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» 2009年01月23日 11時15分 UPDATE

麻倉怜士のデジタル閻魔帳:CESで分かった、2009年のトレンド (1/3)

世界最大規模の家電展示会「International CES」には、さまざま新製品や技術、トレンドが集合する。今回の「デジタル閻魔帳」は、“CESの水先案内人”こと麻倉氏に今回のCESからうかがえる、デジタルAVの最新トレンドを語ってもらった。

[渡邊宏,ITmedia]
photo International CESは例年通り、米ラスベガスで行われた

 今回で42回目を迎えた世界最大級の家電の祭典「International CES(Consumer Electronics Show)」が今年も米ラスベガスで開催され、さまざまな新製品/新技術/トレンドが紹介された。

 デジタルメディアのトレンドをいち早く、しかも分かりやすく紹介してくれる麻倉怜士氏の月イチ連載「デジタル閻魔帳」。毎年1月前半は米国で過ごす“CESの水先案内人”こと麻倉氏に、CES取材を通じて明らかになった“2009年のトレンド”を語ってもらった。

――毎年多くの人でにぎわうCESですが、今回は全世界を覆う景気後退の雰囲気から逃れられなかったというのが率直な印象です。わたしも取材で現地に数日間滞在しましたが、会場やホテルはここ数年で最も混雑していなかった気がします。

麻倉氏: わたしも毎年International CESに出かけていますが、今回は転機なのかなと、感じました。動員数で言えば2割ほど減少していますし、会場内も3日目となればかなり人口密度が下がっていました。例年はホテルもほぼ満室になりますが、今年は高級ホテルですら(部屋が埋まらずに)ディスカウントが行われていたそうです。タクシーの運転手にたずねても同じ感想が返ってきました。やはり景気減退の影響は感じずにいられませんでしたね。

 展示物で言えば、これはという目玉に欠けました。これまでならば、「デジタル放送」や「デジタルオーディオ」「テレビの大画面化」など大きなトピックがありましたし、昨年ならば、次世代DVD競争の最期といった話題がありました。CESへ行けばイベント性のあるアイテムやニュースが分かりやすいかたちで提示されていたものですが、今回はそうしたイベント的なアイテムやニュースは残念ながらありませんでした。

 ですが、実は今後の方向性を予感させる出来事やアイテムは豊富に出現していました。分かりやすく衝撃的なカタチはしておらず、また、そのボリュームも多くはありませんでしたが、プロの視点からすれば強力なトレンドを感じ取ることはできたのです。3つに分けて、そのトレンドを紹介しましょう。

テレビの“中身”

 1つめは、テレビの“画面の中”をどう構築していくかの模索が始まっていることです。、画面の大型化も150インチまで達した今、テレビは放送/パッケージメディア表示機以外の価値も模索し始めました。

 薄型化については、パナソニックの8.8ミリの超薄型プラズマやソニーの21型有機ELディスプレイなどが今回のCESで紹介/展示されていますが、ここまでの薄型化が進むとその差異は“誤差”の領域に入ってきます。大画面化については昨年パナソニックが展示した150インチ以上の展示は今回、ありませんでした。

 このように外観こそ大きな変化はありませんでしたが、映し出す“中身”が非常に濃くなってきたのです。その代表的な動きが3D化の流れでしょう。昨年まではこれほど大々的に3Dについて取りあげられることはありませんでしたが、今回のCESでは、テレビに関連する企業で3Dの展示をしていない企業の方が少数派で、“狂奔”という印象すら受けました。では、なぜここに来て急に3Dへの取り組みが盛んになってきたのでしょうか。

 それは3Dビジネスが現実味を帯びてきたからにほかなりません。パッケージの世界でBDが3Dへの対応を行うことが明確になってきたからということもありますし、放送波による3Dコンテンツの放送も期待されています。BDについては昨年秋からパナソニックが先導して規格化への準備を進めていますし、BDAにも間もなく正式議題として提出されるようで、2010年には対応製品の製品化という流れも見えてきました。

photophoto 3D映像のコーナーは高い関心を集めていた

 3Dの方式は大別すると、パナソニックの提案するフルHDでの方式と、それ以外が取り組むフルHD以下の解像度の方式という2つに分けることができます。パナソニックの方式は、BDの2ストリーム伝送を拡張して、フルHDの映像を左右の眼それぞれに送り分け、液晶シャッターのメガネで見るという仕組みです。これはPDPの高速性を生かした仕組みで、同社が得意とする垂直統合を生かしたものといえるでしょう。

 一方のフルHD以下の解像度のタイプは、映画館など業務用システムでは標準的といえる「REALD」システムを開発したReal Dやドルビーが方式を提案しています。どちらも映画館向けシステムでは独特技術を展開していますが、家庭用はまた違った方式です。ただ、提案としては似通っています。

 いずれも既存のBDプレーヤーをそのまま利用するので、1画面に左目用/右目用の画面情報を収容しなければなりません。そこで走査線1本おきに、インターレースのように配置したり、画素を市松模様のようにひとつおきに配置するなどとして、2画面を1フレームに収容するための工夫が行われています。このような手法だと画素的な解像度はフルHDの半分になりますが、斜め方向に情報量を落とすことで視覚心理上あまり気にならないソリューションとしています。CESでは、ソニーやSamsung ElectronicsらがReal D方式を利用してのデモを行っていました。

  実際に見てみると、目くじらを立てるほど解像感に欠ける感じは受けませんでした。ただ、パナソニックの方式も含め、さらなる研究が必要とも感じましたね。

 CESの取材後、ハリウッドで「PACE Technologies」という3Dカメラシステムの企業を訪問したのですが、その社長が言っていたのは、「自分の見たままに再現できるのは3Dしかない」ということでした。3Dネイティブともいえる考え方や撮影の方法を熟知しているひとが撮影した3D映像は、脳が違和感なく感じられるということですね。

 実は「ポーラー・エクスプレス」などいくつかのハリウッド作品が既に3Dとしてパッケージ販売されているのですが、赤青メガネの方式で少々頂けないのです。BDでの3D規格が固まれば、ハリウッドの3D作品がパッケージとして登場してくることなると思います。2Dの絵としての完成度を高めた上で、3Dというプラスが付加されれば、一定の地位を得ることができるのではと感じました。

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