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オーディオ業界に3日で絶望した男が業界を救う話小寺信良の現象試考(1/3 ページ)

» 2008年09月03日 11時00分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 8月の最後の土日、ちょっと変わったオーディオイベント「my-musicstyle」が開催された。普通のオーディオ試聴イベントとは違い、「マニア禁制」をうたうこのイベント、以前からそのスタンスに興味があったので、足を運ぶことにした。

 会場となった恵比寿のSPAZIO1は、ちょっとコジャレた新製品の発表会などでメーカーが使いそうな、イベントスペースだ。オーディオイベントと聞いて、各出展者がブースを設けているようなイメージを抱いていたのだが、実際には壁沿いにコンポーネントしたオーディオセットが並び、希望者が順番に視聴できるという、オープンなスタイルの試聴会のような雰囲気である。

photo 「my-musicstyle」会場となったSPAZIO1

 来場者にはドリンクが配られ、浴衣の女性スタッフが華を添える。マニア禁制というだけあって、視聴される音楽もオールドロック、メタル、J-POPなど、まずオーディオ専門店のフロアでは流れないジャンルのものばかり。すべて来場者が持ち込んだものである。

 持ち込み方もさまざまで、CDを持ってくる人は少なく、多くはiPodだったりiPhoneであったり。たまに音質を気にする人がケンウッドのデジタルオーディオプレーヤーを持ち込む程度である。各システムにはiPod用クレードルがあらかじめ用意されている。

photo 試聴ソースはやはりiPodが多い

 会場の2/3がオーディオコンポ、残り1/3がヘッドフォンコーナーになっている。コンポの視聴は順番に1人ずつだが、ヘッドフォンの試聴は空いていればいつでも聴ける。各製品は製品名こそ分かるようにはなっているが、値札もなく、販売店の表示もない。名刺交換するような場面もなく、いわゆる「販促」を目的としたイベント臭さがない。

photophoto 一風変わったセットも(写真=左)、ハイエンドではおなじみのヘッドフォン(写真=右)

 「オーディオ」そのものがマニアのものと化して、マーケットが硬直化しているという話は、以前からよく聞いていた。唯一元気があるのがヘッドフォンだが、これは音楽を聴く主体が動かせないオーディオセットから、ポータブルなものへと移行した証拠であろう。

 このイベントの実行委員長である、黒江昌之氏にお話を伺った。

オーディオ暗黒時代

黒江氏: 「そもそもこのイベントの発端は、単なる飲み会からだったんです。業界で若いやつが20人ぐらい集まったときに盛り上がって、何かやりたいよね、イベントやりたいよね、と。それで銀座でやったのが、my-musicstyleの最初ですね。告知も全然できてなかったんですけど、予想以上に人がたくさん来て、驚きました。」

photo 実行委員長の黒江 昌之氏。浴衣姿でイベントを盛り上げる

 イベントの中心となる黒江氏は、東急田園都市線・あざみ野にある「ザ・ステレオ屋」というオーディオショップの2代目である。ここで販売業務をこなす傍ら、音楽雑誌「BURRN!」などにもレビューを寄稿するライターでもある。しかしmy-musicstyleの賛同社に販売店は意外に少なく、主体はメーカーや輸入商社である。最初は仲の良い営業さんと始めたが、回を重ねていくうちに上の方まで話が行って、今では公認イベントとなったメーカーも多い。最初10社で始めたこのイベントも、今回は30社にまで膨らんだ。

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