DMR-BW900は、その高性能ぶりに比べてデザインや仕上げが物足りなく、こんな家電チックなルックスでは自分の部屋に置きたくない、せめてフットぐらいは付けようよ、音もよくなるはずだし。なんてことを本連載でも書いたと記憶するが、DMR-BW930、基本デザインはDMR-BW900そのままだが、ヒアリングによって決めたという大型インシュレーターのフットが取り付けられたのはうれしいかぎり。そのほか、電源回路などに吟味を重ねたコンデンサーなどがおごられ、音質をよりいっそう磨き込んだという。
可聴帯域外の超高域成分を類推補間して元信号に足し込む同社独自のリ・マスター機能も引き続き採用されている(ドルビーデジタルやAACなどのロッシーコーデック音声には16kHz前後の可聴帯域から補間信号を加えている)。このリ・マスター機能は、アナログ出力、PCM変換出力に対して機能するが、実際に本機とパイオニアのAVアンプ「SC-LX90」をHDMI接続し、BDソフト「バンテージ・ポイント」でDMR-BW930のビットストリーム(ドルビーTrue HD)出力とリ・マスター効果が付加されたPCM出力の音質を比較してみた。
まず、ドルビーTrue HDビットストリーム出力の、力感あふれる切れ込みの鋭いサウンドに爽快(そうかい)な気分を味わう。明らかにDMR-BW900よりもワイルドでおおらかなサウンドだ。一方、リ・マスター効果が付加されたPCM出力の音質は、ビットストリーム出力よりもきめ細かな環境音がはっきりと浮き彫りになる印象。スペインのサラマンカ、マヨール広場に集まる人々のざわめきがたくさん聞こえるのである。ただし、セリフの押し出しがやや弱く、クルマのきしむような走行音はビットストリーム出力のほうがより迫力のある描写となった。
また、広場に集まる人々をロングショットで捉えた映像の見通しのよさや、サラマンカの街を疾走するクルマのギラつく光沢など、おもわずハッとさせるリアリティがあふれていて、本機DMR-BW930の新リアルクロマプロセッサーの効能を改めて実感した。
この「バンテージ・ポイント」という作品、最近見たサスペンス&アクション映画の中では拾い物の1本。スペインで起こった米国大統領暗殺(?)事件をさまざまな視点から描いているのだが、その畳みかけるようなスピーディーな演出が素晴らしく、息をのんで一気に見終えた。この複雑な脚本を、力業で約90分とコンパクトにまとめあげたピート・トラヴィス監督の手腕にほとほと感心する。
さて、ぼくが愛用しているBDプレーヤーのデノン「DVD-3800BD」と本機のBD ROM再生時のパフォーマンスの違いについて最後に述べておこう。
画質についていえば、DMR-BW930は、色輪郭がシャープに切れたダイナミック・コントラストの鮮やかな画質が魅力だが、DVD-3800BDは、ノイズがよりきめ細かく、たたずまいのよさでDMR-BW930を上回る印象だ。エンジン(映像信号処理LSI)そのものは、DMR-BW930のほうが明らかに進化しているはずだが、レコーダー機能を持たないDVD-3800BDのよさがノイズの見せ方に表れているのである。AVアンプとHDMI接続した音質についても、ローレベル時の分解能の高さで3800BDの勝ち。音楽がよくハモるのである。こんなところにもプレーヤー機能に特化した製品のよさが表れていると思った。
パナソニックは以前、砂型鋳物をボディーに用いた、すばらしくかっこよくて、性能のよいDVDプレーヤーを発売していたことがあったが、パナソニックのUniphierエンジンは抜群に素晴らしいのだから、ぜひそんな本格派のシャーシとボディをおごったBDプレーヤーを発売してほしいものだと思う。
あれ、去年も同じこと書いた気が……。
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