ヤマハ「YSP-600」は、同社が得意とする一体型フロントサラウンドシステム「デジタルサウンドプロジェクター」シリーズの中でも、エントリークラスに位置するモデル。型番的にはもう1つ下に「YSP-500」という製品が存在するが、サイズやスピーカー構成などほぼ同スペックになっているので、事実上はYSP-500にHDMI端子を装備してユーザビリティーを向上させたモデルととらえて間違いはないだろう。
メーカー | 機種名 |
---|---|
ソニー | 第1回:部屋いっぱいのサラウンド感――ソニー「HT-CT100」 |
ソニー | 第2回:小粒なのにピリリ、“ゴルフボール大スピーカー”のソニー「HT-IS100」 |
パナソニック | 第3回:音を手軽にアップグレード、パナソニック「SC-HTR210-K」 |
パイオニア | 第4回:部屋に合わせて形を変える、パイオニア「HTZ-373DV」 |
ヤマハ | 「YSP-600」 |
オンキヨー | WAVIO「GXW-2.1HD」 |
niro1.com | NIRO「NS-600」 |
ヤマハのデジタルサウンドプロジェクターは、指向性の高い小型スピーカーを多数並べ、音を放出する方向を制御して壁や天井などに反射させる独自のサラウンド技術。一般的なバーチャルサラウンドと異なり、リアやセンターチャンネルの音が独立した成分としてそれぞれのユニットから出るため“リアル5.1チャンネル”をうたっている。
YSP-600に採用されているスピーカーは、メインスピーカー用として28ミリという小さなコーン型が16個、サブウーファー用として8センチコーン型が2個。デジタルサウンドプロジェクターならではのユニークな構成だ。
付属マイクによって部屋の音響特性を測定し、音響処理を自動的に最適化する「インテリビーム」を上位モデル同じく搭載。「微調整がいらないほど完成度の高い」と定評あるシステムだけに、この採用はうれしい限りだ。「簡単便利」な機器だからこその重要ポイントといえるだろう。
サラウンドモードは、5.1チャンネルサラウンドをリニアに再現する「5ビーム」や、リスニングエリアが広く多人数で楽しめる「3ビーム」、ライブDVDの鑑賞や本体をコーナー設置した場合に有効な「ステレオ+3ビーム」、狭い場所や広すぎる場所でも広がりのある音場を再現する「マイサラウンド」、CDやテレビ放送に適した「ステレオ」、周囲の騒音が大きい環境でニュースなどの音声を聞き取りやすくする「マイビーム」と、多彩なモードを用意。さらに近隣への音漏れを抑えながらも迫力あるサウンドを楽しめる「ナイトリスニングモード」や低音の音量感を増大させる「TruBass」など、環境や好みに応じてさまざまなモードが利用できるようになっている。
610(幅)×220(奥行き)×120(高さ)ミリと、シリーズ最小のコンパクトサイズを誇るYSP-600だが、一体型の宿命には逆らえず、設置場所には多少迷うことになる。とくに奥行きが22センチあるため、ケーブルの接続も考慮するとラック上板、テレビの前に置くことはまず不可能。テレビ近隣へ設置しようとする場合、棚付きラックの最上段をYSP-600用に空ける必要がある。
ただし、無理にでもどこかへ押し込もうとさえ考えなければ、設置場所の自由度は決して悪くない。今回のテストではラック内のほかに、ラック直前にセンタースピーカー用スタンドを設置してその上に置いてみたが、視覚的にも物理的にもそれほど邪魔にならず、見栄えもかえって本格的シアターシステムのよう。センタースピーカースタンドは設置角度を多少調整できるため、音質的にも決して悪くはならなかった。こういったひと工夫をすれば、自室の環境に合ったベストポジションを見つけられるはずだ。
配線に関しては、一体型のため何の文句もない。テレビとはHDMI+光デジタルケープル、プレイステーション3やBDレコーダーなどとはHDMIケーブルのみでOK。もちろんスピーカーやサブウーファーとの接続は必要ないから、配線はものの1〜2分で終わる。一体型サラウンドスピーカーの手軽さを実感すると同時に、HDMIケーブルのありがたさを再確認した瞬間だった。
ただし、オンスクリーンメニューを活用したい場合は、別にアナログコンポジットケーブルでテレビと接続する必要がある。YSP-500にHDMI端子をプラスしたビルドアップ製品のため、こういった仕様なのはコスト面を考慮に入れると仕方のないところか。個人的にはもう1歩突き進んでほしかった気もする。
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