容量以外にもうひとつ、どのレンジのモデルを選ぶかという問題もある。各社とも今回紹介した上位機よりもコンパクトなモデルを販売しているが、撮像素子やレンズといった画質を決定づけるデバイスも小さくなってしまうため、サイズやデザイン、予算など譲れない条件がある場合に限り検討すべきだ。
というのも、各レビュー記事で紹介したように、どの機種も高度なフルオートモードを搭載しており、誤ってマニュアルモードに設定してしまうことのないよう工夫も施されているので、初めて買うビデオカメラとしてもハイエンドモデルは使いやすいからだ。この点で日本ビクターが「GZ-HM400」を発売するにあたってパパママ向けの特設サイトを用意したのは面白いし、最初から中容量バッテリーを同梱しているのも特筆できる。
また、ソニー「HDR-CX520V/500V」がハイエンド機にありがちなゴツさを抑え、やさしい外観にまとめたのも、より多くの人にハイエンド機ならではの画質や使いやすさを体験してほしいとの思いからだろう。もちろん、上位機ならではのマニュアル撮影機能も高度化しており、中でもキヤノンの「iVIS HF S11」と日本ビクターの「GZ-HM400」は使い勝手にも優れ、画をコントロールする楽しみを存分に味わえると感じた。
撮影した映像は「見たら捨ててしまう」のでなければ、何らかの外部機器へコピーもしくは移動することになるが、PCを使わずに環境を整えたいのであれば、Blu-ray Discレコーダが便利だ。
テレビやレコーダーまで幅広く展開するソニーやパナソニックの製品はもちろん、キヤノンと日本ビクターが採用する最高画質モード(24Mbps)でも、純正の外付けDVDライターにはコピーできなくても、レコーダーならダビングできるものがいくつか存在する。対応機種情報は各メーカーのWebサイトで公開されており、組み合わせて使えば安心して高画質での撮影を楽しめるだろう。
ただ、本格的な編集を考えているのなら、やはり高速なCPUを積んだデスクトップPCと高速処理可能な編集ソフトが必要だ。とはいえ、この半年ほどの間にもハードウェア・ソフトウェアの進化は著しく、「AVCHDは編集に向かないフォーマットだという常識は過去のものになった」と言い切るメーカーまで現れている。
先日発表されたトムソン・カノープスの個人向け編集ソフト「EDIUS Neo 2 Booster」などは、Core i7搭載PCを使うことで、別の形式に変換しなくても3ストリームまでのリアルタイム再生が可能というから、DV編集と変わらない使い勝手が実現できることになる。AVCHDが民生用だけでなく、一部の業務用カメラの記録フォーマットとしても標準化したことで、ここにきて周辺環境も急速に整ってきた形だ。
民生用HDビデオカメラは「メモリ記録のAVCHD機」で落ち着きつつあるが、デジタル一眼レフカメラによる動画撮影がプロの現場で一定の地位を確保するなど、動画撮影をめぐる状況は日々変化している。
個人で買える価格帯の製品に限っても、絶対的な画質では高級デジタル一眼レフと高性能レンズの組み合わせに分があるものの、瞬間瞬間でめまぐるしく変わるフォーカスや明るさなどを適切に保ち続けるオートモードの安定性では、いまだビデオカメラが優位に立つ。この秋モデルでは強力な手ブレ補正機構も手に入れ、高度な動画撮影を手軽に楽しめるアイテムとして積極的に選ぶだけの価値は高まっている。
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