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満足度を高める“BDレコーダー選び”のポイント本田雅一のTV Style

» 2008年12月19日 11時06分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 先週に続き、2008年の年末商戦における製品選びに関して、いくつかの視点で情報をまとめておこう。今回はBlu-ray Disc(BD)レコーダーを中心とするBD関連製品についてだ。

 この年末、BDに関する話題は価格にまつわるものが多い。雑誌やWebサイトの記事では、もちろん機能比較や画質・音質に関する話題も少なくないが、実際の市場では“価格”がすべてを支配しているかのようだ。

 シャープが「AQUOSブルーレイ」を積極的に低価格で販売したのが、ことの始まりだった。とくに液晶テレビ「AQUOS」シリーズとセットで購入することで割引率がアップするといった販売方法が多く、一時はレコーダー市場では伝統的に強いソニー、パナソニックの2社を抜き、小差ながら売り上げ台数でトップに立ったこともあった。

 ブルーレイ非搭載のAQUOSハイビジョンレコーダー時代から積み重ねてきたソフトウェアは、機能こそシンプルで画面デザインも派手さはないが、あまり大げさに編集作業などを行わないのであれば地味に扱いやすい。デジタルカメラ写真を取り込み、表示する機能も軽快で使いやすい。画質や音質といった面ではソニー、パナソニックに譲るが、基本的な部分では大きな違いはない。

 この価格攻勢に対抗したのがパナソニック。パナソニックは昨年、BDレコーダーのシステムチップ統合をいち早く果たし、ソフトウェア、LSIともに熟成を重ねて今年に挑んできた。性能やユーザーインタフェースで熟成を重ねたことに加えて、コスト競争力も向上していたのだろうか。驚くほど価格を下げてきた。

photo パナソニック「DMR-BW830」

 とくに売れ筋になっているのが、「DMR-BW830」だ。500GバイトHDDを搭載する大容量モデルだが、昨年の「DMR-BW800」が最上位「DMR-BW900」をベースにデチューンした構成だったのに対し、今年は「DMR-BW730」をベースに容量を増やしたモデルになっている。どちらでも同じでは? と思うかもしれないが、実は上位モデルの「DMR-BW930」(レビュー 前編後編)は電源の構成やボディー、HDMI出力回路の構成などの細部仕様が異なっており、より画質・音質指向の製品。昨年に比べて”800番台のDIGAが安い”のには、それなりの背景がある。もっとも、機能面での差違はないので、お買い得感のあるDMR-BW830に人気が集まっているのだろう。

 筆者自身はDMR-BW930のユーザーであるが、これだけの価格差があるなら、画質命という方以外にはDMR-BW830の方を勧める。低コスト版とはいっても、基本性能の高さは同じなのだから。

photo ソニーの「BDZ-X95」

 最大のライバルであるパナソニックが大胆に価格を下げたことで、最終的にはソニーもそれに追随しようとしているが、もっとも高品位指向の高い「BDZ-X100」の廉価版である「BDZ-X95」(レビュー 前編後編)は、さすがに価格面で対抗できない。BDZ-XシリーズはシステムLSIの他に、AVCエンコーダーや最新の映像処理チップ「CREAS」、それに「DRC-MF3.0」と、多数のLSIを混載している。システムチップは昨年と同世代なのだが、コストが高く、同容量のDMR-BW830に価格では対抗しきれないのか、それともあえて無理な価格競争に参加しようとしていないだけなのか。

 本来ならソニーはDMR-BW830はより低価格な「BDZ-L95」と比べてほしいのだろうが、DMR-BW830が昨年のDMR-BW800のイメージを引き継いで上位機種のイメージを確保しているだけに、BDZ-X95と比較されがちという面がある。とはいえ、BDZ-Xシリーズには、パナソニックのDIGAよりも音質面では優れているという側面がある。市販BDソフトの再生品質やBD-J採用ソフトの動作速度などはDIGAが上回るが、音質重視ということならば、価格面でこなれてきたBDZ-Xシリーズをチョイスるのもいいと思う。

photo 殻付きBD-RE 1.0を再生できる唯一の現行機種。ソニー「BDZ-A70」

 また、かつて保護カバー、いわゆる”殻付き”のBD-RE 1.0で録画をしてきた読者には、殻付きカートリッジを再生可能な「BDZ-A70」の存在を紹介しておきたい。BD-RE 1.0はシャープが昨年からサポートを打ち切り、今年後半になってソニー、パナソニックもサポートを見送った。従って現在、多くの録画資産を保有しているユーザーは、今後、再生可能な機材が入手できなくなる可能性がある。BDZ-A70は、ソニーおよびパナソニックの昨年モデルの流通在庫を除くと、現行では唯一の殻付きカートリッジが再生可能な製品なのである。

 実に腹立たしい思いをしている読者もいるだろうが、殻付きカートリッジとベアディスクでは、ディスクの止まる位置を変えなければならないなどメカニカルな変更が必要なため、両対応ドライブのコストアップやユーザー数を勘案すると、新規ドライブを開発できないというのが、今年、バタバタとサポートされなくなった理由だ。

 こんな時、多少高価でも殻付き再生をサポートするBDプレーヤーを販売してくれれば、「やっぱり○○は立派だね」といわれると思うのだが、そうもいっていられないほど殻付きを再生したユーザーが少ないと思っているのだろうか? 筆者宅でも200枚ほどの殻付きBDが転がっている。“○○”の中に名を刻むメーカーは、さすがにこの不況では現れそうにない。

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