　なにより、レンズシフトやズーム、ピント調整が電動で行えるのはありがたい。エントリークラスでは、コスト削減のためこのあたりの機能が省略されている製品が多いが、この手軽かつスピーディにセッティングが行える点はとてもありがたいと思う。しかも、電動にありがちな「微調整がうまくいかない」こともなく、思い通りのセッティングにイッパツでまとめ上げることができた。こと設置性に関しては、文句のない内容といえる。

　VPL-VW90ESには、3Dサングラスが2つ同梱（どうこん）されている。トランスミッターはレンズの周囲に配置され、スクリーン反射で同期する仕組みだ。このため、トランスミッターのために別途配線する必要がない。今回は、視聴距離がスクリーンから5メートルほどだったが、問題なかった。なお、より広い視聴環境で使用する場合は、BRAVIA用として販売されている赤外線トランスミッターが利用できる。

HDMIリンクの恩恵

　さて、次に電源を投入。映像クオリティーをチェックする前に、まずはHDMI連動を“入”にして、AVアンプやプレーヤーとの連動状況をチェックしてみる。今回の視聴には、プレーヤーにソニー「BDP-S470」を、AVアンプにソニー「TA-DA5600ES」をチョイス。全製品をソニー製でそろえることとした。

HDMI連動をオンにすることで、電源のオンオフや自動ソース切り替えが一元で行えるようになる。これは便利だ

　まずVPL-VW90ESの電源をオフにすると、連動してすべての電源がオフになり、電源オンではすべての機器がオンになった。逆にプレーヤーの電源をオンにしても、VPL-VW90ESの電源は入らない。しかしプレーヤーにディスクを挿入、再生を開始することでちゃんと電源が入った。

　VPL-VW90ESには2系統のHDMI端子が用意されているので、試しにと、わが家のシステム、パイオニア「SC-LX71」（AVアンプ）とパナソニック「DMR-BW950」（BDレコーダー）を空いているHDMI2に追加接続してみる。すると、ディスクを挿入することで入力が切り替わり、電源オン／オフにすべての機器が連動した。ひと昔前とは大違い、プロジェクターも最新テレビ並みのHDMI連動機能を有している。これはありがたい。

　ちなみにリモコンには、入力選択を直接選べるボタンは用意されておらず、入力選択ボタンを押してから十字キーで選択する必要がある。サウンドセッティングばかりか、主立った調整項目も直接呼び出せるボタンが付いているのに、入力選択がワンボタンで行えないのはなぜかと思っていたが、HDMIリンクでほぼまかなえるからだろう。

はっきりくっきり、2D画質をチェック

　さて、肝心の映像クオリティーはいかがなものだろう。まずは2Dコンテンツから視聴してみる。

　1000ルーメンという輝度のおかげもあって、画面はかなり明るい。透過型液晶パネルと同等まではいかなくても、ひと昔前の反射型に比べれば格段の向上を果たしている印象だ。さすがに液晶テレビと同じ使い方はできないが、部屋を真っ暗にしなくてもそれなりに楽しめる。

「アンジェラアキ My Keys 2006 in 武道館（ESXL-2／6090円）」の映像。ライティングが眩しく輝く。2Dコンテンツにおいて明暗コントラストは充分以上。階調も細やか

　しかし、反射型パネルの真骨頂といえば、映画館のごとく真っ暗闇のなかで視聴する映像のクオリティーだろう。とくに感心したのが、映像のキレと色合いの深さの絶妙な両立だ。一見すると、キレのあるすがすがしい映像なのだが、色ノリが良くリアリティ感も高い。はっきりくっきりしながらも、ニュアンス表現はしっかりしているので、映像がとても美しく感じる。

　以前よりソニーのプロジェクターは中間調の表現に定評を持っていたが、このVPL-VW90ESでは、さらに明暗の両方向へ階調表現の巧みさが拡がっていったイメージだ。「アドバンストアイリス3」の効用もあるのだろう、ダイナミックさと緻密（ちみつ）さがうまく両立され、制作者の美意識がさらに伝わってくるようになった。

　一方動画性能に関しては、おしいといった印象。モーションフローははかなり良質な処理を施してくれるのだが、スクロールする画面などのスタート時や、速いスピードのカメラパーンなどでは多少ギクシャクしてしまう傾向がある。残像の少なさも含めて他のプロジェクターに比べるとかなり上出来な方だが、さすがにソニー製液晶テレビの4倍速ほどの完璧さは持ち合わせていない。是非とも2Dも4倍速に対応してほしいものだ。

●迫力の3D映像をチェック

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