ITmedia NEWS >

デジタル分野総ナメ――「2009年デジタルトップ10」麻倉怜士のデジタル閻魔帳(4/4 ページ)

» 2009年12月28日 08時00分 公開
[渡邊宏,ITmedia]
前のページへ 1|2|3|4       

――2009年の1位はオリンパスの「オリンパス ペン・EP-1」です。デジタルトップテンは今年で4回目となりますが、カメラが1位になるのは初めてです。

麻倉氏: 実はわたしはフィルムカメラの「オリンパス・ペンF」ユーザーで、ペンタプリズムなしのデザインがとても格好良く思え、長く愛用していました。そのペンFのデジタル版ともいえるE-P1ですが、クラシカルな外観だけではなく、絵の美しさも絶賛したいです。

 その絵はデジタル的ではなくナチュラルかつ情緒的で、同じマイクロフォーサーズ規格を採用したパナソニック「GF-1」とも異なる、ハイ・エモーショナルと表現できる絵といえます。特に階調再現の良さには感銘を受けました。

photo

 特別な絵づくりモードであるアートフィルター、なかでも「ポップアート」は利用する機会が多いのですが、夕日はより赤く、深緑は萌えるような緑に、超記憶色といえる、心象風景的な色彩で表現されるのがとても楽しいです。アナログカメラ的な手ざわりも心地よく、機械の持つ活力のようなものを感じさせます。特にシャッターの感触は絶品です。何も撮らなくても、シャッターを押しつづけていたという欲望に駆られるほどです。フラッシュを内蔵してないのは残念ですが。

 カメラは、ピント合わせを楽に行うためにオートフォーカス、暗いところで写せるようにストロボと高機能化を進めてきました。ですが、機能に直結しないものの、小さく・薄く・軽くといういわゆる日本的なモノ作りも行われてきました。その精神を体現した製品のひとつがフィルムカメラ「オリンパス ペン」であることは間違いないでしょう。

 その精神を引き継ぐE-P1は、「薄くて小さいコンパクトデジタルカメラ」「黒くて重いデジタル一眼」そのいずれにも属さない製品です。同じマイクロフォーサーズ規格のカメラでもパナソニック「GF-1」は写実的、E-P1は心象的という違いも面白いですね。

麻倉怜士(あさくられいじ)氏 略歴

 1950年生まれ。1973年横浜市立大学卒業。 日本経済新聞社、プレジデント社(雑誌「プレジデント」副編集長、雑誌「ノートブックパソコン研究」編集長)を経て、1991年にデジタルメディア評論家として独立。自宅の専用シアタールームに150インチの巨大スクリーンを据え、ソニー「QUALIA 004」やBARCOの3管式「CineMAX」といった数百万円クラスの最高級プロジェクターとソニーと松下電器のBlu-ray Discレコーダーで、日々最新AV機器の映像チェックを行っている、まさに“映像の鬼”。オーディオ機器もフィリップスLHH2000、LINNのCD12、JBLのProject K2/S9500など、世界最高の銘機を愛用している“音質の鬼”でもある。音楽理論も専門分野。
 現在は評論のほかに、映像・ディスプレイ関係者がホットな情報を交わす「日本画質学会」で副会長という大役を任され、さらに津田塾大学の講師(音楽史、音楽理論)まで務めるという“3足のワラジ”生活の中、精力的に活動している。

著作


「ホームシアターの作法」(ソフトバンク新書、2009年)――初心者以上マニア未満のAVファンへ贈る、実用的なホームシアター指南書。
「究極のテレビを創れ!」(技術評論社、2009年)――高画質への闘いを挑んだ技術者を追った
「オーディオの作法」(ソフトバンククリエイティブ、2008年)――音楽を楽しむための、よい音と付き合う64の作法
「絶対ハイビジョン主義」(アスキー新書、2008年)――身近になったハイビジョンの世界を堪能しつくすためのバイブル
「やっぱり楽しいオーディオ生活」(アスキー新書、2007年)――「音楽」をさらに感動的に楽しむための、デジタル時代のオーディオ使いこなし術指南書
「松下電器のBlu-rayDisc大戦略」(日経BP社、2006年)──Blu-ray陣営のなかで本家ソニーを上回る製品開発力を見せた松下の製品開発ヒストリーに焦点を当てる
「久夛良木健のプレステ革命」(ワック出版、2003年)──ゲームソフトの将来とデジタルAVの将来像を描く
「ソニーの革命児たち」(IDGジャパン、1998年 アメリカ版、韓国、ポーランド、中国版も)──プレイステーションの開発物語
「ソニーの野望」(IDGジャパン、2000年 韓国版も)──ソニーのネットワーク戦略
「DVD──12センチギガメディアの野望」(オーム社、1996年)──DVDのメディア的、技術的分析
「DVD-RAM革命」(オーム社、1999年)──記録型DVDの未来を述べた
「DVD-RWのすべて」(オーム社、2000年)──互換性重視の記録型DVDの展望
「ハイビジョンプラズマALISの完全研究」(オーム社、2003年)──プラズマ・テレビの開発物語
「DLPのすべて」(ニューメディア社、1999年)──新しいディスプレイデバイスの研究
「眼のつけどころの研究」(ごま書房、1994年)──シャープの鋭い商品開発のドキュメント


前のページへ 1|2|3|4       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.