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ギックリ腰無限ループから脱却する5ステップ小寺信良の現象試考(2/3 ページ)

» 2008年09月16日 11時00分 公開
[小寺信良,ITmedia]

運動を「創る」

 そもそも筆者がギックリ腰になった原因として考えられるのは、極度の運動不足と、体重の増加であった。中学、高校ぐらいはそこそこスポーツもしていたのだが、25歳を過ぎるあたりからは誘われれば野球ぐらいはするものの、自分から運動するということはほとんどなくなっていた。

 それに加えて、職場が変わって徹夜が減ったこともあり、体重がものすごく増えた。徹夜続きだったころは、大量に食べないと体が持たなかったわけだが、徹夜だけが減って食べる量が減らなかったので、急激に太っていったのである。

 この筋力減少と体重増加の2つの曲線がある時点でクロスしてしまうと、ギックリ腰を助長するようなことになってしまうのであろうと推察する。だからこの曲線を、逆向きに変えればいい。筋力を付けて体重を減らすわけである。

 筋力とはそもそも、プロテインを飲んだりするだけで付くわけではない。なんらかの負荷に対応するために筋肉が付くわけで、それはやはり、運動が必要になる。運動などする時間がないと多くの人は思うだろう。しかしそれも工夫次第で、なんとでもなるものである。

  • 4 歩く距離を稼ぐ

 腰の筋肉を強化する体操もあるそうだ。だが「毎日10分のトレーニング」などというものは、果たしてみんなちゃんと続けられるのだろうか。そういうコピーに踊らされてへんなグッズを買って放置、ということはよくあるはずだ。それよりも、日常何気ないところで運動になったほうがいい。

 まず筆者がやったのは、地道に歩く距離を稼ぐということである。乗り物 or 徒歩という選択肢があれば、徒歩のほうを選ぶ。例えば駅のエスカレータなどでも、階段があればそっちを上り、エスカレータでも歩いて登るようにする。

 このときも、なるべく大またでゆっくり、腰をよくひねってストレッチするような気持ちで登るようにする。ただ歩くときも、小またで股関節だけを使って歩くより、積極的に腰を使っていく。

 これは医学的な根拠は何もなくて筆者の勝手な持論なのだが、比較的女性のギックリ腰の話をあまり聞かないのは、歩き方に違いがあるからではないかと思う。実は以前CGを作っている時に、男女の歩き方の差を研究したことがある。つまりキャラクタをどう歩かせれば、男っぽい、女っぽいを表現できるのか、ということである。

 そのときの成果として、男性の歩き方は比較的骨盤を固定した状態で、足だけを前後に出す感じ。一方で女性の方は、骨盤を∞字に回転させるように歩く。女性の方が骨盤が横に広い、すなわち足の付け根がより外側にあるため、そういう歩き方のほうが効率がいいのではないか、というのがその時の自分の中での結論であった。機会があったら、実際に街行く人を観察してみるといいだろう。尻ばかり見ていて逮捕されても、筆者は知らない。

 つまり、女性の歩きを参考に腰をよくストレッチしながら歩くことで、腰の運動としようということなのである。

  • 5 運動を「創る」

 いきなり思い立って、よし明日から次の駅まで歩くぞ、なんてことは考えない方がいい。どうせ続けられはしないのだ。ギックリ腰ループに陥っている人の傾向とは、「頑張るのが嫌い」な人たちなのである。それよりも、仕事で机に向かってうんうん考える時間を、歩き回って考えるといった方法に変えることをお勧めしたい。

 「意識的社内徘徊(はいかい)」である。気分が変わり、また歩くことで脳も活性化し、いいアイデアが浮かぶ。もっとも歩いているうちに変な人につかまって面倒な仕事を押し付けられるかもしれないが、そこはそれ、個人の裁量の範囲内でがんばれ。

 歩くのも充分運動だが、仕事柄そもそも外にあまり出かけないという人も多いことだろう。この場合は時間を作って、歩く・走るといった運動を始めるしかない。そもそも運動量ゼロなのが一番良くないのである。

 ただスポーツを始めるぞ、と気合を入れるのもまた面倒、というのがギックリ腰ループ人である。その場合は、趣味と合体させるといい。例えば最近はデジカメで写真を撮るのが好きな人が増えているが、どこかの街を撮影して歩くというのは、いい運動である。

 筆者の場合は、浅草から向島へ渡り、木母寺のあたりまで歩いて写真を撮ったのが面白かった。このルートは、捕物帳小説の元祖とも言われる「半七捕物帳」を記した岡本綺堂が、半七のモデルとなった老人と散策した道である。話に出てくる同じ団子屋で団子を食べたりもした。江戸を舞台とした小説はいくつもあるが、その主人公が活躍した道を訪ね歩くというのも、なかなかおもむきがあるものだ。

 わざわざレジャーなみの遠出をしようと思わないで、通勤圏程度の近場で済ませるというのがポイントである。

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