ITmedia NEWS >

Blu-ray Discの現在地、進歩するプレーヤー麻倉怜士のデジタル閻魔帳(3/4 ページ)

» 2009年07月03日 11時31分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

BDプレーヤーにみるシャワー効果

麻倉氏: Blu-ray Discに関する製品のもの作りで特徴として挙げられるのは、ハイエンド製品を先に作り出したことです。ハイエンド製品を先に作り出すことで技術とブランドが磨かれ、シャワー効果で下位製品へも好影響を与えます。その典型的な例がパイオニアのBDプレーヤーですね。

 パイオニアは実売30万円以上の「BDP-LX91」から、実売2万円台半ばの「BDP-120」まで幅広く製品を用意しています。中位に位置するBDP-LX52/BDP-320に目をやると、上位のBDP-LX91/71の仕組みをすべて備えているとはいいませんが、音の切れ味やバランスに優れており、映像も力強くクリアで、LX91/71で培われた技術や方向性が息づいているのを感じます。

photophoto 麻倉氏の自宅シアタールームでも、BDレコーダーとBDプレーヤーの使い分けが成されている

 BDP-LX52は4万円以下で販売されていますが、これだけ良質なものが低価格なのは、レコーダーにとって驚異でしょう。パナソニック「DMR-BW950」など高価な上位機種は再生に関してもかなりの能力を持っていますが、中〜下位クラスのレコーダーと5万円クラスのプレーヤーでは、後者の方が高いクオリティでの再生が行えます。

 これからはレコーダーとプレーヤー、2つを併用するのがこれからのハイビジョン/エアチェックライフにとって標準的な環境になるのではないでしょうか。なにしろ、BDレコーダーでBD-ROMを再生している時にタイマー録画の時間になると、録画モードへ切り替わってしまうのは、実に頭に来ます。この一件だけ取っても、“BDレコーダーでBD-ROMは再生できない”と感じてしまいます。

 低価格プレーヤーでもう1つ、注目機種を挙げましょう。シャープの「BD-HP21」です。これはエントリークラスの製品ですが、音質面への強化が行われています。防振対策を施したキャビネットや天板を採用したほか、アース対策の施された太い電源ケーブルが付属します。このケーブルは他社製品との交換も可能です。

photo シャープ「BD-HP21」

 この価格帯(実売4万円前後)の製品で、標準サイズソケットがついていて、ケーブル交換も可能というのはあまり見たことがありません。こうした心遣いは映像と音声に対してとても効果的で、情報量の多い映像やクリアな音声を感じさせてくれます。

 これまで同社のBDレコーダーは機能性を打ち出していましたが、その機能は必ずしもクオリティに結びついていませんでした。BD市場で先行するソニーとパナソニックは「CREAS」や「ハリウッドカラーリマスター」などで画質向上を図り、その訴求も行っていますが、シャープはAVC変換時のトランスコードによる7倍録画など、機能面に対する向上と訴求を中心にしてきました。ですが、BD-HP21では骨太というかストレートなアプローチで音質を向上させています。

 レコーダーは音質・画質に加えて、録画しやすさなど総合的な能力を求められる製品ですが、プレーヤーはディスクに記録されている情報を最大限に引き出し、音質・画質の向上を図ることが任務です。シャープはその点を愚直に追求し、BD-HP21では高いパフォーマンスを獲得するに至っているのです。

※(初出時、BD-HP21についての記載に誤りがございましたので、訂正させて頂きました)

 これぞ、プレーヤーの“ロマン”です。ディスクにどこまでの情報(叙情)が含まれているかは再生してみるまで分かりませんし、再生するプレーヤーによっても表現されるニュアンスは異なってしまいます。ディスプレイが持つ表現性までとはいきませんが、プレーヤーには、“演奏家”ともいうべき、ソースをどのように解釈・表現し、表示装置へ与えてやるかのさじ加減が求められるのです。

 最近ではプレーヤーにもイコライジング機能を備えるものが増えていますし、パイオニア製品のように、表示装置が何かを選択する設定を持っているものまでもあります。そうした製品ならば、組み合わせるディスプレイに最適化した映像を表現することができます。単純に忠実な再生者だけではなく、トータルで感動へと結びつく出力をすることがプレーヤーの責務でしょう。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.