ITmedia NEWS >

3Dの未来と課題麻倉怜士のデジタル閻魔帳(5/5 ページ)

» 2010年01月28日 11時44分 公開
[渡邊宏,ITmedia]
前のページへ 1|2|3|4|5       

麻倉氏: そのほか目についたモノや話題をいくつか挙げておきましょう。パナソニックは152V型のプラズマを展示しましたが、これはデジタルシネマの規格であるDCIに準拠した4K2K解像度(4069×2160ピクセル)を持ちます。解像度が半分になってしまうサイド・バイ・サイドでもフルHD/3Dが実現できる解像度ともいえます。

 シャープは画素にR(赤)、G(緑)、B(青)の3色にY(黄)を加えた4色カラーフィルターを採用した4原色表示方式AQUOSを発表しました。黄色を追加することで、シアンなどの発色に改良が見られます。ハイビジョンの色帯域で撮影した映像を見ると、青や緑が若干誇張気味にも感じられましたが、今年のシャープの2Dテレビの目玉になるでしょう。

 アメリカにプレーヤー(再生機)文化が根付いていることは知られていますが、BDプレーヤーについてはIP接続が欠かせないものとなっています。テレビはあまり接続されていないものの、BDプレーヤーでは接続率が跳ね上がるという話をソニーで聞きました。多くのBDプレーヤーがYouTubeやNetFlixといったオンラインストリーミングサービスに対応しており、“ネットで気軽に見る”というニーズをうまくつかんでいるようです。BD-ROMは本格的に楽しみたいときに見るのですね。

 ワイヤレス伝送については、サイビームが開発し、多くの家電メーカーが賛同しているWirelessHDが各社ともかなり搭載製品を増やしてきました。今年の第2世代チップでは伝送速度は5GMbpsですが、2011年に登場する予定の第3世代チップでは28GMbpsまで高速化されます。同時に電源のワイヤレス化も進んでいる印象を受けました。また、これは有線ですが、イスラエルのValens Semiconductorが開発した「HDbaseT」は100メートルを非圧縮1080/60p映像、電源が伝送できるイーサネットケーブルで、Samsungやソニーピクチャーなどが賛同しています。

photo 写真左が開発中のサイビームの第三世代チップ

 Kindleが市場を広げつつあるEブックリーダーですが、ソニーが善戦しています。199ドルの低価格品から大画面(7インチ)&3G通信機能搭載の高付加価値製品まで幅広く展開しています。会場を見渡すと、ソニーのような大手からベンチャーまでさまざまな企業がEブックリーダーを展示していました。少しMP3プレーヤーの初期を思わせるような状況で興味深いですね。

 Eブックリーダーがなぜ日本で失敗し、アメリカで成功していのか。ソニーの野口不二夫氏(電子フック事業部・デュピテイプレジデント)に伺ったところ、こう言っていました。

 「まず、コンテンツが違います。読みたいコンテンツがたくさんあります。KindleではNewYorkTimesベストセラーの9割がオンライン購入できますが、これは紙の本と同時に出ますし、しかも少し安いです。それにグーグルの著作権フリーと合計して100万冊がダウンロードできます。表示のEペーパーも当時のものよりだいぶ進化しました。リーダーの価格も199ドル程度から安くなりました。また複数メーカーがやっているので、消費者にしてみると安心感がありますね」

麻倉氏: 会場や発表された製品を見ていると、リーマンショックから徐々に立ち直りつつある勢いを感じます。ですが、これまでの様に単に新製品を投入するのではなく、サービス・コンテンツ・ソリューションを一体化し、どのような付加価値を提案していくのかが、これからのカギになるように強く思いました。

麻倉怜士(あさくられいじ)氏 略歴

 1950年生まれ。1973年横浜市立大学卒業。 日本経済新聞社、プレジデント社(雑誌「プレジデント」副編集長、雑誌「ノートブックパソコン研究」編集長)を経て、1991年にデジタルメディア評論家として独立。自宅の専用シアタールームに150インチの巨大スクリーンを据え、ソニー「QUALIA 004」やBARCOの3管式「CineMAX」といった数百万円クラスの最高級プロジェクターとソニーと松下電器のBlu-ray Discレコーダーで、日々最新AV機器の映像チェックを行っている、まさに“映像の鬼”。オーディオ機器もフィリップスLHH2000、LINNのCD12、JBLのProject K2/S9500など、世界最高の銘機を愛用している“音質の鬼”でもある。音楽理論も専門分野。
 現在は評論のほかに、映像・ディスプレイ関係者がホットな情報を交わす「日本画質学会」で副会長という大役を任され、さらに津田塾大学の講師(音楽史、音楽理論)まで務めるという“3足のワラジ”生活の中、精力的に活動している。

著作


「ホームシアターの作法」(ソフトバンク新書、2009年)――初心者以上マニア未満のAVファンへ贈る、実用的なホームシアター指南書。
「究極のテレビを創れ!」(技術評論社、2009年)――高画質への闘いを挑んだ技術者を追った
「オーディオの作法」(ソフトバンククリエイティブ、2008年)――音楽を楽しむための、よい音と付き合う64の作法
「絶対ハイビジョン主義」(アスキー新書、2008年)――身近になったハイビジョンの世界を堪能しつくすためのバイブル
「やっぱり楽しいオーディオ生活」(アスキー新書、2007年)――「音楽」をさらに感動的に楽しむための、デジタル時代のオーディオ使いこなし術指南書
「松下電器のBlu-rayDisc大戦略」(日経BP社、2006年)──Blu-ray陣営のなかで本家ソニーを上回る製品開発力を見せた松下の製品開発ヒストリーに焦点を当てる
「久夛良木健のプレステ革命」(ワック出版、2003年)──ゲームソフトの将来とデジタルAVの将来像を描く
「ソニーの革命児たち」(IDGジャパン、1998年 アメリカ版、韓国、ポーランド、中国版も)──プレイステーションの開発物語
「ソニーの野望」(IDGジャパン、2000年 韓国版も)──ソニーのネットワーク戦略
「DVD──12センチギガメディアの野望」(オーム社、1996年)──DVDのメディア的、技術的分析
「DVD-RAM革命」(オーム社、1999年)──記録型DVDの未来を述べた
「DVD-RWのすべて」(オーム社、2000年)──互換性重視の記録型DVDの展望
「ハイビジョンプラズマALISの完全研究」(オーム社、2003年)──プラズマ・テレビの開発物語
「DLPのすべて」(ニューメディア社、1999年)──新しいディスプレイデバイスの研究
「眼のつけどころの研究」(ごま書房、1994年)──シャープの鋭い商品開発のドキュメント


前のページへ 1|2|3|4|5       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.