地デジをより美しく――東芝「REGZA」の超解像技術に迫る秘密はLSIにあり(1/2 ページ)

超解像技術「レゾリューションプラス」の搭載で話題を集めている東芝の新型「REGZA<レグザ>」。画質に定評のある映像エンジン「メタブレイン」にLSIを追加することで実現したという機能は、デジタル放送の解像度不足という、根本的な課題にメスを入れるものだ。しかし、新LSIの役割はそれだけではない。

» 2008年10月30日 10時00分 公開
[本田雅一,PR/ITmedia]
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 東芝は今年、年末商戦に向けて液晶テレビ「REGZA<レグザ>」シリーズのラインアップをダイナミックに一新した。これまで年末商戦向けには最上位機種を、春夏商戦向けには録画機能付モデルや買い得感の強いバリューモデルを、といったサイクルでモデルチェンジを行ってきたREGZAだが、今年は春夏商戦にも上位機種を含む新機種を投入し、さらに年末商戦向けにも幅広いラインアップを入れ替えるという大胆な商品展開を進めた。

 新商品はHDD内蔵モデルのさらなる充実、「ZH7000」「Z7000」シリーズにみられる上位機種のネットワーク機能充実といったREGZAらしい先進性もさることながら、高画質な映像エンジンとして幅広く知られるようになった「メタブレイン」のさらなる発展が一番大きなトピックだ。

photophoto 「52ZH7000」(左)と「46Z7000」(右)

 東芝が得意とする半導体技術を基礎に映像処理技術を磨き込んできた成果が、一連のメタブレインだ。東芝独自の映像エンジンであるメタブレインが、倍速対応や「おまかせドンピシャ高画質」などの機能を追加できたのも、液晶パネルの進化に合わせて映像チューニングを追い込んでこれたのも、高画質化処理の基礎となるエンジン部に柔軟性があったからといえる。

 そして今年、メタブレインに新しいLSIが加わり、名称を「メタブレイン・プレミアム」へ変更した。この新しいLSIこそが、REGZAの今年モデルの画質を語る上で重要な役割を果たしている。1つは東芝が昨今、その有用性を訴求している超解像技術「レゾリューションプラス」を実現するための機能が、新LSIに組み込まれている。しかし新LSIの持つ能力はこれだけではない。メタブレインの能力をさらに高める機能が、新LSIの中に組み込まれているのである。

 それぞれについて、東芝に取材した際のコメントを交えながら掘り下げていくことにしよう。

photo 「メタブレイン・プレミアム」。超解像技術「レゾリューションプラス」を実現するためのLSIが新たに搭載された

超解像技術とは?

 さて、まず“超解像技術”とは、どんな技術なのか。東芝では「ナイキスト周波数以上の高周波数成分を再現する画像のアップサンプリング技術」と定義しているという。このように書くと、なにやらものすごく難しい話に聞こえてしまうかもしれない。もう少し単純化してみよう。

 ナイキスト周波数とは、アナログ信号をデジタル信号へと変換(標本化)し、それを再生する際に元の信号を再現できる限界周波数のことだ。サンプリング周波数の1/2の周波数がナイキスト周波数となる。

 通常の解像度変換処理では、画素数を増加させても元画像のナイキスト周波数よりも高い周波数成分は得られない。高画質に見せるテクニックとして、輪郭を抽出するなどして局所ごとに適した画像処理を施すことも可能だが、元の情報が増えることはない。しかし、超解像技術を用いて画素数の多いデジタル画像に変換すると、元の画素数ではノイズに埋もれていた情報が現れてくる。

 こうした超解像処理を行う手法にはいくつかあるが、主に2つのアプローチがある。1つは動画の中で複数フレームの情報を用いる方法だ。異なるフレームは微妙に異なる位置の画像をサンプリングしていることがほとんどなので、これを用いてナイキスト周波数以上の情報を取り出す。しかし、この方法は膨大な演算能力が必要な上、複数フレームを必要とするために、高精度な処理を行うために参照する映像枚数が増えてくると、映像の遅延が無視できない程度に発生してしまう。

 もう1つは再構成法と呼ばれるもので、映像をナイキスト周波数以上の高い周波数までの成分に変換し、反映していく手法だ。この方法を用いると、折り返しノイズとなっていたナイキスト周波数以上の高周波成分が復元され、映像に含まれる情報が増える。

 通常、デジタルのビデオカメラでは折り返しノイズが再生信号を汚さないよう、フィルターで落としてある。このためテレビ放送にも、家庭用ビデオカメラで撮影された映像にも、折り返しが含まれることはほとんどないと考えられるが、それでも再構成法を用いると解像度が向上する。

 なぜなら再構成法で解像度を高めることで、帯域制限フィルターの特性を変えることができるからだ。ナイキスト周波数近傍の高周波成分が損失なく再生可能になることで、超解像処理を行う前には見えなかったディテールが浮かび上がる。

 複数フレームを用いる方法に比べると情報量の増加は少ないが、複数フレームを使った超解像処理ではフレームバッファが大量に必要なほか、映像処理の遅延も無視できないほどに増えてしまう。これに対して再構成法ならば、現在の半導体技術でも製品に盛り込むことができる。

 このため昨今は単一フレームでの超解像技術が各所で発表されており、ワンセグ放送やデジタルカメラの画質向上に向けた実用化が進められている。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2008年11月26日