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» 2008年11月17日 11時45分 UPDATE

本田雅一のTV Style:ようやく選べる? ハイエンドBDプレーヤー

高機能なBlu-ray Discプレーヤーを待っていた人たちにとって、この年末から来年春ごろには見逃せない新製品がいくつも登場する時期になりそうだ。今回は、ソニー「BDP-S5000ES」とパイオニア「BDP-LX91」を紹介しよう。

[本田雅一,ITmedia]

 前々回、前回と価格帯別にBlu-ray Discプレーヤーを紹介してきた。今回はいよいよ「高級機」と呼ばれる製品に踏み込んでいきたい。本連載の読者には、「そんなに高価なプレーヤー、僕には関係ないよ」という方も大勢いるだろう。しかし一方で、これまでAV機器に投資をしてきたAVファンは、そろそろ高品位なBDプレーヤーが登場してくるのでは? という期待を持ち始めている。実は筆者もその一人だ。

 従来、高級プレーヤーといえる製品はデノンの「DVD-3800BD」「DVD-2500BT」と、その兄弟機マランツ「BD8002」しかなく、事実上、選択肢が存在しないという状況だった。そこに年末商戦に向けてソニーが「BDP-S5000ES」を12月に投入することで、やっと比較しながらどれにしようかと検討できる段階になるというのが現状だ。

photophoto デノンの「DVD-3800BD」(左)とマランツ「BD8002」(右)

 気付いている読者もいるだろうが、実はこの流れ、従来の新フォーマット黎明(れいめい)期とはちょっと状況が異なる。例えばDVDの頃は、もっと高価な、しかし物量を投入した製品が、もっと早い段階から登場していた。上位モデルに最新技術を投入し、そこで得たノウハウをもって低価格化に挑戦していくというのが、1つの流れだったからだ。

 しかしご存知のように、BD世代ではHD DVDとのフォーマット戦争が起こってしまった。このため、技術的な熟成やコストダウンなどに関して、メーカーはある範囲内で見切り発車的に低価格化をガンガン進めざるを得なかった。といっても、それはプレーヤーが市場の中心である北米を舞台にした値下げ競争だったが、市場原理を無視したものだったため、いくつものメーカーが参入し、技術を投入して市場の反応を見つつ、高品位な製品を育てながら徐々にコストダウンするというプロセスが省略されてしまった。

 「まぁ、結果的には安くなったからイイじゃない。それにプレイステーション3があるから困らないよ」。なんてことを、言葉にしなくとも誰もが感じるようになったために、BDプレーヤーの市場が正常化するまでに、少しだけ時間がかかってしまった。

 当然、各社ともこうした状況は把握した上で、高級プレーヤーを出そうというのだから、それなりの覚悟と自信を持った上での参入ということになろう。本格的な高級BDプレーヤー市場のスタートは、この年末から来年にかけてと将来は記憶されるはずだ。年末(?)あるいは来年早々にはパイオニアの「BDP-LX91」が、来年2月ぐらいまでにはデノンのハイエンド機が登場する。

photo ソニーの「BDP-S5000ES」

 まずは12月6日に発売されるソニーの「BDP-S5000ES」だが、同社のレコーダー「BDZ-X100」と同じく「CREAS」(クリアス)を映像処理LSIと搭載しているが、基幹部分のLSIを含めて画質は全く別のものと考えていい。基幹LSIは「BDP-S350」と同じだが、アナログ部のデキもHDMI出力の質も全く違う。MPEGノイズの多い放送波をあまり扱わない(録画したBD-R/REも再生可能だが、低品質の放送はあまりかけないという考え方だろう)こともありDRC-MF V3も搭載されていない。

 さらにCREASの設定も余分なエンハンスやノイズリダクションは抑え、市販BDパッケージソフトの素材の良さを生かして階調スムージングのみを行っている。HDMIのジッターを吸収するLSIを搭載し、送り出し側で受信側のレシーバーが安定して動作するよう品質を高める工夫や電源回りの設計を工夫することで、HDMI経由の音質に加えて画質も良くなった。

 音質に関してはSBM(8ビットで多階調表現を実現する機能)、DeepColorともに「切」に設定しないと実力が発揮できない印象だが、基本的な絵作りはナチュラルで階調性を重視し、X100のメリハリ調とは異なる奥行き感を損ねない雰囲気。

 加えてアナログ映像の質が素晴らしいことも報告しておきたい。このクラスのプレーヤーでアナログ接続重視というと、三管プロジェクタユーザーということになるだろうが、いやいや、筆者宅の「VPL-VW200」(LCOSプロジェクター)でもアナログ映像の品位の高さを体感できる。

 DeepColorかSBMがオンじゃないとCREASの階調クリエイションを生かせないし、それだとHDMIの音がちょっと落ちるしなぁ、なんて悩んでいるぐらいなら、映像をアナログで接続することを考えてみるといい。ピクセルクロック、白レベルと黒レベルをきちんと調整しておけば、きっとHDMI接続ほどのキレはないが、一方で違う豊かな階調と色表現、自然な輪郭描写を味わえるはずだ。

photo パイオニアの「BDP-LX91」

 残るパイオニアとデノンだが、デノンのハイエンド機はまだ熟成前。デノン製ハイエンド機はSACD、DVD-Audioも含むスーパー・ユニバーサル機ということで、どんな仕上がりになるのか今から楽しみだが、その前に出てくるパイオニアの「BDP-LX91」も相当に素晴らしいデキだ。

 先週お伝えしたように、下位モデルの「BDP-LX71」は凄まじい破壊力(?)を持った10万円を切る高画質プレーヤーだが、BDP-LX91はLX71が12ビットで処理している映像調整を16ビットで、しかもより子細な調整を経て出力する。自分でももちろん調整可能だが、より細かな調整を行ったプリセットが組み込まれているのはLX71と同じだ。

 ここまでの精度がデジタルディスプレイに必要なのか? という疑問はあるだろうが、現時点ではまだそこまでのテストはしていない。しかし、アナログ映像出力の質など映像機器のキモの部分に効いてくることは間違いないし、高品位な映像機器ほど受ける恩恵も大きくなるだろうことは想像に難くない。

 加えて音質。これは未完成の現時点でも素晴らしい。BDP-LX91は映像と音声を別々のHDMI端子から出力することで、HDMIからの音質を高めることができるが、現時点ではまだ分離する機能が働いていない。にもかかわらず、しっかりと力強く安定した低域の再生能力。音場を埋める細やかな空気のニュアンスまで表現できていた。

 さらにアナログ音声出力で192kHz/24ビット、ステレオ収録のBD音声を聞いてみると、高品位なオーディオ専用プレーヤーにも迫る音が出てくるのではないか。これだけ複雑なデジタル回路を内包するボディーで、ここまでの音を出してくるとは。

 やっと音と映像にこだわるAVファンの投資対象となる名機が誕生してくれるのかもしれない。デノンのハイエンド機も含め、個人的にも上位機種の動向に期待感を禁じ得ない。

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