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パイオニア、ブックシェルフ型の「TAD Compact Reference」発表パワーアンプも登場

» 2009年07月07日 19時21分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 パイオニアは7月7日、プロフェッショナルスタジオモニターで知られる「TAD」ブランドの新製品として、民生用のハイエンドモニタースピーカー「TAD Compact Reference」(TAD-CR1)とモノラルパワーアンプ「TAD-M600」を発表した。10月下旬から順次発売する。「厳しい環境ではあるが、グループ全体のオーディオ事業を活性化させるため、もう一度なすべきことを考えた末に送り出す“自信作”だ」(テクニカル オーディオ デバイセズ ラボラトリーズの宮川務社長)。

photophoto ハイエンドモニタースピーカー「TAD Compact Reference TAD-CR1」とモノラルパワーアンプ「TAD-M600」(右)
製品名、型番 価格 発売日
TAD Compact Reference TAD-CR1 194万2500円(1本) 11月中旬
TAD ST1(TAD CR-1専用スピーカースタンド) 12万6000円(1本) 12月中旬
TAD-M600(モノラルパワーアンプ) 262万5000円 10月下旬

 TAD-CR1は、2007年に発売した「TAD Reference One」をコンパクトにしたブックシェルフ型スピーカー。事実上の姉妹機だが、「弟分というわけではなく、コンパクトスピーカーの最高峰として開発したダウンサイジングモデル」(同社チーフエンジニアの長谷徹氏)という。外形寸法は337(幅)×440(奥行き)×627(高さ)ミリ、重量45キログラム。一見2Wayだが、同軸ユニットを使用した3Way構成で、再生周波数帯域は31Hz〜100kHz(クロスオーバー周波数は250Hz、2kHz)。定格インピーダンスは4オームとなっている。

photophoto CSTドライバー。蒸着ベリリウム振動板のミッドレンジとツィーターは、アルミリングを介して一体化している

 基本的な設計思想と技術は、Reference Oneと同じ。独特の同軸スピーカーユニット「CSTドライバー」はまったく同じものを使用した。CSTドライバーは、蒸着ベリリウム振動板のミッドレンジとツィーターを一体化させており、ミッドレンジのコーンが同軸配置されたツィーターの指向特性をコントロールする機能を併せ持つ。クロスオーバーにおける位相特性と指向特性を一致させた結果、250Hz〜100kHzという広帯域の再生帯域を実現した。「あたかもシングルユニットのように、同軸ユニット1つで女性ボーカルの声の帯域をカバーできる」。

 ウーファーは、Reference Oneよりも少し小さな20センチユニットが1つ。磁気回路には独自のOFGMS(Optimized Field Geometry Magnet Structure)回路を採用。20ミリ長のロングギャップでありながら、その間の磁束密度を均一化している。これにより、「小さな振幅から大きな振幅まで動作が安定し、高い駆動リニアリティーを実現した」(同社)。また振動板にはTLCC(Tri-Laminate Composite Cone)を採用。豊かでクリアな低音とカラーレーションのない、素直な中音域再生を実現したという。

 エンクロージャーも、作りはReference Oneと同様。厚さ21ミリのバーチ合板を骨組みとして、MDFの外装で構成したフレーム構造とした。さらに底部には厚さ27.5ミリのアルミ材を採用。設置条件による音質の変化を最小限に抑えた。仕上げは天然木目が美しい「ポメラサペリ」の突板を使い、ピアノ仕上げを施している。「塗装から仕上げの磨き上げまで、職人が1本ずつ3週間かけて仕上げる」。なお、スピーカーターミナルもReference Oneと同じサイズだ。

モノラルパワーアンプのフラグシップ

 同時に発表されたモノラルパワーアンプ「TAD-M600」は、TADラボのオーディオ技術を駆使したフラグシップモデル。“M”はメインアンプを示し、600は定格出力の600ワット(4オーム時)を表している。

photophoto 「TAD-M600」とそのフロントパネル。TAD-M600のベース部分には鋳鉄を採用。南部鉄の職人が砂型を使い、1つ1つ作成するというぜいたくなもの。重量はベース部分だけで35キログラム、全体では90キログラム(1台)となる

 開発コンセプトは「正確無比」。モニタースピーカーであるTAD-R1のポテンシャルを最大限に引き出すため、アンプも音に色をつけないことを第一とした。スピーカーの振動板を正確にドライブするため、ボイスコイルに流れる正負の電流発生源を完全に対称化。電源回路には同一のトランスを2基搭載したほか、基板上の部品レイアウトはもちろん、正負回路の温度や磁界など、動作環境までを含めて対称性を重視した設計になっている。回路も入力端子から出力端子までフルバランス方式だ。

 ベース部分には、“ねずみ鋳鉄”とよばれる片状黒鉛鋳鉄を採用している。ねずみ鋳鉄は、内部に多くの黒鉛を含み、一般の鋼に比べて振動吸収性に優れる。TAD-M600では、南部鉄の職人が砂型を使い、1つ1つ作成するという。または脚部の位置を本体の外側に配置したワイドトレッドシャーシ構造として相対的な重心を下げる。さらに、点支持のスパイク、トランスとシャーシの間に設けられた10ミリ厚のアルミニウム制振板など、振動制御を徹底した。

 電源トランスやプリント基板、電解コンデンサーなど多くの部分にオリジナルの高品質パーツを採用している点も特徴の1つだ。とくに、衛星通信など超高周波増幅回路に用いられるPPE(ポリフェニレンエーテル)を絶縁材に採用した、無酸素銅板をはり合わせたプリント基板については「非常に音のいい基板ができたと自負している」(同社)。通常よりも厚い銅箔(どうはく)を使用することで低インピーダンスを実現。銅箔パターン間の結合も小さいPPEを使って性能と音質の向上に寄与したという。電源トランスも1つ1つ手作りする紙巻きタイプだ。

 外形寸法は516(幅)×622(奥行き)×307(高さ)ミリ。入力端子はXLR/220オーム。スピーカーを接続するターミナルは2組を用意してバイワイヤリングに対応した。

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