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薄型テレビ、夏モデルに見る3つのトレンド麻倉怜士のデジタル閻魔帳(3/6 ページ)

» 2009年05月27日 10時55分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

 東芝はその中間で、LEDならではのコントラスト感を持ち、色に関してはNTSCの72%、つまりはハイビジョン放送が美しく見えるという従来の概念が保たれています。東芝らしさ、オーセンティックな感じともいえる、バランスの良さと素直さが特徴で、その延長線上に画質リソースを蓄積していこうという方向性を感じることができますね。

 東芝といえば、IPSの復活も興味深いですね。従来のIPS方式では大画面化が難しいと言われてきましたが、今夏モデルでは55型(ZH8000シリーズ「55ZH8000」)までがIPSになっています。

 「動画再現性が悪い」「視野角が狭い」「暗所コントラストが悪い」の“液晶の3悪”についてもそれぞれ改善が進んでいるのですが、VAを搭載した製品の視野角については、まったく改善が進んでいません。LEDバックライトにVAパネルを組み合わせた際、光りの色漏れがあると、横からははっきり分かってしまいます。それに、画面が大きくなればなるほど、斜め方向の視野角は大きな問題として浮上します。

 ZX8000シリーズはLEDバックライトとVAパネルを組み合わせていますが、これは、間違った組み合わせですね。IPSは少し黒が浮きますが、それはLEDバックライト+ローカルディミンング(部分輝度制御)で対策できます。VAパネルにおけるLEDバックライトの視野角問題は大きいですから、IPSに替えるべきでしょう。

抜きんでた表現力を得た「Neo PDP」

麻倉氏: プラズマでは、パナソニックが新世代パネル「NeoPDP」搭載モデルを投入してきました。NeoPDPは複数の要素技術を組み合わせて高効率化を目指したもので、画質面においても高い効果を発揮しています。高効率化がなされたため、画質へ投入できるリソースが増加するからですね。

photo 新世代パネル「Neo PDP」を採用した、プラズマテレビ“VIERA”「Zシリーズ」

 白の再現性が高くなり、ダイナミックレンジも広くなっています。これまでもDCI(ハリウッド映画に関する業界団体)が求めるデジタルシネマの仕様に適応した製品作りは行われていたのですが、白が非常によくなったので、映像の伸びと解像感の高さを高く感じさせてくれます。同社のプラズマについては3年ほど前から、「表示」を越えて「表現」の域に入っていると私は見ていますが、さらにその表現力を高めたことには驚きを隠せません。

 プラズマに関しては日立製作所の復活もうれしい話題ですね。同社のALISパネルは構造的に「明るいが黒が浮く」ため、そこをフィルターでカバーしていました。プログレッシブとした時期もありましたが、「黒は出るが白が沈む」という本末転倒な状況に陥っていました。ですが、今春発表モデルでは黒が締まり、白の質感も増しました。色の安定感も向上したようです。

 これはひとえに、パナソニックと提携し、VIERA「Z1シリーズ」などと同じNeo PDP世代の「ダイナミックブラックパネル」を採用したからです。「こうした映像にしたい」という自分たちのイメージをかたちにするだけのリソース、力を持った絵づくりの技術者が、その力を受け止めることができるパネルを利用できたからです。それが純然たる自社パネルではないことは、残念かもしれませんが。

 同社は以前から「録画テレビ」に力を入れているのは周知の通りで、その方向性は各社も追従しています。何らかのかたちで録画機能を持つテレビは、2010年ぐらいにはかなりの割合になるでしょう。テレビが録画機能を併せ持てば、ユーザーを時間に拘束させないという視聴スタイルが可能となります。

 理想は全時間・全チャンネルの番組を録画し続けるける“全録”サーバが、自宅ではない場所に存在することでしょうが、さすがにそれは難しいでしょう。ですが、ローカルに録画し続けるならば問題はありませんし、日立製作所は7〜8年前からその考え方を提唱し続けています。その“録画力”に画質をプラスしたのが、夏商戦モデルといえるでしょう。

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