コンパクトデジカメからのステップアップで次にハマるのが「ピントの合う範囲(被写界深度)が狭い」ということ。慣れないとピンボケ写真を量産しちゃいかねないくらい違う。
ピントの合う範囲が狭いので、ちゃんと意図したところにピントを合わせないといけないということだ。
どのくらい狭いのか。極端に被写界深度が浅い写真を撮ってみた。
なんてことない、ふだん使ってるバッグの金具部分だが、被写界深度が浅いので前景も背景もきれいにボケて妙にきれいな写真になってる。一種の「ボケ・マジック」である。
このように、なんてことない身近なものでも前景と背景がきれいにボケたらきれいな写真に見えたりするのである。
それには、被写界深度の基本を知っておくといい。
の3つだ。
例えば「広角で風景を撮る」ときは、広角でなおかつ被写体は無限遠に近い遠さなのだから、適度に絞ってやれば全体にピントが合った写真になる。
望遠で人物を撮るときはピントの合う範囲が狭いので絞りをうまく開けてやれば背景がボケたカッコいい写真になる。
これは300ミリ(35ミリ換算で450ミリ相当)の超望遠レンズで撮った写真。背景の海が大きくボケて人物がくっきり撮れてる。
これを撮ったレンズはそんなに高級なものじゃない、「70〜300ミリ」を持つ一般的なデジタル一眼レフユーザーが超望遠レンズが欲しいと思ったとき、最初にそそられるレンズだ。
厄介なのは被写体が近距離の時。
被写界深度が浅い=それだけピントがシビアになるということ。ちょっと風が吹いたとかちょっとカメラが動いたというだけでピントの山がずれる。
うまくいくと、ピントを合わせたいところはシャープに、それ以外はいい感じでボケた一眼レフならではの写真になる。手軽にカッコいい一眼レフっぽい写真をとるなら、ボケを生かすのが一番。
背景に大きくぼかしたお城を入れてみた。
コンパクトデジカメでは絞り値を意識することはあまりなかったと思う。なぜなら、もともと被写界深度は深いし、絞りもF2.8-8.0くらいの狭い範囲でしか変えられないし、オート系コンパクト機にいたってはF2.8と5.6(とか8.0とか)の2パターンしか持ってないことも多いからだ。だいたい、絞り開放(一番開いた状態)で撮っておけば問題なかったからである。
一眼レフだと例えば「F2.8-22」くらいある。
選択範囲が広いのだ。
ちなみに、カメラの世界では「2倍」を「1段」と呼ぶ。シャッタースピードの場合、1/2にすることを「1段下げる」、2倍にすることを「1段上げる」と、いう。
1/30秒の1段上は1/60秒、1段下は1/15秒だ。
ISO100とISO200もそう。ISO100がISO200になると1段分明るくできるので、シャッタースピードを1段上げられるわけだ。
で、絞り値も。ただし、ルート2ずつ上がっていく。めんどくさいけどそういう計算になってるのだ。およそ1.4倍ずつ。
で、頭に「F」ってつける。F2.8-F22の場合は「F2.8→4.0→5.6→8.0→11.0→16→22」と7段分あるのだ。数字が増えるほどレンズを通る光量が減る=暗くなる。
ちなみに、F2.8の下はF2.0、その下はF1.4である。F1.4やF2.0というレンズはたいていズームのない単焦点レンズ。絞りを1段開くとシャッタースピードが倍になるので、F1.4なら室内でも十分なシャッタースピードで撮ることができる。
これは「50mm F1.4」という明るいレンズで撮った写真。顔にだけピントが合っていて、その前後が大きくボケてるのが分かる。おかげで背景の部屋が汚いのもごまかせる。なんてことない写真でも「きれいなボケは難隠す」である。
実際、コンパクトデジカメと一眼レフではどのくらいピントの合う範囲は違うのか、撮り比べてみた。被写体との距離は50センチくらいで、焦点距離は35ミリ換算で約5〜60ミリくらいである。
見比べると、コンパクトデジカメの被写界深度は、デジタル一眼レフのF16と同じくらいっぽい。これくらい違うのだ。
同じような範囲が写るレンズ(つまり画角が同じ。35ミリフィルム換算での焦点距離が同じ)の場合、撮像素子が小さければ小さいほど被写界深度は深く、大きいほど浅くなる。その差が出てるわけだ。
ちなみに、さっきのお城をバックにしたカモの写真はF5.6で撮ったもの。それをもうちょっと絞り込んで撮ってみた。
背景の写り具合が大きく違うのが分かると思う。
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