“黒”にこだわっているメーカーだけあって、末弟といえどもブラックアウトへの表現力はさすが。階調に関しては上位機種に大きく水を開けられているものの、ギリギリまで粘って最後にストンと落ちる演出は、映像をとても立体的に、質感高く見させてくれる。映画などにこういった表現はピッタリで、画面全体がキリリと引き締まり、とても印象的な映像を楽しむことができた。
実際に上下の黒帯を見てみると、かなり“浮いている”ことが確認できるのだが、それが映像のなかの黒になると、ずいぶんと深く沈み込んでいるように感じられるのだ。全帯域にわたる階調表現が絶妙だからこその黒なのだろう。最新のD7C2FINEパネルに比べて開口率もネイティブコントラストも劣るD6C2FINEでここまでの実力を発揮させるとは。使い慣れたパネルをあえて選んだ、三菱電機の意地にも近い気概すら感じられる、熟成度の高い映像だ。
しかも好みによって、黒の落ち方を急にしたり、逆に緩やかにすることもできる。レベルの高い表現力に、自分の好みを加味できるのは嬉しい。欲をいえば、上位機種のHC7000のように、もう少し艶やかさが加わってくれると文句はないのだが、コスト差を考えるとぜいたくな要望だろう。
黒の表現が美しい分、ホワイトアウトへの表現は気持ち圧迫されているようなイメージがある。明暗の激しい映像では、普段よりもちょっと落ち着いたイメージの映像となる傾向があるのだ。ただ、それはエプソンや三洋電機のような、まばゆいばかりの明るさを先に見てしまったからかもしれない。表現としても絶対的な光量としても、必要な階調はしっかり保っている。
黒、黒と騒いでいるが、決して色合いの表現が下手なわけではない。赤は強すぎるくらい鮮やかで印象的。青も透明度の高い良好なイメージで、調整次第でかなりの表現力を発揮できる。個人的には緑を多少弱めにしたほうが、人肌の影などが良好になる気もしたが、これはあくまでも好みの範囲だろう。
残念ながら唯一動画に関しては、それほど芳しくはなかった。激しい動きのシーンや、カメラがパーンするシーンなどでは、残像や動きボケがはっきりと現れてしまう。スポーツやアクションシーンの多い映画を好んでみる人は、それが気になるかどうか実際の映像を確認してから購入を検討する方が得策だ。
本格シアターの入門機という位置づけにふさわしい機種だけに、部屋を暗くして映像の美しさを存分に楽しみたいという人にはピッタリの1台。間接照明程度の明るさならそれなりに楽しめるものの、HC5500の実力はかなり間引かれてしまうため、明るいリビングで使いたい人にはあまり向かないかもしれない。
いっぽうソフトのジャンル的には、スポーツやアニメ、アクションものよりも、映像の美しさに凝っている映画などの方がお勧め。ただしDVDもかなり良好に再生してくれるので、DVDソフトを数多く持っている人も有力な候補の1つになるだろう。
最後に強烈なインパクトを持っているのが、その価格だ。今回はエントリークラスに絞って紹介しているものの、そのなかでもHC5500は、実売20万円前後という格段のリーズナブルさを誇る。いくつかの苦手項目はあるものの、価格と実力の双方から有力候補となる、この秋最大の注目機種のひとつであることは断言しよう。
品番 | LVP-HC5500 |
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パネル形式 | 無機液晶パネル0.74型×3枚、アスペクト比16:9 |
投映レンズ | 手動ズーム・フォーカス(1〜1.2倍)、f=24〜29ミリ |
光源 | 160ワット UHPランプ |
画面サイズ | 最小50型〜最大250型 |
投射距離(100インチ) | 3.2〜3.8メートル |
有効光束(明るさ) | 1000ルーメン |
コントラスト比(全白/全黒) | 10000:1(オートアイリス使用時) |
騒音レベル | 19dB(ランプ低モード時) |
映像入力端子 | HDMI端子×2(HDMI 1.3 Deep Color対応)、コンポーネント(Y-Pb/Cb-Pr/Cr)×2、S端子×1、RCAビデオ端子×1、ミニD-sub15×1 |
消費電力 | 250ワット(待機時 7ワット) |
外形寸法 | 334(幅)×352(奥行き)×125(高さ)ミリ |
質量 | 5.6キログラム |
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