実はこの春に第1弾となる「ロック」が登場したが、あまりの人気のために発売後すぐに売り切れてしまい、多くの人から「第2弾を」というリクエストがユニバーサル ミュージックへも寄せられたようだ。それを受けてこの秋、第2弾として「ロック/ソウル/ブルース」「ジャズ」「クラシック」の3タイトルが同時リリース、より多くの人がSHM-CDの特徴を体験できるようになっている。
しかもこの「これがSHM-CDだ!」シリーズは、サンプルとは名乗っているものの、曲が途中で終わってしまう“サンプル試聴ディスク”ではなく、れっきとしたコンピレーションアルバム。しかも選曲が絶妙で、例えば「ジャズ」は、ジョン・コルトレーンやオスカー・ピーターソン、ルイ・アームストロング、ビル・エヴァンスなど、ビッグネームの名曲がずらりと並ぶ。
さらに「クラシック」では、カラヤンやクライバー、ベーム、バーンスタインなど著名な指揮者がタクトを振る名演奏に加えて、小澤征爾のウィーンフィル・ニューイヤーコンサート「ラデツキー行進曲」まで収められている。ジャズやクラシック初心者でも、充分堪能できる内容となっているのだ。
これがたった1000円で手に入るなんて、どう考えてもお買い得。第1弾同様、すぐに売り切れてしまうことが予想されるので、ぜひ聞いてみたい人、SHM-CDがいかなるものか体験したいという人は、早めの購入しておくことを勧めする。
せっかくだから、この3枚に関して「聞き比べ」お勧め曲をリストアップしておこう。
まず「ロック/ソウル/ブルース」では、1.オールマン・ブラザーズ・バンドが一番。ライブは観客の声援などが収められているため、SHM-CDの「細かい音まで漏らさず再生する」特徴が生きてくる。このほか4.ジェームス・ブラウンや5.フライング・ブリトウ・ブラザーズ、7.フリー、13.トム・ウェイツ、20.マーヴィン・ゲイなどは、アコースティック&エレキギターやパーカッションの音を聴くと、SHM-CDの音がいかにクリアでイキイキとしているかが実感できる。
「ジャズ」は1.と5.のコルトレーン、3.オスカー・ピーターソン、8.アントニオ・ラルロス・ジョビン、11.キャノンボール・アダレイ、12.ケニー・バレル、13.ビル・エヴァンスと上げたらきりがない。全体を通しては、ピアノと金管楽器の音色に注目すると、表現力の差を実感できるはずだ。
「クラシック」は全曲とも違いがはっきりと分かる。しいて上げるならば、4.ラデツキー行進曲のニューイヤーコンサートならではの抑揚感、6.サン=サース交響曲3番の力強い低音とオルガンの音の多彩さ、7.モーツァルト/レクイエムの合唱などに、両者の違いが顕著に感じられた。
最後に、現在リリースされているSHM-CDの中から、実際に試聴し、とくにオススメしたいと思ったタイトルをピックアップしよう。ジャズやクラシックのない偏ったラインアップだが、ほとんどが個人購入のためご容赦を。
まずは「イーグルス/フリーゼス・オーヴァー」と「エリッククラプトン/アンプラグド」。どちらももともと良質な録音の名盤なので、その実力をSHM-CDによってさらに生かされたという印象。そういった事情もあって、音質よりも空間的な広がり、ストレスなく空間いっぱいに音が広がる気持ちよさに心ひかれた。アンプラグド系は、ブライアン・アダムスもよかった。
'70年代のアルバムでは、やはりレッド・ツェッペリンが筆頭にあがる。1994年に行われたリマスター盤の良さが、SHM-CDによって開花したという印象。とくに「ツェッペリンIV」は粗野なセッティングながら、1発録音ならではの迫力やノリの良さが充分に伝わってくる。そのあとオリジナル盤のCDを聴くと、録音機材がまるで10年前のポンコツのように感じた。対して「カーペンターズ/ナウ・アンド・ゼン」は、アナログレコードにある独特の柔らかさ、心地よさがやっと取り込めたというイメージ。こちらも悪くない。
モトリー・クルーやイングヴェイ・マルムスティーン、ザ・キュアーなどのベスト盤も良かった。意外なものでは、ビレッジピープルがあっさりとしたちょい古めかしい音ながら、録音の良質さがよく分かって好印象だった。
SHM-CDは、聞き慣れたミュージシャンの聞き慣れた曲ですら、新しい“何か”を発見させてくれる貴重な存在。しかもラジカセやPCなど、再生機器がチープであればあるほど、普通のCDとの音質差がはっきりとしてくるのだから面白い。良質なサウンドを追い求めるオーディオファンはもちろん、“音楽好き”にこそベストなディスクと断言しよう。
ダウンロードミュージックに完全移行しようとしている人、ちょっと待って。SHM-CDという名のCDには、まだまだ可能性があるゾ。
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