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» 2009年04月21日 08時30分 UPDATE

麻倉怜士のデジタル閻魔帳:ソニーはきらめきを失ったか (1/4)

ソニーが大幅な人事組織変更を行った。ストリンガー会長兼CEOが社長職を兼務し苦境からの脱却を狙うが、麻倉氏は「圧倒的なソニー的な価値のある“もの”で訴求しない限り復活はない」と指摘する。

[渡邊宏,ITmedia]
photo 2009 International CESのソニーブースを取材する麻倉氏

 ソニーが大きく変わろうとしている。4月1日付けの組織改革ではエレクトロニクス事業とゲーム事業を統合する変更が発表されたほか、ハワード・ストリンガー会長兼CEOが社長も兼務し、これまで社長を務めていた中鉢良治氏が代表執行役副会長に就任する人事もあわせて発表された。

 2005年に出井伸之 会長兼グループCEOを中心とした体制から「ストリンガー/中鉢」体制へ移行して3年、「エレキの復活」を掲げた2頭体制はここに終わりを告げることとなった。この変化はソニーに何をもたらすのだろうか。

 マルチメディア評論家・麻倉怜士氏の月イチ連載「デジタル閻魔帳」。30年来に渡って同社を見続け、「ソニーの革命児たち」や「ソニーの野望」など、同社に関する著作も多い“鬼のソニーウオッチャー”でもある麻倉氏の目に、今のソニーはどのように映るのだろうか。

――ソニーが、ストリンガー会長を社長兼任する人事と、新組織・新体制への移行を発表しました(ソニー、エレクトロニクスとゲームを統合 ストリンガー会長が社長兼務)。

麻倉氏: ニューヨーク在住のストリンガー氏は、よく言えばもの作りは日本人に任せる、悪く言えばもの作りに興味を示さない人です。そんな人に率いられる不安感がソニー社内にもあります。私のところにも憂いを訴えてくるソニー社員が多いです。

 ストリンガー氏の物言いが圧倒的に“普通”なのも気がかりです。「オープンテクノロジーをサポートし、コンテンツからサービス、端末までもトータルで手掛ける」とビジョンを語りましたが、こんなことは誰でも言えます。現在の苦境を脱するための1つの方策として変化を求めたのでしょうが。

 とはいえ、今のソニーの問題はすべてストリンガー氏の責というわけではなく、実に歴史的な因の集積でもあるのです。ストリンガー氏のやり方を検証する前に、まずは近年の歴史を振り返ってみることから始めましょう。

ITでの成功、ネットへの傾倒

麻倉氏: 米国法人会長であり副会長兼COOだったストリンガー氏を会長に任じたのは、出井伸之氏(会長兼グループCEO:当時)ですから、まずは出井氏の方策からレビューする必要があるでしょう。

photo 2005年3月のストリンガー氏会長就任記者会見より。左から安藤社長、出井会長、ストリンガー次期会長兼CEO、中鉢次期社長、井原CFO(肩書きはすべて当時)

 出井氏は1996年にCEOへ就任してから約10年間、同社のトップを務めましたが、その前半と後半ではその中身がかなり異なります。1996年といえばWindows 95を搭載したパソコンが大きな注目を浴びていたころで、ソニーもITに重きを置き始めていました。VAIOを立ち上げ、AVメーカー以外の顔を見せ始めた時期ですね。これらの取り組みは成功したといえるでしょう。

 その成功をふまえて後半戦に挑んだのですが、1つの要素について判断を誤りました。それは、インターネットについてです。同社はネットワークという概念をビジネスに含めなくてはいけないと考え、「ネットワークと名付けたカンパニー」を多数設立しました。

 ですが、新しいビジネスは、ベンチャーのようにフットワークの軽い会社の方が推進しやすいのです。ソニーのような大きな会社では、既に手にしている資産が足かせになってしまいました。数十ものインターネットを利用したビジネスが立ち上がり、ほとんどすべて失敗し消えていきました。今となっては、「インターネット」へ過剰反応したと総括できるでしょう。

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