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“AQUOS”の高級機「LC-65XS1」で観る「カジノ」の虚構の光山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」Vol.32(2/3 ページ)

» 2009年01月21日 18時20分 公開
[山本浩司,ITmedia]

 加えて本機の魅力として付け加えておきたいのが低輝度部から中間調、ハイライトにかけてホワイトバランスが実に安定していること、そして階調表現がスムーズで疑似輪郭、等高線ノイズがあまり目立たないことである。暗部が緑っぽかったり、白が赤みがかったりする液晶テレビ特有のホワイトバランスのクセが気になるという方は多いと思うが、本機は偏りのない、じつにきれいなモノクローム映像を描き出す。

 従来のCCFL光源を使った製品は、中間調からハイライトにかけてホワイトバランスをチューニングする際に、液晶駆動の8〜10ビット階調を削ってそのバランスを整えていくのだが、LED光源の場合にはRGBを個別調整できるので、階調を犠牲にせずホワイトバランスが追い込める。また、ローライト(黒側)のホワイトバランスは、CCFL機ではほとんど微調整は不可能で、パネル自体の素のホワイトバランスに委ねるしかなかった。そう考えると、LEDバックライト採用機ならではの大きなメリットとして、エリア制御によるコントラストの拡大とともに、階調を犠牲にせずにホワイトバランスを追い込めることを改めて指摘しておきたい。

photo 高彩度の色表現を可能にした

 さて、LED光源ならではの魅力としてもう1つ、従来のCCFL光源よりもはるかに広い色域が実現できることが挙げられる。シャープの発表資料によると、RGBを独立して個別制御する映像モード「ダイナミック」では、NTSC比150%を実現したとある。これは自然界に存在するほとんどの物体色を再現できる色域だという。

 実際にその映像を見てみると、パッと見のインパクトは強烈なのだが、色が派手すぎ、華やかすぎて違和感を抱いてしまう。肌色も赤みが強すぎて誰もが酔っぱらっているかのよう。映像ソースに対する高忠実度再生という観点からすると、疑問を感じてしまう色再現だ。

 そこで部屋を暗くして映像モードを「映画」に切り替えてみると、原色の華やかさは維持されつつも、すっとスキントーンが落ち着き、自然な色合いが再現されるようになる。シャープの画質エンジニアにたずねると、RGB完全独立駆動の「ダイナミック」モードに対して「映画」と「PC」モードは、RGBを均等に光らせる白黒駆動となり、一般的なリビングルームの照度環境を想定した「標準」と「映画(リビング)」はRGBの原色の他色を混ぜ合わせるような発光法を採っているという。

 つまり、色域の広さを強調するだけでなく、より自然な色合いをどう出すかということを考慮し、それぞれの映像モードで発光方法を変えて色のチューニングを施しているわけである。ちなみにLED白黒駆動の「映画」モード時の色域はNTSC比120%になるという。

 この「映画」モードで観て、じつに素晴らしかったのが、マーティン・スコセッシ監督の1995年作品「カジノ」のBD ROMである。

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