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「高音質CD」――どこがどう違う?デジモノ家電を読み解くキーワード

» 2008年12月04日 19時29分 公開
[海上忍,ITmedia]

レコード会社が注力する「高音質CD」

 音楽CDの売上減少傾向が続いているが、音にこだわるオーディオファンには「高音質CD」が人気だ。日本ビクターとユニバーサルミュージックが共同開発した「Super High Material CD」(SHM-CD)や、メモリーテックが開発しEMIやポニーキャニオンが売り出している「High Quality CD」(HQCD)は、いずれも好調なセールスを記録しているという。

 そこへ、ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)が「Blu-spec CD」で参入した。第1弾として、クラシックやジャズなど計60タイトルが、ソニー・ミュージックジャパンインターナショナルから12月24日に販売開始される。当面は旧譜の再発がメインだが、今後は新譜の段階から展開する計画もあるとのことだ。

photo Blu-spec CD

「音楽CD」の範囲内での音質向上

 これらの高音質CDには、2つの共通点がある。既存のCDも基板材料にポリカーボネート樹脂を使用しているが、これらの高音質CDは、既存CD用よりも透明度の高い、高品位なポリカーボネート樹脂を採用している。厚さ約1.2ミリのポリカーボネート樹脂にデータを転写し、そこへ反射膜/保護膜とレーベルを塗った音楽CDは、非接触ゆえにデータが劣化しないという特性を持つはずだが、実際には読み取り時にエラーが多発している。高音質CDでは高品位な樹脂を採用し、かつ、HQCDでは特殊合金製反射膜の採用なども併用することで読み取りエラーを低減させ、音質の向上を図っている。

 もう1つが「互換性」。前述した高音質CDは、すべて標準規格の「CD-DA」に準拠しているため、一般的なCDプレイヤーで再生できる。Super Audio CD(SACD)やDVD-Audioとは異なり、プレーヤーをリプレースする必要がないのだ。家電メーカーを巻き込むことなく、レコード会社(およびプレスを担当する会社)独力で従来品以上の高音質を実現できることも、積極展開の理由と考えられる。

後続のSMEは「Blu-ray」をアピール

 現段階では最後発のBlu-spec CDだが、「Blue Laser Diode(BLD)カッティング」と呼ばれる技術を採用していることに注目だ。ポリカーボネート樹脂へデータを転写するときには、マスター音源から作成した金型(スタンパー)を利用するが、Blu-spec CD用のスタンパーはBlu-rayで培った技術により高精度なカッティングが行われている。極微細加工を施したスタンパーとBDと同様の高分子ポリカーボネート樹脂の組み合わせが、高音質の秘密だ。

photo 「Blu-spec CD」の表面拡大。従来品(左)と高分子ポリカーボネート(右)によるビット品質の違い。従来品はエッジ部分が平滑でないためジッターの発生源となってしまうことがあったという

執筆者プロフィール:海上忍(うなかみ しのぶ)

ITコラムニスト。現役のNEXTSTEP 3.3Jユーザにして大のデジタルガジェット好き。近著には「デジタル家電のしくみとポイント 2」、「改訂版 Mac OS X ターミナルコマンド ポケットリファレンス」(いずれも技術評論社刊)など。


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