ところで、オンキヨー製AVアンプの型番の“NA”は、ネットワークオーディオ対応を意味するが、本機を始めとする同社最新NAモデルは、AACやMP3などのロッシー音声のほか、非圧縮のWAVやロスレスのFLACなどの高音質ファイルに対応、今シーズンから96kHz/24ビットのハイレゾリューション音源も再生できるようになった。自社サイト「e オンキヨー・ミュージック」ですでに96/24の音楽配信を行なっていたわけだから、やっとAVアンプが自社のサービスに追いついたともいえるわけだ。
また、この秋からNAモデルは、世界で初めてWindows 7対応を果たした(本機はネット経由でアップデートする必要がある)。同OSマシンとLAN接続すれば、PC側で本機を認識し、最新のWindows Media Player上で本機を音声出力機器として選び、音楽ファイル再生が可能となるわけだ。
実際にダウンロードしたハイビット・ハイサンプリングの高音質ファイルを本機で再生してみると、明らかに音の安定感、深みでCDを大きく上回ることが実感できる。こんなピュアオーディオの深遠な世界が、15万円前後のAVアンプで実現できるのだから、これは驚くべき事実といっていいだろう。
こういった最新フィーチャーの充実ぶりとともに、ぼくがこのAVアンプを推すのは、なんといってもマルチチャンネル収録されたHDオーディオのデコーデッド・サウンドの素晴らしさによってである。中低域から中域にかけて音の厚みを感じさせる、タフでダイナミックなサウンド。比較試聴した他社のAVアンプの音がひ弱に感じられるほどの力感あふれる音を聴かせてくれるのだ。とくに最新のハリウッド映画との相性がバツグンによく、日本製アンプとは思えないほどのバタくさい音を聴かせてくれる。
オンキヨーは1990年代初頭からルーカスフィルムをはじめとする米国の映画スタジオとさまざまな協業を続け、2000年頃には米国のハイエンド・アンプメーカーの協力を得てインテグラ・リサーチ・ブランドの展開を図るなど、アメリカン・サウンドの研究を怠りなく続けてきた。その成果が本機の音にも間違いなく反映されている。
そんな魅力的な音を聴かせてくれる本機でぜひ観てほしいBD ROMが映画「ザ・バンク 堕ちた巨像」である。
演出は「パフューム ある人殺しの物語」のドイツ人監督トム・ティクヴァ。クライヴ・オーウェン演じるインターポールの捜査官が、武器調達を巡る欧州の巨大銀行の不正を追いかけるという内容で、平和な遠い日本に住むぼくたちにとって「そんなバカな……」話が次々に展開していく。
ドルビーTrue HD 5.1チャンネルで収録されたサウンドデザインもじつに緻密かつダイナミックなもので、BD ROMならではの音の魅力が満喫できる。オープニングの降りしきる雨の包囲感、その臨場感がまず素晴らしく、あっと言う間に映画の世界に引きずり込まれてしまうのである。
圧巻は、ニューヨークのグッゲンハイム美術館(のセット?)で繰り広げられるド派手な銃撃戦。周到に貼り付けられた銃撃音がサラウンド音場を駆けめぐり、観る者のテンションをひたすら上げていく。弾道の軌跡が目に見えるかのような効果音の迫力に最新ハリウッド映画音響の凄さを再認識させられるが、本機NA807のダイナミックで力感あふれるその音調は、まさにこの映画の音の魅力を引き出すのにピッタリ。
力のある本機のサウンドでこのシーンを観ると、あたかも自分がグッゲンハイム美術館の銃撃戦に遭遇したかのような「現場感」が味わえるのである。優れたスピーカーを組み合わせれば、ヘタな映画館をはるかにしのぐ臨場感が得られるといっていい。
BDの高精細なHD映像に負けない高品位な音を実現すること。これこそ2009年ホームエンタテインメント革命の第一歩だと筆者は確信する。
型番 | TX-NA807 | TX-SA707(参考) |
---|---|---|
定格出力(JEITA) | 145ワット×7 | 130ワット×7 |
実用最大出力 | 230ワット×7 | 190ワット×7 |
HDMI端子 | 6入力、1出力 | |
映像入力端子 | D4×2、コンポーネント×2、Sビデオ×4、コンポジット×5 | |
映像出力端子 | D4×1、コンポーネント×1、Sビデオ×2、コンポジット×2 | |
音声入力端子 | デジタル×6、アナログ×9 | デジタル×6、アナログ×8 |
音声出力端子 | アナログ×2、7チャンネルプリ×1、サブウーファープリ×2 | |
外形寸法 | 435(幅)×436(奥行き)×199(高さ)ミリ | 435(幅)×379(奥行き)×175(高さ)ミリ |
重量 | 18キログラム | 12.6キログラム |
価格 | 16万8000円 | 13万6500円 |
発売日 | 8月8日 | |
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