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オンキヨー「TX-SA706X」で「ノーカントリー」のリアルな音を聴く山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」Vol.21(2/2 ページ)

» 2008年08月20日 19時21分 公開
[山本浩司,ITmedia]
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リッチでゴージャスな音

 TX-SA706Xのサウンドキャラクターは、じつにアメリカン。非常にバタくさく、脂っこいサウンドだ。出力トランスを積んだ往年のマッキントッシュのアンプを思い起こさせるようなリッチでゴージャスな音である。

 1980年代までのオンキヨーの音というと、関西メーカーらしい薄味のはんなりとした繊細なサウンドがその特徴だったが、1990年代にAVセンターに本格参入して以降、オンキョーのブランド・トーンは、色濃い音像のリアリティを感じさせるリッチなサウンドに変ぼうを遂げた。やはりそれはルーカスフィルムのTHXと親密な関係を構築し、映画の音を魅力的に聴かせるにはどうすればよいのかを学んだことが大きかったのではないかと思う。

 また、2000年に発売したインテグラリサーチのアンプ開発で、米国のハイエンドメーカー、BAT(バランスドオーディオテクノロジー)と協業したことが、このブランド・トーン確立の決定打になったのではないかと推測する。本機はドライバビリティを決定づける瞬時電流供給能力を高めるために3段インバーテッドダーリントン回路を採用しているが、このへんの音づくりのヒントは、BATから学んだことが大きいはずである。

 先述した通り、「ノーカントリー」は音楽を極限まで排しているが、音楽を使った印象的なシーンがある。それは、満身創痍(そうい)のモスがメキシコにたどり着き、メキシコ人たちが演奏するマリアッチで目覚める場面である。本機TX-SA706Xで聴くと、この音が素晴らしくよいのだ。マリアッチの演奏に独特の土くささが感じられ、画面からむせるようなメキシカン・ムードが漂ってくる。

 また、TX-SA706Xの提示する音場のタイプは、拡散型というより明らかに凝縮型。音像の1つ1つに力感が付与されたその血の通った音に、いいAVアンプで映画を観る面白さを改めて実感した。とくにすごいと思ったのは、殺し屋シガーが、ホテルの一室に隠れるモスを追い詰めるシーン。ここでシガーは、部屋の錠のシリンダーをボンベのエアガンで撃ち抜くのだが、その音の瞬発力の素晴らしさといったらない。思わず椅子から転げ落ちそうになった。

photo TX-SA706Xのリアパネル

 ところで、7.1チャンネル構成の本機は、サラウンドバックチャンネル用と表記されたアンプを利用してフロントL/Rチャンネルのバイワイヤリング/バイアンプ駆動が可能。実際にバイワイヤリング接続ができるスピーカーを用いてその効果を試してみたが、予想通り著しい音質改善が実感できた。ウーファーの逆起電力の悪影響から逃れられるからか、本機の愛すべきトーン・キャラクターである力感と分厚さに、ヌケのよさが加わる印象だ。5.1チャンネル構成でサラウンドシステムを組む方はぜひバイアンプ接続を試していただきたいと思った。

 また、BDプレーヤーのデノン「DVD-3800BD」のHDMI出力を直接パイオニアのプラズマモニターにつないだ画質と、リピーター機能を用いて本機経由でモニターにHDMI接続した画質を見比べてみた。決定的な画質差というほどではないが、前者に比べて後者は暗部階調が詰まる印象があった。やはりHDMI出力が2系統あってパラレルにディスプレイとAVアンプにつなげられるBDプレーヤーがあればいいのに、と改めて実感した。

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