次に「見る」にフォーカスしてみよう。最近のトレンドになりつつあるのが、前述の自動チャプター機能を利用して、本編だけを効率よく視聴する機能だ。この点でもっとも利便性が高いといえるのは三菱電機。「オートカットi」機能で本編を設定して録画すれば、オートカットi再生を開始するだけで番組本編のみを再生することができる。
東芝製品では、マジックチャプターを番組本編とCMの境目にのみ設定できるが、ノータッチで本編だけを見るには「おまかせプレイ」を利用する必要がある。本編のみのプレイリストが自動作成され、再生開始まで自動化されているが、一方でプレイリストが残ってしまうため煩雑になりやすい面もある。
ソニーの場合は、本編とCMの境目だけでなく本編中のシーンチェンジなどにもチャプターが自動設定される。“手動でCMがスキップしやすい”と思えばいいだろう。
スポーツ中継を録画して見る人なら、三菱電機の「ハイライト再生」はかなり魅力的だ。主に音声情報をもとにハイライト部分に絞り込んで再生を行う機能で、さらにハイライトの基準にする“しきい値”を変更することで全体の再生時間をほぼリアルタイムにコントロールできる。ハイライト再生は三菱電機は早い時期からレコーダーに実装していたこともあり、その動作はかなり的確だ。
電車通勤などの移動時間を活用したいなら、ソニー「BDZ-A70」の「おでかけ・おかえり転送」は魅力的。ソニーのウォークマン「NW-A820」シリーズ、「PSP」ならデジタル放送も、ほかのビデオ再生対応ウォークマンやドコモの「FOMA 904i」以降、「705i」以降の主要機種ならアナログ放送の録画番組を転送して再生できる。
録画時には、これらポータブルデバイス用のデータも同時に作成することが可能で、事前にこれを設定しておけば、後で高速転送も可能になる。自社製品のサポートが中心とはいえ、PSPはユーザーも多く、追加投資なしでモバイルビデオ環境を手にできるのはありがたい。なお、ウォークマンA820なら、前述の「おまかせチャプター」も維持した形で転送できることを付記しておきたい。
最後に光学メディアに「残す」ことを考えてみよう。まず、デジタル放送をとにかくキレイに残したいなら、何はともあれBDレコーダーを購入することになる。多少手間をかけてもドラマやアニメなどの本編のみをまとめたいなら、CMカット作業に「おまかせチャプター」が活用できるソニーBDZシリーズがいい。また、とにかく楽に“本編だけ”をまとめたいというなら、三菱電機製品で「オートカットi」機能を利用してダビングするといいだろう。ただ三菱電機製品は、手動の編集機能があまり充実していないので、オートカットiに全てを委ねる覚悟も必要になる。筆者は十分実用的だと思うが。
シリーズ番組を光学メディアにきちんと整理するライブラリー派なら、ハイビジョンのままより長時間を光学メディアにダビングできるMPEG4/AVC録画は便利だ。各社の最新モデルは軒並み対応しているが、今年に入ってから採用したメーカーもある。特売品の旧モデルを選択肢に入れる場合は注意したい。
メーカー | 録画モード | BD-R(1層25Gバイト)録画時間 | DVD(1層4.7Gバイト)録画時間 |
---|---|---|---|
パナソニック | HG(約12.9Mbps) | 約4時間 | 約42分 |
HX(約8.6Mbps) | 約6時間 | 約1時間5分 | |
HE(約5.7Mbps) | 約9時間 | 約1時間40分 | |
ソニー | XR(約15Mbps) | 約3時間10分 | |
XSR(約12Mbps) | 約4時間 | ||
SR(約8Mbps) | 約6時間5分 | ||
LSR(約6Mbps) | 約8時間5分 | ||
三菱電機 | AF(約13Mbps) | 約4時間 | 約42分 |
AN(約8.5Mbps) | 約6時間 | 約1時間5分 | |
AE(約5.5Mbps) | 約9時間 | 約1時間40分 | |
東芝 | 東芝製品ではMN3.6〜MN17まで47段階で任意に選択できる。HD RecによるDVDへの録画時間は、MN8なら1時間4分、MN4.2なら1時間53分など | ||
またDVDレコーダーでも、DVD-R DLメディアを活用すればハイビジョンでかなり長時間のダビングが可能だ。例えば東芝VARDIAシリーズはDVDレコーダーのみのラインアップになるが、本編のみのダビングなども容易に行えるため、選択肢としては決して悪くない。
番組の本編のみをきっちり残したい、あるいは音楽番組からミュージッククリップを取り出してまとめて保存する、といったコレクション的な使い方をする人は、編集機能に着目しよう。この点でベストなのは東芝VARDIAシリーズ、続いてソニーBDZシリーズになるだろう。
この2シリーズは編集機能が充実しているだけでなく、本編とCMの境目以外にもシーンチェンジ部分にも自動チャプターを設定できる点がポイント。東芝製品にはビデオクリップを連続放送する番組の録画に便利な“無音部分に自動でチャプターを設定”する機能もある。BDに残すならソニーBDZシリーズ、MPEG4/AVC録画があればDVDで構わないという人なら東芝VARDIAが現実的な選択肢となる。
ここまでに取り上げた3つの要素以外にも、ケーブルテレビユーザーが専門チャンネルをハイビジョン録画したいなら、i.LINK接続でSTBからハイビジョン録画が可能なパナソニックのDIGAシリーズ(DMR-BW700/BW800/BW900)は価値がある。また、しばらくはDVDレコーダーでいいが、将来的にはBDメディアへの保存も考慮するならi.LINK TS出力のサポートなども確認しておきたい。
レコーダーを販売する主要メーカーの製品は、今夏の製品でほぼMPEG-4/AVC記録に対応しており、当然ながら「ダビング10」もサポートするなど、スペックだけ見ると横並びになった感もある。しかしメーカーごとの個性はアナログ世代から継承されていて、対応する光学メディアやHDD容量、そして価格だけで製品を選択すると、後悔する可能性もありそうだ。
例えばBDレコーダーのエントリーモデルとDVDレコーダーの上位モデルは価格的にオーバーラップしているが、用途次第では後者を購入した方がマッチすることもある。「オリンピックがあるから、とりあえず安いBDレコーダーを……」ではなく、レコーダーを購入してどのように使うのか、それをしっかりと自分で判断した上で製品を選ぶようにしたい。そのほうが、きっと満足度は高い。
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