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オーディオの作法麻倉怜士のデジタル閻魔帳(3/3 ページ)

» 2008年12月03日 19時13分 公開
[渡邊宏,ITmedia]
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オーディオの作法

麻倉氏: 述べてきたように、「よい音」への欲求・追求は常に存在します。わたしは「やっぱり楽しいオーディオ生活」をオーディオ入門者への指南書とすべく執筆しましたが、近著の「オーディオの作法」では現在オーディオを楽しんでいる人へ、使いこなしの方法やテクニックを「作法」としてまとめました。おかげさまで、発売10日で増刷がかかりました。

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 オーディオとは(入門して)買ってくるだけではダメで、自分で工夫をして、手を入れていけば、それだけ感動の音が得られるのです。大変ではありますが、そこが楽しさなのですね。「オーディオの作法」では、音楽を楽しむまでの準備段階からオーディオの基礎知識、ショップでの買い方、スピーカー/プレーヤーの置き方、フェルトの置き方、CDの“2度がけ”といったちょっとしたテクニック、電源の基礎知識、カーテン使い方、サラウンドの作法、ディスクの作法などを、7章63の「作法」として紹介しています。

 オーディオ機器は買ってきた段階では、私の経験では最終的な音の3割も出ていないのです。置き方に始まり、電源の選択などさまざまなところに気を配れば、それだけいい音を出してくれます。わたしはオーディオルームに機材を入れると、まず電源を入れて試聴し、その後に電源極性やラックの位置、インシュレータ/フェルト/ケーブルの種類などさまざまな変更を行っています。

 例えば、最近システムに加わったソニーのBlu-ray Discプレーヤー「BDP-S5000ES」ですが、HDMIを利用する機器はそのケーブルに何をチョイスするかで音は大幅に変わってきます。また、HDMIは1本で映像と音声を伝送するので、映像の利用帯域を変えるだけで音にも変化が生じます。HDMIで映像を480iに設定すれば、格段に音質が上がります。あえてハイビジョン映像はアナログで出力するというのも手です。わたしの経験ですが、なにかしらの調整や変更を行えば、音は5倍は良くなりますね。

 確かに不況は長引いていますが、円高も同時に進んでいるために輸入製品が買いやすくなっているというプラスの側面もあります。イギリスのKEFやモニターオーディオ、ドイツのELACなどは理論に忠実ながらも新技術を積極的に取り入れますし、JBLのような伝統がなければ出せない音を作り出すメーカーもあり、スピーカーを中心に海外メーカーの製品は非常に面白くなっています。ステレオアンプは国内では数そのものが少ないですが、イタリアのオーディオ・アナログやフランスのアトールなど、ヨーロッパ製品へ目を移せば楽しい音を出す製品は数多く存在します。

photophoto KEF「iQ3」(写真=右)、モニターオーディオ「BRONZE BR1」(写真=左)

 こうした製品を使って、楽しいオーディオ生活を始めましょう。初めてのオーディオ生活はiPodからスタートしましょう。、室内音響としてのオーディオとアウトドアオーディオとしてのiPod(もちろん非圧縮で!)、この2つを上手に使い分けていくことが、これからのオーディオ生活にとって重要なことです。

麻倉怜士(あさくられいじ)氏 略歴

 1950年生まれ。1973年横浜市立大学卒業。 日本経済新聞社、プレジデント社(雑誌「プレジデント」副編集長、雑誌「ノートブックパソコン研究」編集長)を経て、1991年にデジタルメディア評論家として独立。自宅の専用シアタールームに150インチの巨大スクリーンを据え、ソニー「QUALIA 004」やBARCOの3管式「CineMAX」といった数百万円クラスの最高級プロジェクターとソニーと松下電器のBlu-ray Discレコーダーで、日々最新AV機器の映像チェックを行っている、まさに“映像の鬼”。オーディオ機器もフィリップスLHH2000、LINNのCD12、JBLのProject K2/S9500など、世界最高の銘機を愛用している“音質の鬼”でもある。音楽理論も専門分野。
 現在は評論のほかに、映像・ディスプレイ関係者がホットな情報を交わす「日本画質学会」で副会長という大役を任され、さらに津田塾大学の講師(音楽史、音楽理論)まで務めるという“3足のワラジ”生活の中、精力的に活動している。

著作


「オーディオの作法」(ソフトバンククリエイティブ、2008年)――音楽を楽しむための、よい音と付き合う63の作法
「絶対ハイビジョン主義」(アスキー新書、2008年)――身近になったハイビジョンの世界を堪能しつくすためのバイブル
「やっぱり楽しいオーディオ生活」(アスキー新書、2007年)――「音楽」をさらに感動的に楽しむための、デジタル時代のオーディオ使いこなし術指南書
「松下電器のBlu-rayDisc大戦略」(日経BP社、2006年)──Blu-ray陣営のなかで本家ソニーを上回る製品開発力を見せた松下の製品開発ヒストリーに焦点を当てる
「久夛良木健のプレステ革命」(ワック出版、2003年)──ゲームソフトの将来とデジタルAVの将来像を描く
「ソニーの革命児たち」(IDGジャパン、1998年 アメリカ版、韓国、ポーランド、中国版も)──プレイステーションの開発物語
「ソニーの野望」(IDGジャパン、2000年 韓国版も)──ソニーのネットワーク戦略
「DVD──12センチギガメディアの野望」(オーム社、1996年)──DVDのメディア的、技術的分析
「DVD-RAM革命」(オーム社、1999年)──記録型DVDの未来を述べた
「DVD-RWのすべて」(オーム社、2000年)──互換性重視の記録型DVDの展望
「ハイビジョンプラズマALISの完全研究」(オーム社、2003年)──プラズマ・テレビの開発物語
「DLPのすべて」(ニューメディア社、1999年)──新しいディスプレイデバイスの研究
「眼のつけどころの研究」(ごま書房、1994年)──シャープの鋭い商品開発のドキュメント


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