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» 2009年11月02日 16時00分 公開

小寺信良の現象試考:見直しが求められる、番組と広告の関係 (2/2)

[小寺信良,ITmedia]
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「ひっぱる」番組作りの限界

 番組のいいところでCMに入ることを、一般的には「山場CM」と呼ぶようだ。しかし山場CMというと、いかにも番組のいいところでCMの方が無理矢理割り込んできたようなイメージだが、実際には番組制作側がCMを入れるポイントを操作しているわけで、番組制作の実際を知っている筆者からすると、用語としてどうもしっくり来ない。ここでは作り手側の視点でこれまで通り「ひっぱり手法」と呼ぶことにしたい。

 このひっぱり手法が、視聴者に不快感を与えるのは事実であろう。イギリス、フランスではCMの入り方に関する規制があり、引っぱり手法を使った番組はかなり少ない。米国で規制があるという話は寡聞にして聞いたことがないが、元々消費者団体の圧力が強い国なので、やはり率としては低いようだ。

 この視聴者の不快感が向けられるのは、主に番組であり、ひいては放送局である。一方CMのスポンサーについては、あまり明確な敵意が向けられない。なぜならば、引っぱり手法の次に現われたCMを、ほとんどの人が記憶していないからである。

 人が物事を記憶するには多くのパターンが存在するが、ひとつはストーリーとして記憶する方法である。番組とはほとんどが何らかのストーリーを語っているわけだから、記憶されやすい。しかしストーリーの流れとは無関係な情報として飛び込んでくるCMは、記憶のストーリーからは除外されてしまうわけである。

 もうひとつの理由は、引っぱり手法の不快感を補てんするため、多くの視聴者はすぐほかのチャンネルに変えてしまうからだ。つまり引っぱったあとのCMそのものを、本当に見ていないのである。この2つの理由により、引っぱり手法そのものは、CMを見せて購買に結びつけるという点に関しては、マイナスの要因しかない。先にも述べたが、引っぱり手法の目的は視聴率保持であり、これはある意味、スポンサー軽視の象徴とも考えられる。また、引っぱり手法は視聴率にとって逆効果であるという調査研究がなされれば、この手の手法はすぐにでも廃れていくはずである。

 テレビ局は広告減の対策として、視聴率を稼ぐための小手先の手段ではなく、抜本的に力のある番組を作るという目標を立てるべきだ。とはいっても、制作費が半分以下に削減された現状では、もはや我々が知っている時代の番組作りを行なうのは難しい。新たな業態とのコラボレーションなど、スポンサード手法を開拓する以外に道はないだろう。

小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作は小寺氏と津田大介氏がさまざまな識者と対談した内容を編集した対話集「CONTENT'S FUTURE ポストYouTube時代のクリエイティビティ」(翔泳社) amazonで購入)。

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