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写真を楽しみ、腕を磨けるカメラ――ニコン「D5000」開発者に聞く永山昌克インタビュー連載(2/2 ページ)

» 2009年07月01日 11時00分 公開
[永山昌克,ITmedia]
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シーンに応じて多彩なAFモードを選べる

 ライブビュー時のAFは、コントラスト検出方式となり、AFモードは「ノーマルエリアAF/ワイドエリアAF/顔認識AF/ターゲット追尾」の4つから選べる。このうち「ターゲット追尾」は、ロックした被写体に対してAFエリアが自動的に移動する新機能だ。「従来のようにAFロックをしてから構図を整えたり、構図を決めた後にAFエリアを手動で動かすといった、わずらわしさを解消する狙いがあります」と語るのは、AFアルゴリズムなどの開発を担当した富田博之氏だ。

photo ライブビュー時のAF選択メニュー

 電気回路系のリーダーを担当した大貫正夫氏は、「ターゲット追尾で、非常に高速なものを追いかけることは現時点の技術レベルでは実現できていませんが、ターゲットの動きに追従することで、構図をアシストする働きがあります。撮り方のひとつの提案として、ぜひ使っていただきたい機能」だという。

 筆者が試用中に惜しいと感じたのは、コントラストAFの速度があまり速くないことだ。「D5000のコントラストAFは、D90よりは多少改善しています。ただ、もっと速くして欲しいというご意見もいただいており、引き続き研究を進めています」(富田氏)。

 ちなみに、COOLPIXシリーズなどのコンパクトデジカメでは、レンズ交換がなく、装着されたレンズに最適化したアルゴリズムでAFを駆動できる。だが、一眼レフでは、ぼう大な数の交換レンズのすべてに対応する必要がある。しかも、コンパクト機よりも焦点距離が長く、レンズの大きさも大きいため、レンズを動かす駆動量が増え、たとえコンパクト機と同じAFのアルゴリズムを使っても同等のスピードにはならないのだ。

 では、ライブビューや動画用に、コントラストAFに最適化した専用レンズを開発する予定はないのだろうか。これに対しては富田氏は、「信号のやり取りやレンズの動かし方を工夫することで、専用のレンズでなくても速度が速いコントラストAFの実現を目指していきたいと考えています」という。

 一方、ファインダー撮影時のAFはスムーズに作動する。「ファインダー撮影時のAFは、通常のシングルポイントAFのほかに、被写体の不規則な動きにも対応するダイナミックAF、測距点が自動で選ばれるオートエリアAF、上位機と同等の3-DトラッキングAFの4モードを搭載しています。状況に応じて、これらを使いこなして欲しいと思っています」(富田氏)。

 ファインダーは視野率95%、倍率0.78倍のペンタミラー式を搭載する。ペンタプリズムを採用したD90のファインダーに比べるとスペック的にはやや見劣りするが、決して見えにくいわけではない。ファインダー下部の情報表示が見やすい同社機共通のメリットも受け継いでいる。電気のハードウェア全般の設計を担当した藤田昌之氏は「ファインダーの下にある、絞りやシャッター速度などの情報表示は、きれいに見えるように力を注いで作っている部分です」と語る。

動画と静止画の作品づくりを楽しんで欲しい

 デジタル一眼レフでは初めて動画機能を搭載したD90に引き続き、D5000もハイビジョン動画撮影に対応する。動画の記録画素数やファイル形式などの基本スペックはD90と同じだが、そのまま移植したわけではない。「D90よりも小型のボディに動画機能を搭載するために、従来以上のノイズ対策の工夫を盛り込んでいます」(藤田氏)。また動画の画質は、「お客様からのフィードバックを経て、解像感の向上や、高輝度部の色づきの除去といった画質のブラッシュアップを図っています」(鮫島氏)とのこと。

 従来機D90の動画機能の反響は大きく、田澤氏によると「従来は、100万円単位の金額をかけなければ撮れなかった、大型センサーやレンズ交換による多彩な動画表現を、その10分の1以下の機材で実現できること」などが好評を得ている。また、特にWeb上での動画公開のジャンルでは、盛り上がりを見せているという。

photo D5000の構成パーツ

 個人的には、撮った後の動画をどうやって編集し、どうやって鑑賞・発表するかという点にも、ニコンならではの展開や提案に期待したいと思う。「カメラ内での動画編集や、動画編集用の付属ソフトなどは今後の検討課題です。発表については、仲間内に限られますがmy Picturetownいう弊社サイトでの動画や静止画の共有サービスを提供しています。メディアポート UP(ユー・ピー)とのリンクなども含め、今後さらに充実を図っていきたい部分です」(田澤氏)。

 ユニークな使い方として、インターバル撮影機能で静止画を撮り、その一連のコマをストップモーション作成機能によって動画としてつなぐことができる。インターバル撮影はD90にはなく、D300などの上位機から継承した機能だ。またセルフタイマー機能では、1コマだけでなく3秒間隔で最大9コマまでの連続撮影ができる。たとえば、ポーズを変えながら集合写真を撮ったり、それを動画に変換するのも楽しいだろう。

photo 「当社の一眼では初めてバリアングル液晶を搭載するなど、製品的にかなりステップアップしましたので、製品名にも思い切った4桁の数字を新たに使いました」(田澤氏)

 鮫島氏は「静止画でも動画でも、D5000で“作品”を作ることを楽しんでいただきたい」という。また大貫氏は「羊の皮を被った狼のようなカメラになりました。外見は入門機D60に近いですが、中上級者の方が使っても堪えられる高機能を備えています。初心者の方でも末永く使っていただくことができます」と語る。

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