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LEDバックライトでどう変わる? 東芝「55ZX8000」人気の薄型テレビ3機種レビュー番外編(3/3 ページ)

» 2009年08月25日 23時50分 公開
[野村ケンジ,ITmedia]
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 ホームシアターファンも注目する高級モデルだけに、今回は自称「極小シアター」ルームに運び込み、その実力のほどを細やかにチェックした。部屋の明るさはあえて全暗にはしなかったものの、プロジェクターの映像でも過不足なく楽しめる程度にし、製品の実力を最大限に発揮するよう適宜画質調整を試みている。

 BDレコーダーのパナソニック「DMR-BW800」を使い、録画コンテンツ、BDソフトなどひととおり見終わって感じたのが、液晶テレビとは思えない黒の深さだ。先にも言ったが、液晶パネルはその構造上、どうしても黒が浮いてしまう。特に暗い部屋だとそれが目立つ傾向にあるのだが、LEDバックライトを搭載する55ZX8000は、黒がちゃんと真っ黒に表示される。当たり前のことをさも大仰に言っているように思うかもしれないが、こういった映像はいままでプラズマでしかあり得なかったもの。いよいよ液晶もこの特徴を獲得したのかと、感慨深く思えてくる。

 ただし最暗部の階調に関しては、やはり「おまかせ」モードでは大ざっぱすぎる。また暗い部屋での試聴のためか、液晶らしい絶対的な明るさはあまり発揮されてはおらず、柔らかだが少々ねむいともいえる映像表現になっている。そこでモードを「映画プロ」に変更し、バックライトの明るさを上げてみた。

 するとたちまちこれらは解消。明暗ダイナミックレンジの広い、かつ最暗部の階調も細やかな映像へと変化した。しかしながら、今度は多少の黒浮きが発生してしまう。どうやら「おまかせ」では、LEDバックライトならではのメリットを最大限に感じ取れるよう、黒浮きを極力押さえ込んだセッティングとなっているようだ。表現の豊かさに関しては、バックライトを明るくした方が多少有利な面はあるが、どちらを選ぶかは悩むところだ。

 それに対して、色の多彩さに関しては文句のないレベル。「チャーリーとチョコレート工場」工場内のシーンでは、緑も赤も、悪目立ちせず、かつ印象的な色合いにうまくまとめられていた。特に赤の発色の良さは印象的。白色LEDは赤が弱いという話など、みじんも感じない。蛍光管を搭載するZ8000シリーズに対しても、随分鮮やかさがましたイメージがある。色合いのまとめ上げに関しては、フラッグシップの名にふさわしい、上質さを感じ取ることができた。

 一方、動画性能に関しては、下位モデルにたいしてそれほどアドバンテージを感じることはなかった。液晶パネル自身の優秀さもあってか、先日チェックした「42Z8000」に比べて数段上のフォーカス感、動画ボケの解消を実現していたが、残像に関しては相変わらず。「マクロスフロンティア」の戦闘シーンでは、相変わらずコマヌケしたかのようなぎこちなさが残っている。

 しかしCG画像をリアルに見せる階調表現の巧みさ、色合いの艶やかさに関しては、かなりの優秀さを持つことも確か。スピードレーサーは、CGアニメーションといってもいいほど全面デジタル加工が施されているが、そのような映像であってもかなりの実体感を持たすことができる素晴らしい実力を持ち合わせている。映像のリアルさをとるか動きをシビアに追い求めるか、悩ましいところだ。

 このように55ZX8000は、LEDバックライトをはじめとするいくつかの新技術によって、液晶ディスプレイのもつ表現イメージを越えた映像美を楽しませてくれる存在であることは確かだ。録画機能などのユーザビリティー面も含めて、充分以上に満足できる優秀機であることはまちがいない。

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