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新世代パネル搭載の“LED AQUOS”で楽しむ「バーン・アフター・リーディング」の鮮鋭画質山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」Vol.41(2/2 ページ)

» 2009年12月16日 21時09分 公開
[山本浩司,ITmedia]
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オーナーの好みを反映させる「好画質センサー」

photo 好画質センサーの設定画面。3つ並んだ画像の中から好みのものを選択することでユーザーの嗜好(しこう)を反映させる

 テレビ購入時のセットアップ時に提示される「スポーツ」「ビデオ」「フィルム」の3ジャンルの写真を見て好みの番号を入力することで、それぞれの番組内容に合わせてオーナーの画質嗜好(しこう)を反映させることができるのである。今どんな番組が入力されているかは、電子番組表のジャンル情報などを参照する仕掛けだ。

 ほとんどのテレビは、照度環境やコンテンツの画調に合わせて最適画質にチューニングしたプリセット映像モード(「映画」「リビング」「ダイナミック」モードなど)を持っているが、実際それが多くの家庭でじゅうぶんに活用されているとは言い難い。また、昨今のテレビにはじつにきめ細かな画質調整機能があるが、その使い方はその名称の理解を含めてとても難しく、ほとんど使われていないのが実情だ。

 そこで、パイオニアが先鞭(せんべん)をつけ、東芝、日立などが採用した、誰もがいつでもどこでもどんなコンテンツでも最高画質で楽しめるオートマティック高画質モードをAQUOSにも仕込むべきではないか、とシャープ開発陣に以前からリクエストしていたのだが、今回のLXシリーズでそれがやっと実現されたわけである。しかも、オーナーの画質嗜好(しこう)まで把握してそれにアジャストしようというわけで、ここまで踏み込んだ自動画質調整モードは、まだ例がない。

photo 60V型の「LC-60LX1」

 実際に60V型の「LC-60LX1」で、「スポーツ」はよりくっきりと色乗りのよい写真3を選び、白熱電球による200ルクスくらいの明るめの環境でJリーグのハイビジョン放送を観たが、ピッチの芝目が目にいちだんと鮮やかで、じつに楽しい画調だ。家族や友人と一緒にスポーツ番組を楽しむのにふさわしい明快な画質といえる。「シネマ」はいちばんしっとりとした写真1を選んで、白熱電灯を40ルクスくらいまで落した暗い環境でBD ROMの映画をいくつか観てみた。きわめてノイズの少ないクリーンな画質で、ホワイトバランス、スキントーンもじつに安定している。フィルムルックを彷彿させるタッチの柔らかさも好ましい。

 本機の色再現範囲(色域)は、ハイビジョンの国際色基準にほぼ準拠しており、LEDのRGB個別制御を行なってより幅広い色再現範囲を誇っていた同社XSシリーズのような派手さはないが、不自然な色の誇張がなく、映画を観て安心して楽しめる画質に仕上がっていると思った。

 それから、AQUOSの弱点として指摘し続けてきた音質も、このLX1シリーズでかなりよくなった。モニター部を取り囲むようにユニットが配置され、映像との一体感が向上し、独自構造で振動を抑えたウーファーの採用により、かなり“”らしい”低音が再生できるようになった。この進化ぶりにも大いに驚かされた。本格的な外部スピーカーを用意した東芝「55X1」を除けば、今もっとも音のよいテレビはこのLX1シリーズかもしれない。

 そんなLC-60LX1で観て、その画質の素晴らしさにうなったのが、映画BD ROM「バーン・アフター・リーディング」である。

photo

Blu-ray Disc版「バーン・アフター・リーディング」。
発売元は日活、販売元はハピネット。価格は4035円(c)2008 Focus Features LLC.All Rights Reserved.

 監督・脚本は、クリント・イーストウッドとともに現在のアメリカ映画界で今ぼくがもっとも注目しているジョエル&イーサン・コーエン兄弟。

 音楽を排し、効果音のみでスリリングなシンフォニーを奏でた「ノーカントリー」から一転、本作は地響きをたてる打楽器の荘重なサウンドに乗って通信衛星がワシントンのCIA本部をフォーカスする場面から始まる。シリアスな情報戦を扱ったスパイ映画か? と思いきや、その後のバカバカしい展開にあぜんとさせられる、いかにもコーエン兄弟なオフビートな怪作である。

 全身整形を夢見る女フランシス・マクドーマンド、元警護官の精力絶倫男ジョージ・クルーニー、何にも考えていないC調なスポーツクラブのインストラクター役ブラッド・ピット、寒々としたイヤミな女性医師ティルダ・スウィントン、アルコール中毒でストレスだらけのCIAの元情報分析官ジョン・マルコヴィッチと、まずは芸達者な役者たちのハマりぶりを味わうべき映画なのだが、LC-60LX1で観る本作の画質はきわめて鮮鋭度が高く、これぞHD映像で楽しむ映画と思えるキレのよさが存分に味わえる。

 本機の自動画質調整機能の「ぴったりセレクト」でいちばんしっとり見える「シネマ1」を選んでこの作品を味わったわけだが、ノイズ感の少なさ、輪郭の柔らかさ、それとスキントーンの安定感が傑出していると思った。とくに60V型という大画面サイズでは映像が粗っぽく見えがちだが、本機の映像はじつに緻密(ちみつ)。大画面っていいな、と素直に思わせる画調が維持されている。

 「ぴったりセレクト」のデフォルトでは、補間映像が挟み込まれる倍速駆動となるが、動きが滑らかすぎて映画的なモーションリアリティが出にくい。ぼくなら映画ソフトは倍速オフのフィルム等倍設定で観たいと思った。このへんのツメをぜひ同社技術陣に望みたい。

 先述したように、他社製品に比べて本機の音のよさは評価できるが、この映画冒頭の、重低音を効かせた打楽器のリアリティを表現するにはまだ力不足。本機には音声ライン出力が用意されているので、ローパス(ハイカット)フィルターを用意したアンプ内蔵型のサブウーファーを組み合わせれば、凡百のシアターラックを上回る迫力あるサウンドを楽しむことができるのは間違いない。

 10年目を迎えるシャープAQUOSの「本気」がひしひしと伝わってくるLX1シリーズ。おおいに注目していただきたい。

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