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CEATECこぼれ話 ソニーの3Dテレビが変わった理由本田雅一のTV Style

» 2009年10月10日 18時47分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 今週は「CEATEC JAPAN 2009」が開催され、台風の影響を受けながらも、次世代のテクノロジーを求めて多くの来場者を集めた。もっとも、テレビ分野に限ってみると、東芝が「Cell REGZA」を発表、展示したことを除けば、かなり”小粒”な展示が多かった。

photo 3Dを大プッシュしていたソニーブース

 昨年のパナソニックに続き、ソニー、シャープ、東芝も3Dテレビを参考展示したが、パナソニックとソニーは、すでに3D対応テレビを来年にも発売することを表明しており、展示は「凄いぞ!」と驚かすフェーズから、製品としての完成度を訴求するフェーズに入っている。

 ソニーは、1月の「2009 International CES」で展示した3D液晶テレビとは異なる展示を行っていた。CESでは、偏光フィルムを液晶パネルに直貼りし、パッシブメガネをかけて立体映像を見る3D液晶テレビ。しかし今回は、フレームシーケンシャル(左右の眼を順に表示し、メガネのシャッターでステレオ像を振り分ける方式)によるアクティブ方式に切り替えていた。これも製品化をにらんだものだ。

 少々裏話的に3Dテレビの話をすると、ソニーは当初、CESで展示したように偏光フィルムによる3Dテレビを検討していたようだ。偏光フィルムを後から貼り付けるのではなく、液晶パネルの製造工程において、最初の表面処理を行う部分で貼り付ける直貼り型のパネルにしようとしていたらしい。しかし画素単位で偏光方向をキッチリ合わせなければならないため、製造コストがかなり上がってしまう。

 加えて画素を左右の眼に振り分けるため”フルHDの3D”とはいえなくなってしまう。パナソニックはプラズマパネルの応答性の高さを利用し、蛍光体の残光時間を2/3にまで減らした上で120Hzのフレームシーケンシャル表示としており、ソニーとしても製造コストとの兼ね合いで製品化する際にはフレームシーケンシャルにせざるを得なかったのだろう。

 液晶アクティブシャッター付きの3Dメガネは、おおよそ15%ぐらいの光しか通さないため、画面が暗くなってしまうが、解像度はフルHDのままで3D化できる。これを液晶テレビに使うと、左右用の絵が混じり合う領域はメガネのシャッターを閉じておく必要があるので、開口時間はプラズマの場合より短くなり、当然、透過率も下がる。実際、9月にドイツで開催された「IFA 2009」で見たソニーの3Dテレビはやや暗めだったが、今回はそれをやや明るく見えるように調整していたようだ。ただ、今度はフリッカーがやや目立つようになってしまっていたので、その点はやや気がかり。製品化までには落ち着くことを期待したい。

 液晶の3D表示はシャープも展示していたが、もっとも出来の良かったのは東芝だ。黒挿入をすることなく、3D映像の表示に向いた液晶ドライブ波形のイコライジングを行うことで、素早い左右映像の書き換えが行えるのだとか。にわかには信じがたいのだが、実際に見た映像はアクティブシャッター方式にもかかわらず、明るく、しかもクロストークが少ないものだった。

photophoto シャープ(左)と東芝(右)に3Dテレビは初披露

 ただし東芝は3Dテレビの発売を予定しておらず、市場に投入される具体的な予定はないようだ。とはいえ、難しいと思われた液晶のフレームシーケンシャル方式でも、ここまで出来るという、1つの指標にはなっていたと思う。

 さて、冒頭で触れたCell REGZAは、現時点で投入できる最高級の液晶テレビという点で、販売店にも大いに受け入れられているようだ。それもそのはず。CELL REGZAは”テレビ好き”の願いを叶えるために、現時点で考えられるアイデアをすべて詰め込んだ製品になっている。

 しかし、一方で全く新しい発想というのは盛り込まれておらず、来年には製品化することを前提にスケジュールが進んでいる3Dテレビと同様、未来を指し示す展示ではなく、“今”を表現した展示といえる。CEATECに未来を感じるために足を運んでいる人は、そうした技術の展示が少なかったことを残念に感じたかもしれない。

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