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マランツのセパレート式AVアンプ「AV8003/MM8003」でBD「再会の街で」を聴く山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」Vol.17(2/2 ページ)

» 2008年06月25日 15時50分 公開
[山本浩司,ITmedia]
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 「再会の街で」の舞台は、現代のニューヨーク。9.11同時多発テロの飛行機事故で妻と3人の娘を失い、悲しみから立ち直れずにいるチャーリー(アダム・サンドラー)と彼の学生時代のルームメイトで歯科医のアラン(ドン・チードル)の心の交流を描いた物語である。

photo (C) 2007 Columbia Pictures Industries, Inc. and GH Three LLC. All Rights Reserved.

 数年ぶりに会ったチャーリーの無残な変わりようにショックを受けたアランが、なんとか彼を立ち直らせようとするのだが、チャーリーは心を閉ざしたまま。まったく損得勘定抜きで付き合った学生時代の友人を救おうとすることで、ハタから見れば幸せな家庭を持ち、裕福な生活を送るアランが、自分に重くのしかかる閉塞感“中年クライシス”を打破し、自己を救済しようとするところ、しかもそのアランをアフリカンアメリカンのドン・チードルが演じるところに、ぼくはこの映画の時代感覚の鋭さを感じた。

 自室のビデオプロジェクターで日がなゲームに興じ、パンク・バンドでドラムをたたくチャーリーを、アダム・サンドラーがじつにリアルに演じるのも大きな見どころ。テロ事件のはるか前、学生時代に自分が好きだった1970〜80年代のロックをアナログレコードで一生懸命コレクションする姿に、チャーリーのとてつもない孤独感を垣間見る思いがした。

 本作のBD ROMは、英語/日本語吹き替えとも、ロスレスオーディオのドルビーTrue HD5.1ch音声が収録されている。派手な効果音などとは無縁の作品だが、オープニングのグラハム・ナッシュの「シンプル・マン」をはじめ、ジャクソン・ブラウンやブルース・スプリングスティーン、プリテンダーズなどの1970〜80年代のロックの名曲が宝石のように散りばめられている。

 マランツ「AV8003/MM8003」は、そのビートの効いた美しいサウンドや悲しみに打ちひしがられたチャーリーの声をじつに情感豊かに描き出していく。また、2人の男の何気ない言葉のやりとりに、救いを求める気持ちとか友人を思いやる心がにじみ出ていることが実感でき、このセパレートAVアンプの実力の高さをしみじみと実感することになった。

 なにもドンパチ激しいアクション映画やド派手なステージを収録した音楽ソフトを観なくても、こういうシリアスな映画の静かなシーンをチェックすることで、そのAVアンプの真の実力が分かるものである。

 AV8003/MM8003で1つ苦言を呈したいのは、見た目と造りの安っぽさ。プラスチッキーなフロントパネルや、なんとも情感に欠けるボリュームノブの回し心地など、ピュアオーディオ製品で素晴らしい質感の製品を出し続けているマランツ製とは思えない。確かにこの内容のセパレート型で価格は頑張っているが、一方でAVをナメないでいただきたいと思ったりするのである。

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