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もう電球なみ?――液晶テレビが省エネになった理由新生活テレビ特集(1)(2/2 ページ)

» 2009年03月31日 16時46分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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 液晶テレビにおいて、もっとも電力を消費するのはバックライトだ。シャープによると、テレビが消費する電力のうち約8割を使っているのがバックライト。逆にいえば、バックライトの改善が電力消費を抑える“近道”となる。

 まず、バックライトに使われる蛍光管(冷陰極管:CCFL)の効率がアップしている。ただし、ソニーがHCFL(熱陰極管)の開発に乗り出したことから分かるように、CCFL管はすでに研究も進み、今後は飛躍的に効率をアップできるとは考えにくい状況だ。

 そこに登場したのが、「今までロスしていた光を拾って有効活用する」(東芝)という新しい光学フィルム。周知の通り、液晶テレビでは液晶パネルの後ろからバックライトをあてて発光しているが、その間にバックライトの光をムラなくパネルにあてるための“拡散板”や“偏光板”が組み込まれている。ここをバックライトの光が通る際、今までは偏光板の偏光性に直交する偏光成分以外は遮られてしまっていたが、「新開発の光学フィルムでは、ロスしていた垂直方向の偏光を水平方向に変換して有効活用できる」(東芝)。

photo 省エネ液晶パネルの概要(東芝がC8000シリーズの発表会で公開)

 光を効率良く液晶パネルにあてれば、バックライトの消費電力を下げる、あるいはバックライトの本数を減らしても同じ明るさを維持できる。こうした新しい部材を採用し、さらに独自の回路設計などを組み合わせて省電力化を図るというのが春の新製品に見られる各社共通の動きだ。ここ数年、エコロジー機運に後押しされて業界全体が消費電力の抑制に取り組んできたが、その成果が一斉に現れたといえるのかもしれない。

 もちろんメーカーがそろって同じような部材を使えば、スペック的にも近い製品になってしまいそうだが、テレビのような家電の場合は個々の製品にあわせて部材メーカーと共同開発を行ったり、あるいは「メーカーが仕様を出して、製品ごとにカスタマイズした部材を作ってもらうのが一般的」(パナソニック)。このため、最後にはやはりテレビメーカーの技術力が生きてくるという。

 「例えば、蛍光管を減らすと画面に“輝度ムラ”が出やすい。それをカバーする拡散板や光学シートの組み合わせなどは、各社それぞれのノウハウとなる」(シャープ)。

 今となっては32V型を“大型テレビ”というのは無理があるかもしれないが、リビングルームのメインテレビとしても使えるサイズが、100ワットを下回る消費電力で使えるようになった。これは、ちょっと前まで廊下やトイレにつるしていた白熱電球と大差ないレベル。ともすれば“テレビ=電気をくう”ととらえがちだが、その認識は少し改める必要があるのかもしれない。

倍速駆動モデルもチェック

 省エネは確かに魅力だが、年に数百円を節約することが製品選びを方向付けるわけではないだろう。例えば、液晶テレビの動画応答性を改善する倍速駆動(120Hz駆動)は、全体の消費電力を10%以上も押し上げるが、それでも必須と考える人は多いはず。もちろん、多彩なユーザーニーズが存在する32V型クラスでは、消費電力をおさえつつ画質や付加機能に注力した製品も選ぶことができる。

 例えば東芝の「32C8000」は、省電力パネルにあえて倍速駆動を組み合わせたモデルだ。年間消費電力量は95kWh/年と、ここまでに挙げた他社製品より高いが、昨年の「32C7000」が倍速駆動なしで101kWh/年だったことを考えると、今回は電力消費を減らした上で画質の底上げを図ったわけで、かなりの進歩といえる。

photo 東芝の「32C8000」。発光効率の高い蛍光管を採用した省電力の倍速液晶パネルを搭載。CCFL管の本数は減らしていないという

 おしくも2位になったパナソニック「TH-L32G1」も倍速駆動と消費電力をおさえたパネルを組み合わせた製品。開口率が高く、省エネにも有利といわれるIPSパネルを採用した。また、「アクトビラビデオ フル」も搭載しているため、DVDプレーヤーなどを持っていなくても映画などをレンタルのように視聴できる(ブロードバンド環境は必要)。

 ソニーの「KDL-32F5」は、倍速駆動やアクトビラビデオ フル対応にくわえ、無線リモコン「おき楽リモコン」採用など、さらに付加価値を加えた多機能機だ。そのぶん年間消費電力量は120kWh/年と少し高くなるが、それでも昨年のシャープ「LC-32D30」といったスタンダード機(倍速非搭載)と同レベルである点に注目したい。

 32V型クラスの新製品に関していえば、スタンダード機から高付加価値機まで、従来機と比べてずいぶん“エコ”になったことが分かる。“省エネ”も欠かせない要素だが、それぞれの持つ機能と照らし合わせて商品選択に臨みたい。

メーカー 東芝 ソニー パナソニック
製品名 32C8000 KDL-32F5 TH-L32G1
パネル解像度 1366×768ピクセル 1366×768ピクセル 1366×768ピクセル
倍速駆動
HDMI端子 3(InstaPort対応) 4 3
消費電力 100ワット 140ワット 113ワット
年間消費電力量 95kWh/年 120kWh/年 100kWh/年
外形寸法(幅、高さ、奥行き) 794×989×455ミリ 770×543×258ミリ 777×541×217ミリ
重量 12.5キログラム 約11.5キログラム 約13.5キログラム
本体カラー ブラック ブラック ブラック
備考 レグザリンク対応 アクトビラビデオ フル対応、ブラビアリンク対応 アクトビラビデオ フル対応、ビエラリンク対応
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