“NIRO”「NS-600」は、ユニークなレイアウトを持つコンパクトサイズのフロントサラウンドシステム。今回取り上げた機種のなかでは唯一HDMI端子を持たないが、部屋のどこにいてもサラウンドが楽しめる独自システムを搭載するなど、魅力的な存在であることも確か。今回は音場/音質面のメリットを中心にチェックを行った。
niro.comは、オーディオマニアであれば誰もが知っている老舗ブランド「ナカミチ」の元社長である中道仁郎氏が1998年に設立したメーカー(→関連記事)。同氏は現在のようにフロントサラウンドスピーカーが全盛期を迎える以前より、その手軽さや音質的有効性に注目し、積極的にラインアップを展開している“フロントサラウンド先駆者”の1人だ。
今回紹介するNIRO「NS-600」も、薄型ディスプレイでの使用を主眼に置いた、コンパクトサイズのフロントサラウンドシステム。昨年発売された「Niro Spherical Surround System」ゆずりの音質を継承しながらも、同社ラインアップの中ではもっとも安価な、エントリークラスに位置する製品となっている。
NS-600の特徴といえば、メインスピーカーをディスプレイの上下に配置する、ユニークなレイアウトだろう。
テレビの下側(ラックの上もしくはディスプレイ前面といった方が分かりやすいか)に置くメインスピーカー、NIROがベーススピーカーと呼ぶユニットは、円すい形を縦半分にしつつ上半分を切り取ったような、ユニークなフォルムを持っている。290(幅)×103(高さ)×140(奥行き)ミリというディメンションはテレビ前に設置するにはやや大きいようにも思えるが、そのラウンドしたフォルムによって大きさを感じさせないスマートさがある。
いっぽうディスプレイの上側に置くトップスピーカーは、170(幅)×72(高さ)×75(奥行き)ミリというコンパクトなサイズ。ラウンドしたスピーカー面とも相まって、印象は悪くない。こちらはリアスピーカーを担当している。
サブウーファーは、390(幅)×305(高さ)×180(奥行き)ミリという薄型のバスレフボックスを採用。設置性に関しては、高い自由度を確保しており好感が持てる。
コンパクトさに関してはパワーアンプユニットも特筆もの。高効率のデジタルパワーアンプを採用することで200(幅)×55(高さ)×296(奥行き)ミリという薄型小サイズを実現している。
スマート&コンパクトなスタイルに目が奪われがちなNS-600だが、そこから出てくるサラウンド感も忘れてはいけない。niroが「スヘリカル・サラウンド・システム」と呼ぶ独自の音響システムは、従来の一体型フロントサラウンド方式ではあまり考慮されていなかった垂直方向へのステージングを追求。スヘリカル(球形)のサラウンドフィールドを作り上げることで、臨場感あふれるサウンドを提供する。
またスイートスポットが広いことも、NS-600ならではのメリットの1つ。頭部伝達関数を利用して位相コントロールを行う独自のシステムによって、テレビ正面以外の位置であってもサラウンド定位を確保。家族や友人など、大人数で迫力のサラウンド音声を楽しめるようになっている。
スピーカー配置は、ディスプレイ上と前の2カ所というユニークなレイアウトだが、専用のステーや台座が用意されているためそれほど苦労はなかった。とくにトップスピーカーはディスプレイ上部の縁に台座前面を引っかけ、後ろ側のステー2本で押さえつけるだけでしっかり固定されるので作業は簡単。かたやベーススピーカーは奥行きがあるため、半分テレビ台の上に載ることになるが、こちらも専用スペーサーが用意されているので問題なく設置できた。
サブウーファーも薄型ボックスのために設置場所に苦労はしなかった。見栄えや低音の定位感を重要視するのであればスピーカーユニット側を、スペース的に余裕がなければバスレフポート側を正面に向けるのが得策だ。
配線は、スピーカーユニット直出しのケーブルに専用コネクタが採用されており、接続を迷うことなくほぼ一瞬で完了。また長さに余裕があるため、アンプユニットの置き場所にも高い自由度が保たれている。こういった配慮はとてもありがたい。
もちろん各機器との接続も簡単。HDMIケーブルがないためプレイステーション3やHDDレコーダーとの接続は光/同軸デジタルケーブルとなるが、手間はほとんど変わらない。プレーヤーからテレビへ直接映像を入力するため、ケーブルが1本増えるだけだ。
ポンと置くだけでセッティング終了、という手軽さはかえって拍子抜けするくらい。とにかく配置だけ完了すればすぐにでも本格サラウンドを楽しめるのは、サラウンド初心者でなくてもうれしい限りだ。
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