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第4回 印刷品位をとことんチェック――最も高画質な複合機は?複合機08-09年モデル徹底検証(3/3 ページ)

» 2008年12月17日 16時45分 公開
[榊信康,ITmedia]
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印刷物のスキャン(600dpi/デフォルト設定)

 複合機のスキャンエンジンはコピー機能のためという印象が強く、画質うんぬんを述べるのは野暮(やぼ)かもしれない。なぜなら、最高品位のプリントエンジンはもはや複合機にしか搭載されないが(A4サイズに限ればだが)、最高品位のスキャンエンジンは、単体のフラットベッドスキャナとして別途販売されている。フィルムスキャンも含めて本格的なスキャン性能が必要ならば、複合機に頼る必要はないのだ。

 ただ、ミドルレンジクラスのスキャナを求める層には、複合機は魅力的な製品には違いない。メーカーがしのぎを削っていることと、多少製造コストが上がってもサプライで回収できることから、安価な複合機でも高性能のスキャンエンジンを搭載するケースが多いからだ。

 スキャン品質の比較は、L判の写真印刷を取り込むことで行った。スキャナドライバ(TWAIN)の設定は基本的にデフォルトのままでスキャンを行うが、解像度は共通の600dpiにした。各画像をクリックすると、600dpiでスキャンした画像の一部が1024×768ドットで実寸表示される。なお、スキャン画像サンプルのプロファイルはsRGBとなっている点は留意してほしい。

EP-901F:気持ち浅めでシャドーに力がない。飛び気味、つぶれ気味の部分も目立つ。ただ、カラーバランスがしっかりと取れているため、全体的な印象はよい
EP-801A:EP-901Fと似た傾向ではあるが、階調の推移はこちらのほうがスムーズに行えている。カラーバランスもよく、印象がよい。ただ、シャドーでは階調の欠落が見られる
PM-A840S:色が全体的に黄色に寄っている。背景の色をかぶりと見たのか、漂白されてしまった。そのぶん、抜けがよくなってはいる。金属などは先鋭感が増した印象だ

MP980:かなり明度が高く、シャドーは浮き、ハイライトは飛んでしまった。また一様に乗った赤みのため、さらにシャドーに力がなくなっている。解像感は申し分なく、細部までしっかりと取り込めた
MP630:かなり破たんして見えるが、暗点と明点はしっかりしているので補正はむしろ楽なほうで、ドライバで中間調を落とすだけで落ち着く。グレーにはマゼンタがかぶっており、色鉛筆のケースはサビが浮いたようになった
MP620:こちらもMP630と同様の傾向だが、ハイライト域がかなり消し飛んでいるので、後処理での補正は難しい。ドライバで暗点と明点を指定したほうが早いだろう。薄っすらと乗ったマゼンタを補正すればメリハリもよみがえる

C6380:中間調が持ち上がり過ぎで、蛍光色のようになっている。背景の微妙な階調は色とともにきれいに取られてしまった。シャープネスも効き過ぎているため、果物などは質感を損ねている

 結果は、光学系の性能差というより、ソフトウェア補正技術に大きな差が見られた。使用したサンプルはかなり厄介なものなので、キレイに色を出すのは難しい。実際のところ、デフォルト設定のままで問題なく利用できるレベルだったのは、エプソンの3製品だけだった。さすがはGTスキャナで一世を風靡(ふうび)しただけのことはある。

画質の検証を終えて

 画質の検証結果をまとめると、フォト複合機を名乗るだけあって、いずれの製品も一定の品質を保っていた。写真印刷に特化した各社のA3ノビ対応インクジェットプリンタ群と比べるのは酷だが、盛りだくさんの機能を詰め込みつつ、写真の出力品質はホームユースで納得できるだけの水準があるのだから、コストパフォーマンスは高い。

 今回は各機の違いを見せるため、各画像サンプルの評価は厳しく行ったが、ホームユースにおいてデジカメで撮影した写真データを印刷して周囲に配った場合、画質がイマイチと思われるようなことはないはずだ(むしろ、高画質に思ってくれる人が多いだろう)。そのためにも、一般の人がぱっと見て印象がよいメリハリある絵になっている。

 各製品のプリント/スキャン品質については前述の通りで、実力はなかなか拮抗(きっこう)している。写真用紙への印刷はキヤノン機とエプソン機が優位に立ち、普通紙印刷では日本HP機が巻き返し、スキャン品質はエプソン機が優勢という構図にはなったが、印刷品質が突出した1台というのは見られなかった。

 それでもあえて1台を挙げるならば、やはりMP980だろう。グレーインクの採用により、ライトインクを排しながらも粒状感はなく、(自動色調整では失敗するケースもあるが)階調性も申し分ない。無論、モノクロプリントに至っては、他の追随を許さぬ差を見せつけてくれた。

 ただ、これはグレーインクだけの手柄ともいい難い。紙白がニュートラルな新用紙「キヤノン写真用紙・光沢プロ[プラチナグレード]」があればこそ、グレーのニュートラルさがより引き出せているのだろう。


 複合機注目モデルの主だった検証は今回で終了した。次回はこれまでの内容を振り返り、特集を総括する。最終回はこちら

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