置かれているのがYPAO(Yamaha Parametric Acoustic Optimizer)用の付属マイク

 近年のヤマハ製AVアンプは、ホームシアター環境を構築するのに必要な設定・調整を自動化して、初めてAVアンプを買った方でも簡単に快適な再生環境を実現できるYPAO(Yamaha Parametric Acoustic Optimizer)を搭載しており、その心配はない。付属のマイクを本機に差し込むだけで、自動的に調整モードに入り、スピーカーの有無と位相、スピーカーサイズ、各スピーカーの音量差、スピーカーの距離差、スピーカーの特性差の5項目を自動的に測定して最適化してくれるのだ。ややこしい初期設定から解放されるこの機能、実際に使ってみるとそのありがたみがしみじみと実感できる。

 さて、AX863とAX763、仕上げは前者がブラックのみ、後者はブラックとシルバーの両方が用意されるという違いはあるが、実物を前にするとルックスはウリふたつ。資料に目を通しても、出力表示が微妙に違う(AX863が各ch105ワット、AX763が各ch95ワット)ことと、HDMI入力の数(AX863は3、AX763が2)、ABT製の1080p対応ビデオアップスケーラーの有無くらいである。

 では、2万5000円強の価格差は何を意味するのか。それは、高音質化のカギを握る電源部に対する物量投入の差なのである。AX863はAX763をベースに、同社技術陣が試聴を重ねて開発した大型の電源トランスやカーボンシースに収められたブロックケミコン、ショートバリア・ダイオードなどがおごられている。AX863は、いわば一歩上の音質を目指した“カスタムチューンド・モデル”。10万円前後の製品にこういうコンセプトの製品を投入するのが、いかにも専業メーカーのヤマハらしいし、こういう展開こそがAVの趣味性を高めるアプローチだとぼくには思える。

 実際に両機を聴き比べてみたが、音の透明感、弱音部の気配の再現、演奏のニュアンスの表現力などで、AX863はAX763を大きく上回るのが実感できた。AVアンプも電源部を強化することで、如実に音の品位が向上することが実感でき、たいへん興味深く思えた。しかし、AX763の屈託のない、明るい陽性のキャラクターのサウンドもぼくにはたいへん好ましく、爆音系アクション映画やロックのライブ作品などがお好きな方は、ちょっとやんちゃなAX763のほうがよいと思われるかもしれない。

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