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「エディット・ピアフ 愛の讃歌」をAQUOS「LC-46RX5」のハイコントラスト映像で楽しむ山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」Vol.19(2/3 ページ)

» 2008年07月23日 11時58分 公開
[山本浩司,ITmedia]

 階調表現については、新たに設けられた12ビットBDE(Bit Depth Expansion)が興味深い。これは、人間の視覚特性を利用したアルゴリズムを用いて、RGBそれぞれを12ビット相当の階調に拡大表示する機能。この効能もたいへん素晴らしい。

 従来、等高線状の偽輪郭が気になっていたハワイの朝焼けをハイビジョンカメラで捉えた映像ソースなどを見ても、非常にスムーズに階調を描き分け、違和感を抱かせないのだ。また、もう1つ感心したのは、エッジの処理がとても滑らかなところ。このへんは、本連載でも取り上げたTHX認定ディスプレイの「Tシリーズ」を手がけた経験が生かされているのではないかと思った。

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 色再現については、AQUOSは従来から真紅の表現力に優れた4波長バックライトを採用し、夢のように華やかな独自の色彩を訴求していたが、本機で感心するのは、その持ち味を継承しながら、肌色近辺のホワイトバランスを見事にチューニングしていることである。従来モデルなどでは、平均輝度レベルが変動するたびに、スキントーンがそれに引っ張られて赤みがかったり、青みが強く出たりしていたが、本機はそんな不自然さを感じさせないのだ。

 また面白いのは、本機の画質調整項目の中に、新たに「肌色調整」が新たに設けられたことである。これは、肌色近辺の中域成分のみを抽出して、「色相」「彩度」「明度」を個別に細かく設定できるようにしたもの。好きな女優さんをとことん美しくチューニングして見るというのが、ホームシアターで映画を楽しむ特権と考えるぼくのようなAVファンには、うれしい機能といっていいだろう。

 それから、プリセット映像モードに新たに「映画(リビング)」が設けられたのも興味深い。これは、比較的明るい照度環境下で映画を観ても、あまり違和感を抱かせない画質を目指した映像モードだという。デフォルトの色温度設定は、6500ケルビンの「映画」に対して「映画(リビング)」は9300ケルビン。これは、映像のヌケのよさを狙ってのことだろう。ガンマは、暗部階調をつぶさないように中間調にかけてカーブを立てた設定、状態のよくない古い映画ソースへの対応を考慮し、デフォルトはデジタルNR(ノイズリダクション)を少し効かせた設定になっている。

 この「映画(リビング)」モードで、地デジで放送された古い邦画のエアチェック版を見てみたが、古色蒼然(そうぜん)たる雰囲気が後退し、現代のハイクォリティなドラマを思わせるトーンに変貌した。名画のムードが消え失せてしまうこのモードをどう評価するか解釈の分かれるところだが、ぼくは、まず明るい部屋で使える映画モードというのが、提案として重要なのではないかと思う。もちろん、この画質に違和感を抱くという方は、部屋を暗くして「映画」モードを使えばよい。

 ま、とにかく従来の各社の「映画」モードは、少し明かりを残した環境だと、白が黄ばんだ暗く元気のない画調になりすぎて、これがハイファイ? こんな画質モードじゃ誰も使わないよ、という印象を受けるケースが多かったのも事実なのである。もちろんこの次は、パイオニアが提案し、東芝が追随した、ソースと照度環境に応じてオートマティックに最適画質を提供する「おまかせ高画質」モードにチャレンジしてほしいと思う。

 そんなLC-46RX5で見て深く感銘を受けたのが、フランス版BD ROM「エディット・ピアフ 愛の讃歌」(原題:LA MOME)である。

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