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もっとも安い「フルバンド・フェイズコントロール」対応機、パイオニア「SC-LX71」AVアンプ特集(3/4 ページ)

» 2009年04月24日 18時06分 公開
[野村ケンジ,ITmedia]

 設置性に関しては、端子類が効率よくレイアウトされているため、接続に手間を感じることはなかった。なかでもスピーカー端子は、各ペア間にスペースが設けられているため、結線は至ってスムーズ。スピーカーケーブルにも無用な曲がりを強要することがない。こういった心づかいは、大いに歓迎したい。

 LX71にはオンラインメニューが用意されているが、こちらもグラフィカルで分かりやすかった。とくに自動音場調整機能は、「Advanced MCACC」と「フルバンド・フェイズコントロール」という2つの調整機能が搭載されていながらも、内容がうまく整理されているので困ることはない。またそのセッティングもオール自動で行えるため、手軽に2つの機能を活用することもできる。高機能と使い勝手の良さが上手に両立されている印象を持った。

photophoto オンスクリーンメニューはグラフィカルでとても分かりやすい。メニュー項目にもヘアライン調の背面画像を採用するなど、本体とイメージが統一されていることも好印象だ。右は定在波制御の設定画面。こういった細やかな制御内容が確認できるのも、自動音場調整機能の先駆者たるパイオニアならではのメリット

サウンド

 高度な自動音場調整機能のおかげもあって、そのサウンドはかなりの上質さを持ち合わせている。音色の統一感、音場の揺るぎなさは、今回試したモデルのなかでも1、2を争う素晴らしさ。なかでも音場については、SC-LX90の直系たるハイクオリティーさを確保。一般的なAVアンプでは、スピーカーやアンプの位相ズレから低音と高音では微妙に定位が揺らぐことがあるが、LX71においてそういった現象は皆無。台詞などはまるでその位置に人が立っているかのように自然で、スピーカーの位置をまったくといっていいほど意識させない。

photo こちらは群遅延特性の設定画面。補正前、補正後の違いが確認できるため、こちらをチェックしながらスピーカー位置や設定の調整も行える。こだわりたい人にはありがたい画面だ

 音場空間の素晴らしさに、今回は無理を承知で自宅のTAD(パイオニア製のモニタースピーカー「TD-4001」ホーンと「TL1601b」ウーファーの組み合わせによるステレオシステム)にもつなげてみた。すると、センターレスのフロント2本かつ大型ユニットというデメリットをいとも簡単に克服し、前面から視聴位置の左右手前まで、(前面に限定はされているものの)見事なサラウンドフィールドが出現したのだ。音場の高さも、スピーカーがスクリーンの下部に置かれていることを意識させないくらいに、自然な印象となっている。すでにお気に入りのスピーカーを所有している人、なかでもステレオシステムを所有している人には、大変ありがたい製品といえるかもしれない。

 自然といえば、音色の傾向もごく自然で好感が持てた。高音は伸びやかで煩わしさを感じない上品なイメージ。また各帯域の特性がきちょうめんと思えるほどきれいに整えられているため、例えばピアノ演奏では、ピアニストの細やかな強弱表現が手に取るように伝わってきて、普段よりも演奏を奥深さをしっかり感じ取ることができた。

 このように上級クラスにふさわしいクオリティーを持ち合わせるSC-LX71だが、弱点がないわけでもない。その1つはパワーアンプの駆動力だ。

 LX71に内蔵されているデジタルパワーアンプは、帯域特性としては大変優れているものの、駆動力という点では一般的に使われているABクラスパワーアンプに少々劣るきらいがある。そのため「高い駆動力で鳴らすと、とたんに音が魅力的になる」タイプの、いわゆるクセの強いスピーカーでは、その実力を発揮しきれない傾向がうかがえるのだ。

 また音色に関しても、好みが分かれるところだろう。LX71のもつフルバンド・フェイズコントロールは、どんなスピーカーであっても、素性の良い優等生に変えてしまう。スピーカーは、悪癖を含めて魅力的な個性となっている製品もあり、そういった部分をたたき直してしまうLX71は、使い方によってはその魅力を半減させてしまう可能性もある。今回のエラックでも、音場的には見事だったものの、音色面で最大限の魅力を発揮できたかというと疑問が残る。「フルバンド・フェイズコントロール」の活用は、このあたりに留意してうまくコントロールしたいものだ。

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