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» 2011年03月04日 17時02分 UPDATE

麻倉怜士のデジタル閻魔帳:「DEGジャパン・アワード」で見えた“Blu-ray Discの今”(後編) (1/4)

後編では、DEGジャパン・アワードノミネート作の評価ポイントについて、審査委員長を務めたAV評論家・麻倉怜士氏に聞いていこう。映像と音にこだわって作られたBlu-ray Discの数々は、ホームシアターの宝になるはずだ。

[芹澤隆徳,ITmedia]

 前編では、DEGジャパンアワードの目的やBlu-ray Disc市場の動向について、同アワードの審査委員長を務める麻倉怜士氏に解説してもらった。後編では、各賞受賞作とノミネート作の評価ポイントを詳細に聞いていこう。

――まず、今年から新設された「ベストBlu-ray 3D賞」をお願いします

ベストBlu-ray 3D賞ノミネート作 発売・販売元
Disney's クリスマス・キャロル 3Dセット ウォルト・ディズニー・ジャパン
バイオハザードIV アフターライフ IN 3D ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
IMAX: Deep Sea 3D&2D ワーナー・エンターテイメント・ジャパン ワーナー・ホーム・ビデオ
ts_enmacho01.jpg 「Disney's クリスマス・キャロル 3Dセット」

 ベストBlu-ray 3D賞は、今年から設けられた新しい賞で、初の受賞作は「Disney's クリスマス・キャロル 3Dセット」となりました。ノミネートされた3作品の中では、審査員から圧倒的に支持されました。もっとも、仮に3D版「アバター」が市販されていれば受賞したはずですから、クリスマス・キャロルは実質的にはナンバー2といえるかもしれません。

 クリスマス・キャロルは3D CGアニメ作品です。アニメは人間の感覚に併せた自然な奥行きを作れるところがメリットで、中でもクリスマス・キャロルは完成度の高い3D映像を見せてくれます。奥行きのある街の風景、そこに降る雪の立体的な浮遊感などはとくにヴィヴィットで効果的でした。実写より自然といえるほどの3D感(つまりファンタジーを感じさせる3D感覚)があり、気持ち良く映画の世界に没入できます。3D映像として高いクオリティーを持ちながら、作品性も高い、素晴らしい3D作品です。

 一方、ノミネート作の「バイオハザードIV」は、3Dの効果は高かったものの、映像のディティールが少なく、人工的というか、少し違和感を感じる3D映像でした。その不自然性は作品にはあっていましたが、質感がのっぺりしていることは否めません。「Deep Sea」は、水中ものとしての効果は高いですが、今後に期待ということで。Blu-ray 3Dは普及が始まったばかりなので、トータルの作品パワーを重視して選びました。


――次は「ベスト高画質賞」の映画部門です

ベスト高画質賞映画部門ノミネート作 発売・販売元
アバター ブルーレイ版エクステンデッド・エディション 20世紀フォックス ホームエンターテイメント ジャパン
天空の城ラピュタ ウォルト・ディズニー・ジャパン
インセプション ブルーレイ&DVDセット(3枚組) ワーナー・エンターテイメント・ジャパン ワーナー・ホーム・ビデオ
ts_enmacho02.jpg 「インセプション」

 ベスト高画質賞は、ワーナーの「インセプション」が受賞しました。ほかに「天空の城ラピュタ」と「アバター」がノミネートされていましたが、アバターが出品されたことで、ほかのメーカーがいまひとつ積極的ではなかったという可能性はありますね。また、ラピュタも高画質ですが、どちらかというとレストアの域に入るかもしれません。

 インセプションは、クリストファー・ノーラン監督の作品です。第1回のDEGアワード・グランプリを受賞した「ダークナイト」もノーラン監督ですが、まったく絵が違うことに驚かされます。ダークナイトはテクニカルな高画質という印象で、作品性にとても合っていました。一方のインセプションは、画質がいいと言って良いのか微妙な部分もあります。映像の切れ味はシャープで、夢の中で年が浮かび上がるシーンや爆発シーンなどCGで美しく再現されています。ただし、夢の中のシーンなどは画質的に“使う道具が異なる”というか、意図的にぼやけた映像に仕上げている場面もあります。実はそれこそが“ディレクターズ・インテンション”でしょう。

 SDからHDに変わって解像度が上がったことを第1段階とするなら、第2段階として、そこで生まれた余裕を使ったり、あえて使わなかったりすることもできます。インセプションは、BDフォーマットの良さを生かして、さまざまな切り口で映像を作り、トータルな作品世界を描き出すことに成功しました。絵作りの複雑さでは、Blu-ray Discの新しい画質を引き出したと言っても良いかもしれません。まさに絵作りの進化です。


――続いて「ベスト高画質賞」ビデオ部門です

ベスト高画質賞ビデオ部門ノミネート作 発売・販売元
スペシャルドラマ 坂の上の雲 第1部 第1回 少年の国 NHKエンタープライズ
Healing Islands OKINAWA 2 〜宮古島〜 ビコム
NHK大河ドラマ 龍馬伝 SEASON? RYOMA THE DREAMER ブルーレイBOX NHKエンタープライズ
ts_enmacho03.jpg 「スペシャルドラマ 坂の上の雲 第1部 第1回 少年の国」

 ノミネート作を見ると、ビコムを除けばどちらもNHKです。確かにNHKは設備もスタッフもそろえていますから、出品やノミネートが多いのはうなずけます。一方のビコムは久留米市にある、わずか24人のマイクロプロダクション。少人数でも企画から撮影、編集、パッケージングまでをすべて自社で行い、こだわりのある作品を作っています。ビコムより大きなプロダクションやメーカーはたくさんあるのですから、高画質に賭けているビコムを見習って積極的に出品してほしいですね。

 さて、ベスト高画質賞ビデオ部門を受賞したのは、NHKエンタープライズのスペシャルドラマ「坂の上の雲」です。明治時代ならではの“ほこりっぽい雰囲気”がリアルに描かれた作品で、ぼろぼろの衣装など細部までこだわり、登場人物の表情に見ほれてしまうほど素晴らしい映像でした。

 面白いのは、同じNHKのビデオ撮影なのに「龍馬伝」と「坂の上の雲」が全く異なること。シネマ的なフィルターを使用したのか、あたかもフィルムのようなコントラスト表現を追求した坂の上の雲は、リアリティーよりも時代性やファンタジーを感じる作品性にあふれた映像でした。対して龍馬伝は、鈍重で冴えない映像でした。こだわりがまったく感じられませんでした。

――「ベスト高画質賞」のアニメ部門は接戦だったようですね

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