一方、バックヤードで行われた3D映像の記録方式に関する技術(名称未定とのこと)は、BDプレーヤーやHDMI接続は従来のままで、3D映像に必要な左右の像を3D対応テレビに送るというものだ。既存技術を変更せずに3Dコンテンツを伝送する方法としては、リアルDの“サイドバイサイド”(横方向の解像度を半分に減じ、左右の絵を並べる方法)が知られているが、ドルビーの方式では画素を市松模様に間引くことで左右の映像を1枚分の画素数で伝送する。
コンテンツをBlu-ray Discなどに収録する方法は変更する必要がなく、HDMIの仕様も変更する必要がないのが利点だ。ディスクを制作するオーサリングの時点で3D映像であることを決めておくのだから、それも当然だろう。もちろん3Dテレビの側に、ドルビー方式の3D映像をデコードする仕組みは必要だが、特定の3Dディスプレイ技術にも依存しない。
映像を市松模様とする利点は、解像感を失わずに済むという利点があるからだ。市松模様の間引きはサブサンプリング圧縮といわれるもので、適切な復元処理を行うことで半分に減らした画素から70%程度までの上方を復元できるとされる。アナログハイビジョン放送の方式として使われたMUSEが、同じくサブサンプリング圧縮を用いていた。
ただし、輪郭に関してはシャープに復元できるものの、細かなテクスチャー上方は復元しにくいようだ。フルHD最大の利点である質感表現が甘くなってしまう。この点と既存システムを大きく変更する必要がないメリットをどのように見るかで、この方式の評価は変化するだろう。
ソフトには、2枚のサブサンプリング映像を重ねてエンコードする専用オーサリングが必要になる。2Dシステムとの互換性はソフトウェアの側にはないので、3D映像と2D映像を同時に収録するためには、同じ映像を2本ずつ入れなければならない(あるいは2枚のディスクに分けて収録するかだが、その場合はコンテンツのライセンスが2倍必要になるため、価格が高くなるだろう)。
なお、ドルビーとしてこの伝送方式を標準化提案する予定はないという。一方ではソニー、パナソニック、フィリップスに映画スタジオを加えたグループが、今年3月にもBlu-ray Discアソシエーション総会で3D映像の収録方式を提案する。昨年のCEATECでパナソニックが紹介した方式に近い方法での提案となる見込みだ(→“3D”に向けて本格始動するテレビ業界)。
ドルビーでは、「従来システムや規格を変更しなくとも、フルHDに近い高画質を3Dで楽しめる今回の提案は消費者にも利点が大きい」と話しており、テレビメーカーなどに採用を訴求していく予定だという。
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