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大都会にも大自然にも似合う“男のカメラ”――「EXILIM G EX-G1」開発者に聞く永山昌克インタビュー連載(1/3 ページ)

» 2010年02月15日 11時00分 公開
[永山昌克,ITmedia]
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photo EXILIM G EX-G1

 春商戦に向けて、各社からコンパクトデジカメの新製品が続々と登場しているが、その多くは、どこかで見たようなデザインで、メーカーが違ってもまるで代わり映えがしない。トレンドと言われる機能や装備をつめ込み、効率や低コストを追求すればするほど、似たような製品になるのは仕方ないのだろうか。

 そんな中、個性的なデザインが際立つ1台のカメラに引きつけられた。カシオ計算機「EXILIM G EX-G1」だ。屈曲光学系によって薄型形状を実現したカメラは珍しくないが、ありがちな四角形の平坦ボディではなく、かといって曲線的なカワイイ路線でもない。メカっぽい雰囲気を持ちながら、スマートで切れ味鋭いアーミーナイフのようなイメージが漂っている。

 ボディの天面と側面はゆるやかな傾斜を描き、全体としては左右非対称のシルエットラインを形成している。外装の各パーツをつなぐパーテーションラインは直線と曲線が複雑に組み合わさって構成され、そのところどころにアクセントのようにビスが埋め込まれている。そして手に持つと、薄型軽量ながら金属がぎっしりと詰まった凝縮感が伝わる。防水・防塵・耐ショックカメラという触れ込みだが、各種性能をチェックする以前に、まずモノとしての存在感にたまらなく物欲が刺激される。

 そのEX-G1の開発者に、これほどとがったデザインの狙いや開発の経緯を聞いてみよう。話を伺ったのは、カシオ計算機 羽村技術センター QV事業部 商品企画部 第二企画室 宮坂淳一氏(商品企画を担当)と、同社 デザインセンター プロダクトデザイン部 第一デザイン室 橋本威一郎氏(デザインを担当)、同社 デザインセンター プロダクトデザイン部 第一デザイン室 室長 長山洋介氏(プロデュースとディレクションを担当)の3名だ。

photo 左から、長山氏、宮坂氏、橋本氏

デザイナーから発信された薄型防水モデル

――カシオの防水・耐衝撃デジカメといえば、2001年に「GV-10」、2002年に「GV-20」を発売していますが、今回のEX-G1は久々の製品になります。どういう経緯で開発に至ったのでしょうか?

宮坂氏: 世間的に、当社には「防水・耐衝撃」のイメージがあり、お客様やお店の人からは「防水のデジカメを出さないのか?」とずっと言われていました。また社内でも、防水・耐衝撃のデジカメの企画案が毎年のように提案されていました。しかし、GV-10やGV-20を発売した以降のデジカメの市場は、画素数をはじめとするスペックや基本機能の競争が激しく、防水は後まわしになっていました。これまで実現できなかったというよりは、ずっと持ち続けていた思いが今回ようやく結実したということです。

photo 左は2001年に発売した「G.BROS GV-10」。123万画素CCDや35ミリ相当の単焦点レンズを搭載する。右はEX-G1

長山氏: 私や橋本は、EXILIMブランドの立ち上げの頃からデジカメのデザインを担当しています。初代EXILIMの「EX-S1」(2002年発売)を作った直後に、EX-S1のような薄型デザインの防水モデルを社内でプレゼンしましたが、当時の状況は開発競争やスペック合戦が主流になったため、すぐには実現できませんでした。ただ、我々はカシオブランドの強みとして、タフネスのデジカメは確実にできると信じ、ずっとリサーチやプレゼンを続けていました。どちらかといえば、EX-G1はデザイン発のモデルという意識が強かったといえます。

photo 2006年ごろに、社内で提案された防水モデルのイメージスケッチ。車社会である北米市場に向けて、車のカップホルダーに気軽に入れられるスタイルを狙っている

――その間に、他社からはいくつかの防水デジカメが発売されましたが、はがゆい思いでしたか?

長山氏: そう感じないといえばウソになります。ただ我々が考えていたのは、他社製品のような、一般的に「防水デジカメ」と呼ばれるジャンルとは少々異なります。かつて、工事現場などで使われる防水・防塵・耐衝撃性を持つカメラとして「現場監督」というシリーズ(コニカミノルタ製)がありましたが、あれをもっと小型にして、スタイリッシュにしたモデルをイメージしていました。そこに、カシオにしか作れないもの、つまり腕時計「G-SHOCK」で培った耐衝撃の性能とブランド力を組み合わせれば、必ずニーズはあると確信していました。そういう意味では、EX-G1に競合製品はあまりないのかもしれません。

――EX-G1が、他社の防水デジカメと異なる点は何でしょうか?

宮坂氏: 製品だけではなく、EX-G1が持つ世界観を全部ひっくるめて発信していこうという狙いがあります。ウォータープルーフという言葉から、一般的に連想される海やプールでのレジャー用途というよりは、よりストイックな世界かもしれません。

長山氏: EX-G1が活躍する用途として、「Expert」「Spirit」「Groove」という3つのことばで表される撮影シーンを見立てたところから企画がスタートしました。Expertとは、過酷な状況のもとで行う仕事のイメージです。あらゆる悪条件でも使用できる性能を持ち、ひいては人の生命にかかわるような極限でも作動する、という狙いを込めています。

 2つめのSpiritはレジャー用途です。といっても単純な遊びではなく、例えば岩肌を登ったり、自転車で長距離を走るような、体力の限界に挑む本格的なレジャーやスポーツを含んでいます。3つめのGrooveは、音楽の世界での「ノリ」のようなものです。仲間が大勢集まって楽しみ、自分のスキルを競う合うような感覚ともいえます。デジカメをファッションで身に付け、着替えるという発想の商品は、これまでにあったでしょうか。そんなファッションや音楽の要素をコンセプトに取り入れているのです。

 そして、この3つの要素を合わせ、「Endurance」(耐久性、持久性)というキーワードによって、EX-G1の世界観を表現しています。

photo EX-G1はいつでも撮りたい時に撮れるカメラです。ふだんの仕事から趣味のスノーボードまで、私自身が幅広く活用しています(宮坂氏)
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