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3Dの未来と課題麻倉怜士のデジタル閻魔帳(4/5 ページ)

» 2010年01月28日 11時44分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

麻倉氏: 既存コンテンツを3D化する、いわゆる2D-3D変換ですが、パナソニックのハリウッド研究所や各スタジオには「従来の映像資産を3Dにしましょう」と各社からいろいろな売り込みがあるそうです。その数は約30ともいい、それらは「完全自動は難しいので、場面場面の修正が必要」と費用面でも高価なものだそうです。

 2Dで撮影された映像を無理に3D化すると、無理して距離感をつけている感じになりますし、コントラストへ強弱をつけてしまうので、砂利道が波打ってしまったりと不自然な表現となりがちです。これまで3Dではたくさんの失敗があるのですから、ここはぜひ人間の脳が違和感を覚えないものにしないといけません。

 先ほども述べましたが、ComfortとQualityの双方があってこその3Dです。少しでも不自然さがあれば、気分が悪くなるなど視聴者へ肉体的なダメージがでてしまいます。無論、技術は進歩するものですから強力な演算性能を持つCell REGZAの2D-3D変換がどれほどの映像を作り出してくれるか興味はありますが。ちなみに、2D-3D変換について、東芝は搭載、パナソニックは非搭載、ソニーは搭載すれど強調せずの方針です。

 「(パナソニックとして2D-3D変換を)やる予定はありません。あくまでも画質が最高のフルHD/3Dで3Dの世界をパナソニックは切り開いていきます。”なんちゃって3D”をやると、“3Dってこんなものか”とユーザーにバカにされてしまいます。最初から、あるべき姿の3Dでなければ、3Dは正当に立ち上がらないです」(北米パナソニック 北島嗣郎社長)

 3Dの活用という意味では、ソニーブースで披露されていたテイラー・スウィフトさんのライブはとても面白い取り組みでした。目の前に本人がいつつ、なおかつライブ3D映像も同時に流す“3Dマルチチャンネル視聴”ともいえる見え方は面白いと思いました。従来の延長ではなく、3Dならではの使い方、見え方が提案できるのも3Dの面白さですね。去年のインタービーのソニーブースでも似たような取り組みをしていましたね。

photo ソニーブースで披露されていたテイラー・スウィフトさんのライブ

麻倉氏: 視聴に欠かせない3Dメガネの進歩も注目すべき点です。パナソニックはクロストークを減らす工夫を凝らし、ソニーは偏光フィルターなしにトライしました。これらはいずれもアクティブシャッターメガネですが、劇場用などのパッシブ型では、最大手のRealDが湾曲したプラスティックレンズを使うことで、偏光面に度をつけることが可能になる「湾曲メガネ」を開発しました。

 これによって、度をつけた“マイメガネ”を作ることが可能となるほか、マルチコーティングを施すことにより、反射によって生じるコントラスト低下を防ぐことでの画質向上も実感できました。LG Electronics電子の3D SXRDプロジェクター(円偏光方式)のデモンストレーションで、そこで配られたメガネと比較しましたが、コントラスト、彩度感、画像の透明感で明らかに上回っていました。3D時代にはディスプレイのみならず、メガネもとても大事と感じました。

photophoto パナソニックの偏光フィルターなし3Dメガネ(写真=左)、RealDの開発した「湾曲メガネ」(写真=右)

 3D対応テレビは3月にパナソニック、6月にソニーが北米で販売開始し、3D放送やパッケージソフトの販売もそれに準じたタイミングで開始されるはずです。

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