コラム
» 2009年07月06日 11時00分 UPDATE

小寺信良の現象試考:暴走するネット規制 、あるいは「ネットで婚活」終了のお知らせ (1/2)

青少年ネット規制法や児童ポルノ法改正などを見ていると、「青少年保護」を理由にしたネット規制論が勢いを増しているように思える。行きすぎた規制は、男女交際のきっかけすら奪う危険性を秘めている。

[小寺信良,ITmedia]

 今年4月から施行された、いわゆる青少年ネット規制法(「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」)では、青少年へのフィルタリングが義務付けられた。またサーバ管理者は、青少年に有害な情報が発信されたと知ったときには、青少年が閲覧できないような措置を行なう努力義務が課せられた。

 さらに最近はどうもこの青少年保護を理由に、ネットに対する過激な規制論が各所から飛び出してきている。

 児童ポルノ禁止法(「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」)の単純所持規制も、大きな話題だ。これは一見するとネットと関係ないように見えるが、児童ポルノに限らずポルノ全般に関しては、今やその主な流通ルートがネットであることから、サイトへの接続を強制遮断するブロッキングを実施するかどうかが検討され始めている。

 児童ポルノ法改正案の危険性については以前のコラム(→「児童ポルノ法改正」に潜む危険)でも指摘したが、えん罪の道具として利用される可能性が飛躍的に高まることになる。これは痴漢えん罪と同様で、例え濡れ衣であったことが明らかになっても、社会的には抹殺に等しい点で、人ひとりの人生を簡単に破壊してしまう。

 「表現の自由」の問題として、そう簡単に事は運ばないと楽観視する人もいるようだが、そのカードではもはや戦えないことは、青少年ネット規制法の経験からも明らかである。

削除されたコミュニティの謎

 そしてもう1つ、これから大きな問題になりそうなのが、出会い系サイト規制法(「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」)である。

 これの改正法が昨年(2008年)の12月1日から施行されているが、これはいわゆる「出会い系サイト」とされる事業者は各都道府県の公安委員会に届け出をだし、児童(18歳未満)が児童買春その他の犯罪に巻き込まれないよう、利用者の年齢確認や児童の書き込みの削除などを行なわなければならないというものである。

 ところが実際の法運用の段階になって、どうも妙なことになってきた。今年4月に、警視庁がミクシィなどのサービスプロバイダに対して削除要請を出したというニュース(→警視庁、ミクシィなどに“出会い”書き込み削除要請)があったのをご記憶だろうか。ミクシィ側では警察の要請で削除したのではないとしているが、結果としては「出会い」に関するものは、性的交渉を目的としたいわゆる「出会い系」とは関係ないものまで、一斉に削除された。

 この動きの元になったのが、出会い系サイト規制法である。ではなぜ、性的交渉とは関係のない、健全なコミュニティまで削除されることになったのか。それは、警察庁が出したこの法律に関するガイドライン(「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律等の解釈基準」 リンク先PDF)で、「インターネット異性紹介事業」として、「性交等を目的とする交際に限られない。」と定義されているからである。

 すなわち、会ってすぐラブホに行くようなことではなく、趣味の合う異性と知り合いになりたいという、ある意味男女交際が始まる一番基本的なきっかけを求めるようなものすら、出会い系サイト規制法の対象となるわけだ。

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