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フルHD動画撮影も可能な万能カメラ――キヤノン「PowerShot SX1 IS」レビュー(2/5 ページ)

» 2009年01月05日 11時05分 公開
[小山安博,ITmedia]

実用性の高いフルHD動画撮影機能

 本製品のポイントの1つが動画撮影機能の強化だ。「PowerShot S5 IS」なども背面に動画ボタンを配置しており、動画ボタンを押せばすぐさま動画撮影が行える、というのが特徴の1つだったが、新たにフルHDでの動画撮影が可能になっている。

photo 液晶上部にある赤いボタンが動画ボタン。静止画撮影中でもこのボタンを押せばすぐに動画撮影が行える。モードダイヤルにも動画モードが用意されているが、ボタンを使えば静止画撮影中でも素早く動画撮影ができて便利

 「PowerShot SX10 IS」でも、映像コーデックにH.264を採用して動画を強化していたが、それでも画面サイズは640×480ドット/30fps止まりだった。それがSX1 ISでは、1920×1080ドット/30fpsと一気にフルHDへ対応した。ちなみに音声はリニアPCMのステレオで、コンテナはMOV(拡張子.MOV)だ。

 フルHD対応に伴って搭載されたのが「アスペクト比切り替えボタン」。本体背面の左上にあり、ボタンを押すたびに4:3と16:9が切り替わる。4:3のまま動画ボタンを押すと640×480/30fpsの動画撮影になるが、ボタンでアスペクト比を切り替えると自動的にフルHDの撮影ができる。16:9にすると、横幅が広くなり、撮影自体もちょっと楽しい。その上、さらに動画ボタンを押すとそのまますぐにフルHD動画が撮影できるのもいい。

 単なるフルHD動画の撮影だけでなく、SX1 ISに搭載された光学20倍ズームレンズがいい。ファミリー向けのフルHDビデオカメラだと、光学10〜12倍ズームあたりが一般的で、20倍ズームレンズを搭載したカメラはあまり多くない。しかも35ミリ換算で29ミリという広角から撮影できるというビデオカメラも少ないので、それだけでも価値がある。

 その上、20倍ズームレンズには同社得意の光学式手ブレ補正を搭載。20倍ズーム時でもブレの少ない映像が撮影できる。静止画撮影時に比べると動画撮影時はズーミング速度がゆっくりになるが、高速にズーミングする方が撮影が難しくなるので、この辺は正しい動作だろう。

 超音波モーター(USM)を搭載するだけあってズームは静かで、ズームの音は気になるほど映像に入り込まないが、ズームレバーを操作する音がどうも入り込む感じ。また、画面が揺らぎが混じることがあり、シーンによっては気になる。原因の特定はできないが、読み出し速度が足りていないのかもしれない。

 ただ、画質自体は悪くはない。フルHDの画質としては十分及第点をあげられると思う。一般的なコンパクトデジカメの動画とは一線を画す画質だ。音声はレンズ上部に2つ並ぶマイクでステレオ録音ができる。

 動画撮影中にできる撮影機能は少ないが、露出補正ボタンを押して背面のコントローラーホイールを回すと露出が変更でき、十字キーのMFボタンを押すとフォーカスを手動で設定できる。

 さらに、動画撮影中でもシャッターボタン半押し→全押しで静止画の撮影が可能だ。動画は1920×1080ドットで撮影しているが、静止画は16:9/840万画素で撮影される。ISO感度などはオートになるようだ。撮影時は、設定してあればAF補助光が投光されて映像にも映ってしまう点と、設定にかかわらず動画へシャッター音が記録され、画面が一瞬ブラックアウトする点は気になった。とはいえ、目くじらを立てるほどではない。

 ただし、フルHDの映像をPCに取り込んで再生/編集するにはそれなりのマシンパワーが必要だ。筆者のメインマシンは、CPUがオーバークロックで3.16GHz動作にしたCore 2 Quad Q6600、メインメモリ4Gバイト、グラフィックスカードがATI Radeon X300SE(128Mバイト)、OSはWindows Vista SP1 32bitという環境だが、グラフィックスカードの能力が足りないためか、QuickTime Playerではスムーズな再生が難しかった。

 また、MacBook Pro(Core 2 Duo 2.33GHz/メモリ2Gバイト)はATI Mobility Radeon X1600(256Mバイト)を搭載するためかコマ落ちもせずに再生できた。Core 2 Duo T8100/メインメモリ4Gバイト/Intel GMA X3100のWindows VistaノートPCでの視聴は難しかった。

photo 動画再生時は、始点と終点を設定して動画をカットすることができるぐらいで、編集機能は特にない

 静止画撮影時に行った設定は、動画撮影にも引き継がれる。この特徴を生かせば、「ステッチカラー」を利用してセピアやモノクロの動画も撮れる。撮影中に変更できないのは残念だが、うまく使えばバリエーション豊かな撮影ができそうだ。

 なお、フルHDでの撮影は、ファイル容量が4Gバイトに達した時点あるいは撮影時間が29分59秒になるまで行える。フルHDだと12〜13分ほど撮影すると4Gバイトに近づくようなので、基本的には長時間撮影するよりも、――普段は静止画、ここぞというポイントで動画――という使い方が向いているようだ。

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