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この年末、フルサイズデジ一眼は買いか?冬ボで買う、デジ一眼購入ガイド 前編(1/2 ページ)

» 2008年11月26日 00時00分 公開
[永山昌克,ITmedia]

4つのメリット――おじさん世代にも最適なフルサイズデジタル一眼

 デジタル一眼レフに関して今年下半期の大きなトピックは、実売30万円前後のフルサイズ機がニコン、ソニー、キヤノンの3社から登場したことだろう。フルサイズとは、35ミリフィルムサイズ(36×24ミリ)とほぼ同じ大きさのセンサーを指しており、標準的なデジタル一眼レフ機のセンサーであるAPS-Cフィルムサイズ(約23×15ミリ前後)に比べ一回り以上面積が大きい。


 従来、フルサイズ機といえば、キヤノン「EOS-1Ds」シリーズやニコン「D3」など実売50万円以上する高価かつ大柄なプロ仕様機がほとんどで、アマチュアが気軽に購入できるフルサイズ機としては2005年発売のキヤノン「EOS 5D」くらいしか選択肢がなかった。それが今では、ニコン「D700」、ソニー「α900」、キヤノン「EOS 5D Mark II」という新製品が加わり、一般の人でもちょっと背伸びをすればフルサイズの画質を気楽に味わえるようになった。

photophotophoto キヤノン「EOS-1Ds」(写真=左)、ニコン「D3」(写真=中)、キヤノン「EOS 5D」(写真=右)

 フルサイズのメリットは大きく分けて4つある。1つは画質の高さだ。画素数が同じ場合、センサーのサイズが大きいほど個々の画素サイズも大きくなり、大きい分よりたくさんの光を受光できるようになる。その結果、色や階調の再現性が豊かになったり、高感度時の画質劣化を抑えられる、といった利点がある。逆に言うと、フルサイズは高画素化に強く、前述のフルサイズ新製品3台のうち2台は2000万画素オーバーの多画素を実現している。

 もちろん画質の高さは、センサーサイズや画素数だけで決まるわけでなく、処理エンジンやレンズの性能も重要になる。さらに言えば、A4サイズまでの印刷用途で、高画素フルサイズによる高画質をどこまで実感できるか、という別の論点もあるが、純粋にセンサーの性能としては、より大型の、つまりフルサイズのセンサーが高画質化に有利といっていい。

 フルサイズの2つ目のメリットは、ボケを生かした撮影がしやすいことだ。センサーサイズが大きいほど、同じ画角(写る範囲)でのレンズの焦点距離が長くなり、被写界深度が浅くなる。つまり、画角と撮影距離、絞り値が同じなら、APS-Cサイズのカメラよりも、フルサイズのカメラのほうが、ピントを合わせた部分以外の前後のボケ量が多くなるのだ。

 正確には、ボケの生じやすさは“メリット”ではなく、フルサイズの“特性”のひとつと言うべきだろう。背景をぼかした写真的で奥行きを感じる表現を狙うにはフルサイズは好適だが、逆に前後までシャープにピントを合わせることは、APS-Cサイズよりも不得手になる。ただ、これまでAPS-Cサイズの一眼レフ機に慣れていたユーザーが初めてフルサイズを体験すると、同じ画角での被写界深度の浅さに、新鮮な驚きを感じることはあるだろう。

 3つ目のメリットは、ファインダーの見やすさだ。ファインダー内の表示の大きさは、センサーサイズとほぼ比例するため、フルサイズ機はどの製品でも、APS-Cサイズのカメラに比べて格段に大きなファインダー表示となる。大きな表示は単純に気持ちがいいし、構図やピントの確認のしやすさにもつながる。

 4つ目のメリットは、レンズに表記されているそのままの焦点距離を利用できることだ。例えば28ミリのレンズならこれくらいの距離感で、これくらいの遠近感が生じ、これくらいの範囲が写る、といったレンズの焦点距離ごとの特性が、感覚として身体や頭になじんでいる写真愛好家は少なくないと思う。

 そんな人にとっては、APS-Cサイズのように、頭の中でいちいち「換算」する必要がないフルサイズ機は使いやすいはず。また、かつてそろえたフィルム用の交換レンズ一式をそのままの撮影感覚で利用できることもメリットになるだろう。もっとも、APS-Cサイズのデジタル一眼が普及してすでに10年近くになるので、これは筆者も含めたおじさん&おじいさん世代に限定したメリットかもしれない。

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