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「目で見たままをそのままに」――FinePix F100fd「ワイドダイナミックレンジ」(中編)あのデジカメ、ココが気になる

» 2008年05月30日 08時30分 公開
[小山安博,ITmedia]
photo 話をうかがった同社 電子映像事業部 商品部 担当課長の田中宏志氏(右)と同・河原洋氏(左)

 富士フイルムの「FinePix F100fd」は、ダイナミックレンジを従来比400%にするというワイドダイナミックレンジが特徴で、撮影してみると実際に効果のほどがうかがえる結果となっていた(関連記事)。では実際のところ、「ダイナミックレンジの拡大」はどのような機能なのか。富士フイルムに話を聞いてみた。

――デジカメのダイナミックレンジは狭いといわれていますね

田中氏: 確かに、フィルムのみならずレンズ付きフィルム「写ルンです」と比較すると、白トビや黒つぶれなど、デジタルでは実は写っているようで写っていないものが多いですね。

河原氏: フィルムとデジカメを比べると圧倒的にフィルムの方がダイナミックレンジは広いです。ただ、フィルムはプリントしますし、ネガだとラティチュード(露光の範囲、露光寛容度)は広いですが、ネガだけでは見ませんので、そこで比較しても意味がありません。印画紙によっては白トビもしますが、フィルムだと調整できますので、結果的にラティチュードは広くなります。デジカメの場合、256階調の中で表現しなければならないので、情報量としては狭いですね。

photophotophoto ダイナミックレンジ拡大の効果。左から100%、200%、400%。特に肩口や襟に拡大の効果が見て取れる

――今回、FinePix F100fdにダイナミックレンジ拡張機能を採用した理由はなんでしょうか

田中氏: これまで「いかにきれいに撮れるか、目で見たものをよく撮れるか」ということを考えて高感度撮影や顔検出機能に取り組んできました。この次に必要なのがダイナミックレンジだと考えました。顔検出で主要被写体を検出し、背景の明るさに引きずられないように撮影すると、今度は背景が写らなくなる――。そうした事態を避け、キレイな写真を撮るための基本技術として導入しました。

photo 「FinePix F100fd」

 ダイナミックレンジ拡張は広角レンズとも相性のいい技術で、FinePix F100fdには35ミリ判換算で28ミリからの広角レンズを搭載しています。特に風景撮影では、青い空や日陰のために輝度差が大きくなりがちですが、そういう場面に適しています。

河原氏: 「目で見たままをそのままに」という考えでカメラ作りをしていますが、最初のキーファクターが高感度で、続いて人を自然な表情のまま撮れるように顔検出を投入し、最適な露出、ピントを調整するようになりました。その後、目で見たままの明るさで雰囲気を残したい、ということでダイナミックレンジに注目しましたが、ネックが白トビでした。そこで特にハイライト側を伸ばすようにして、自然な再現ができるようにしました。

 これまで、ダイナミックレンジの拡大は(スーパーCCDハニカムの)SR方式で実現していました。FinePix F100fdはHR方式ながらも400%を実現しています。SRは大小画素を組み合わせることでダイナミックレンジが広がるのですが、高画素化やセンサーの小型化が難しいのです。FinPix S5 Proのようにセンサーそのものが大型なら可能なのですが……。そこで、現在メインのHR方式で実現する方法を作りました。やり方は少し違いますが、SR方式を利用するのとほぼ同じ効果を得られています。

――具体的にはどのような動作をしているのですか

河原氏: 白トビしないように撮影し、そこからシャドーの階調を調整し、ハイライト側を軟らかく、最適なカーブを描くようにしています。(ISO感度を上げているので)シャドー側のノイズは必然的に増えますが、新しいノイズリダクションの技術によってシャドー側のノイズを減らしています。

 従来のHR方式のCCDを使ったデジカメと比較すると、「ダイナミックレンジ400%」に設定するとハイライト側に絞り2段分が拡張されます。

――400%の場合は、絞り2段分まで明るいところに持ちこたえられるということですか

河原氏: その通りです。

(後編に続く)

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