複合機のスキャンエンジンはコピー機能のためという印象が強く、画質うんぬんを述べるのは野暮(やぼ)かもしれない。なぜなら、最高品位のプリントエンジンはもはや複合機にしか搭載されないが(A4サイズに限ればだが)、最高品位のスキャンエンジンは、単体のフラットベッドスキャナとして別途販売されている。フィルムスキャンも含めて本格的なスキャン性能が必要ならば、複合機に頼る必要はないのだ。
ただ、ミドルレンジクラスのスキャナを求める層には、複合機は魅力的な製品には違いない。メーカーがしのぎを削っていることと、多少製造コストが上がってもサプライで回収できることから、安価な複合機でも高性能のスキャンエンジンを搭載するケースが多いからだ。
スキャン品質の比較は、L判の写真印刷を取り込むことで行った。スキャナドライバ(TWAIN)の設定は基本的にデフォルトのままでスキャンを行うが、解像度は共通の600dpiにした。各画像をクリックすると、600dpiでスキャンした画像の一部が1024×768ドットで実寸表示される。なお、スキャン画像サンプルのプロファイルはsRGBとなっている点は留意してほしい。
結果は、光学系の性能差というより、ソフトウェア補正技術に大きな差が見られた。使用したサンプルはかなり厄介なものなので、キレイに色を出すのは難しい。実際のところ、デフォルト設定のままで問題なく利用できるレベルだったのは、エプソンの3製品だけだった。さすがはGTスキャナで一世を風靡(ふうび)しただけのことはある。
画質の検証結果をまとめると、フォト複合機を名乗るだけあって、いずれの製品も一定の品質を保っていた。写真印刷に特化した各社のA3ノビ対応インクジェットプリンタ群と比べるのは酷だが、盛りだくさんの機能を詰め込みつつ、写真の出力品質はホームユースで納得できるだけの水準があるのだから、コストパフォーマンスは高い。
今回は各機の違いを見せるため、各画像サンプルの評価は厳しく行ったが、ホームユースにおいてデジカメで撮影した写真データを印刷して周囲に配った場合、画質がイマイチと思われるようなことはないはずだ(むしろ、高画質に思ってくれる人が多いだろう)。そのためにも、一般の人がぱっと見て印象がよいメリハリある絵になっている。
各製品のプリント/スキャン品質については前述の通りで、実力はなかなか拮抗(きっこう)している。写真用紙への印刷はキヤノン機とエプソン機が優位に立ち、普通紙印刷では日本HP機が巻き返し、スキャン品質はエプソン機が優勢という構図にはなったが、印刷品質が突出した1台というのは見られなかった。
それでもあえて1台を挙げるならば、やはりMP980だろう。グレーインクの採用により、ライトインクを排しながらも粒状感はなく、(自動色調整では失敗するケースもあるが)階調性も申し分ない。無論、モノクロプリントに至っては、他の追随を許さぬ差を見せつけてくれた。
ただ、これはグレーインクだけの手柄ともいい難い。紙白がニュートラルな新用紙「キヤノン写真用紙・光沢プロ[プラチナグレード]」があればこそ、グレーのニュートラルさがより引き出せているのだろう。
複合機注目モデルの主だった検証は今回で終了した。次回はこれまでの内容を振り返り、特集を総括する。最終回はこちら。
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