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デザイン踏襲、中身は大きく進化――ソニー「α550」レビュー(3/5 ページ)

» 2009年11月10日 08時00分 公開
[小山安博,ITmedia]

さまざまなシーンに対応する新機能

 撮影機能についても強化されている。まず大きなポイントがダイナミックレンジコントロールの機能強化だ。従来機は「Dレンジオプティマイザー」として暗部を自動補正する機能を搭載していたが、これは暗い部分が明るく写るかわりに、補正量が多い場合、画質への影響も懸念される。

 本製品でもDレンジオプティマイザーは搭載するが、加えて新搭載されたのが「オートHDR」。これは、暗い部分と明るい部分のそれぞれで適正露出にした2枚の写真を連写し、それを合成することで明暗差の激しい写真を適切な露出で記録してくれる機能だ。

 これが使いやすい。こうした合成機能は、撮影した連写写真がズレてしまうとうまくいかないため、三脚に設置して撮影することを想定している場合が多い。合成に時間がかかるというのも欠点だ。ところがこのオートHDRでは、手持ちでの撮影もOKで、合成にかかる時間も2秒程度と速い。気軽に撮れるし動作も速いので、積極的に使う気になる。

 実際の効果も強力だ。コントラスト差が激しい被写体を撮影するときも、暗部は明るく、明部はトーンを残して撮影できる。HDR(ハイダイナミックレンジ)という名称だが、極端で不自然な結果になるのではなく、より自然な印象の画像になるので、普段から使っていても安心できる。オート設定に加え、5段階のレベルを設定できる。

photophoto 通常撮影(写真=左)とHDRオート(写真=右)での撮影。空の階調が残りながら、橋の下がしっかりと明るく写っている。手持ち撮影だが、二重写しになっている場所もなく、合成はかなり正確だ
photophoto 通常撮影(写真=左)とオートHDRオン(写真=右)

 2枚の写真を合成するため、動体の撮影には使えない。風に揺れる葉っぱさえもズレた画像を作り出す原因となるので、風景撮影でもシーンを選ぶ場合がある。建物を撮る際の利用が一番効果的だろう。動かなければ人を撮影しても問題ないが、動体はDレンジオプティマイザーを使うことが推奨されている。こちらは合成の必要はないので動作も速い。Dレンジオプティマイザーも、補正効果を5段階で変更することが可能だ。

 このオートHDRでも活用されているのが連写性能で、このクラスでは高い連写性能を誇っている。通常の連写でもファインダー使用時で最高約5コマ/秒、ライブビュー時で同4コマ/秒の連写が可能。こちらの通常連写では、1枚ごとに露出やAFを合わせてくれるが、最初の1枚目で露出/AFを固定する「速度優先連続撮影」を新搭載している。こちらを使うと、最高約7コマ/秒という高速連写が可能になった。これだけのスピードならさまざまなシーンで満足いく結果が得られるだろう。ちなみに、ライブビュー中に速度優先連続撮影を使うと、連写中は画面がブラックアウトする。

photo 連写は通常の連続撮影で2種類の連写速度が選べ、さらに速度優先連続撮影ではさらなる高速連写が可能

 HDRと高速連写によって、これまでは撮影できなかったようなシーンも快適に撮影できるのがα550の強みだ。高速連写と画像合成というと、同じソニーのコンパクトデジカメ「サイバーショット DSC-TX1/WX1」に搭載された画像合成によるノイズ低減機能やスイングパノラマがあっても面白かったかもしれないが、そうした機能は搭載されていない。

コストパフォーマンスが高く、使って分かる良さ

 基本性能としては、撮像素子には有効画素数1420万画素のAPS-CサイズCMOSセンサー「Exmor」を搭載する。画像処理エンジンは「BIONZ」で、低ノイズ化と高速処理を実現している。ExmorとBIONZの低ノイズ化によって、最高ISO感度はISO12800までサポートした。ボディのグリップは大きく、しっかり握れる。背面や上部にもボタンが増え、直接ボタンで選べる機能が増えたので、操作性が向上している。

 ファインダーの視野率は約95%と従来通りだが、倍率は約0.80倍と向上している。ファインダー内のAFポイントは、合焦した被写体の色に応じて赤く光るかどうかが変わる。被写体によっては見にくくなるなどの理由があるからだそうだ。

photo ファインダーの下にはアイセンサーがあり、ファインダーをのぞくと液晶表示がオフになる。それと同時にAF動作を開始するアイスタートAFもあるが、持ち歩いているだけでAFが動作してしまこともあるので、個人的にはオフで利用した方が快適だった
photophotophoto 縦持ちすると画面表示も縦になり、見やすいのは便利だが、ライブビュー撮影時には縦表示にならない。また、設定変更時の画面も縦にならない

 個人的には再生時の画像送りのスピードが快適。高速連写した後に再生した場合、十字キーを押し続けて画像送りをすると、まるでコマ送りのような動画に見えるほど、画像送りが高速に行える。こういったパフォーマンスの良さは使っていて印象がいい。

photo メモリーカードはメモリースティック PRO デュオ/メモリースティック PRO-HG デュオとSDHCカードのデュアルスロット。切り替えはカード室のスイッチで行うので、カードが一杯になったら切り替える、といった使い方になりそうだ

 基本的なデザインとサイズが変わらないため、従来のモデルと大きな違いがないように見えてしまうのは残念だが、実は内容的にガラリと大きく変わった。これだけのスペックを誇りながら、実売価格はエントリー向けであるのが大きなポイントといえる。連写にも強く、可動式液晶を備えているので、運動会など“人の頭の上から走るわが子を狙う”などといったシーンでは絶大な威力を発揮しそう。もちろん、普段使いにも便利な機能が搭載されており、使ってみて良さの分かるカメラといった印象だった。

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