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CEATECで発見した「近未来のテレビ像」麻倉怜士のデジタル閻魔帳(2/3 ページ)

» 2008年10月10日 08時30分 公開
[渡邊宏,ITmedia]
photo LEDバックライトを搭載しながら薄さも追求した「AQUOS X」

 シャープは65V型「AQUOS X」のバックライトに6000個以上のLEDを搭載したそうです。しかも、最薄部2.23ミリと薄さにもコダワリを見せてきました。振り返れば、同社は2005年にメガコントラスト液晶の技術発表を行い、2007年には「画質」「薄さ」「環境性能」で既存製品を大幅に上回る試作機を発表し、その薄さは各社製品に大きな影響を与えました。

 この新製品がすごいのは、メガコントラストと超薄という2要素を両立したことです。パネルから最終製品までを自社で作り出している、垂直統合方式のメリットが表れた好例といえるでしょう。

 ソニーとシャープがLEDバックライト搭載液晶テレビを投入してきた訳ですが、ただし画質的な、そして表現力的な完成度という点から見ればソニーがやや先行していると言えます。シャープは「自然さ」が加味されれば、さらに良くなるように感じました。

 LEDバックライトといえば、ドルビーの「HDR」(High-Dynamic-Range)も注目でしたね。昨年のCEATECにも「ドルビーコントラスト」「ドルビービジョン」の名称で展示をしていましたが、今年はイタリア「SIM2」社と共同で1800個のLEDバックライトを搭載してダイナミックレンジを拡大してきました。暗闇の中で花びらが開くシーンでは花びらが立体に感じられるほどで、その実力を強烈にアピールしていました。HDRの搭載製品はまだ登場していませんが、LEDバックライトは急速に普及していくことでしょう。

photo ドルビーの「HDR」

 これまで液晶テレビは「明るい場所での表示装置」でしたが、LEDバックライトの搭載によってダイナミックレンジが拡大し、「表現」の領域に迫ってきました。今度はプラズマや有機ELのもつ「自発光の安定感」にどこまで迫れるようになってくるかがポイントとなるように感じました。

――LEDバックライト以外の技術トレンドで何か目立つものはあったのでしょうか? また、最近では薄型テレビ=液晶テレビという感もありますが、プラズマはどのような進化を遂げているのでしょう。

麻倉氏: 昨年のCEATECでは日本ビクターが3倍速駆動液晶を展示していたので、今回は4倍速かと思っていたのですが、その展示はなく、4倍速駆動液晶はソニーから製品化されて登場しました。この4倍速駆動は、既存の高速駆動に比べて動画解像度の改善が進められていますね。

 薄型化は以前からみられるトレンドですが、今回のCEATECでは薄さを生かすべく、チューナー部を外付け化する無線伝送の展示が目立ちました。ソニーや日立は既に製品化をしていますが、パナソニックはWireless HDでフルHD/非圧縮の伝送を行っていました(→麻倉怜士のデジタル閻魔帳:新しいライフスタイルを生み出す、AV機器のワイヤレス化)。

photophoto パナソニックのワイヤレス化展示

 iPodなどの周辺機器を多く手掛けるBELKINがテレビ用のワイヤレスシステム「FlyWire」を展示していたのも興味深かったです。有線のHDMIを無線化するというアプローチ自体は目新しいものではありませんが、サードパーティからそうした製品が出てくることに面白さを感じましたね。

 ワイヤレス化は現在、同一室内にとどまっていますが、次のステップとしては壁を越えて同一家屋内でのワイヤレス化となり、その次にはソニーのロケーションフリーのように家という単位をも飛び越えるでしょう。それまでにはホームネットワークとの連携も深まるはずで、リビングのAVセンターをサーバとして、あらゆる場所からサーバへアクセスする、クライアント・サーバ型のシステムにも期待したいところです。今回のCEATECでは、アメリカの某有力メーカーがこうしたホームネットワーク対応のワイヤレスシステムを一部関係者に披露しており、ワイヤレス化の流れはますます加速するでしょう。

 プラズマについてはパナソニックに生産が集約され、産業構造としては固まってきました。パナソニックはプラズマテレビの春モデルから搭載した「ハリウッドリマスター」を強くアピールしていますが、その完成度も上がっています。

 それに、自社生産パネルとしては今モデルが最後となるパイオニアの「最後のKURO」も素晴らしい出来ですね。LEDバックライトを搭載した最新液晶テレビの方が数値的には上回っていますが、自発光であることによる映像の安定感や説得力は得がたいものがあります。液晶パネルはほぼ各社がノングレアなので、光の出方はややクールな感じとなりますが、プラズマにはグロッシーさがあります。ここには、プラズマながらではのアドバンテージがあるように感じられますね。

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