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» 2011年07月11日 13時02分 UPDATE

とりあえず楽しい:スマホと“萌”が10年の停滞を打ち破る? 「萌家電」を見てきた (1/2)

ソニーCSLと大和ハウス工業の共同プロジェクトが注目を集めている。Androidアプリを用い、スマートフォンからゲーム感覚で各種家電を制御するという試みは、スマートハウスに“エンターテインメント”という一石を投じる提案だ。

[芹澤隆徳,ITmedia]

 ソニーCSL(コンピュータサイエンス研究所)と大和ハウス工業の共同プロジェクトが注目を集めている。Androidアプリを用い、スマートフォンからゲーム感覚で各種家電を制御するという試みは、家電をネットワーク化して利便性を高めるスマートハウスに“エンターテインメント”という一石を投じる提案といえる。7月8日と9日の両日、「D-TEC PLAZA」で行われた公開実験を見てきた。

ts_daiwasony025.jpgts_daiwasony026.jpg 公開実験を行った大和ハウス工業の「D-TEC PLAZA」(左)。デモの様子。家電を擬人化したキャラクターがリモコン画面に登場する

 ユニークなのは、テレビやBlu-ray Discレコーダー、エアコンといった家電製品を擬人化し、アニメのようなキャラクターを作り出したことだろう。彼らがスマートフォンの画面に現れ、個々の機器操作やアップデートを指南したり、ストーリー仕立てのイベントをクリアすることで機器間連携のノウハウを教えてくれたりもする。秋にはソニー製品向けにAndroidアプリ「萌家電」が登場する予定で、同時に公開される開発環境「Kadecot」(カデコ)を使ってオリジナルのシナリオを作成することもできる(後述)。

ts_daiwasony041.jpgts_daiwasony043.jpg 秋にはソニー製品向けのAndroidアプリ「萌家電」が登場する予定。その後も順次リモコンアプリを追加するという

 家電をネットワーク化して便利に使うといった発想は、決して新しいものではない。エアコンはかなり古いモデルから標準的にHA端子を備えているし、今回の基盤技術になっている「エコーネット」が登場したのは1997年だ。しかし、家電製品への普及も期待されたエコーネットは、東芝のフェミニティシリーズ(現在は製品シリーズ名から転じて東芝のホームITシステムを指す)など、一部の採用事例があるだけで、現在も“鳴かず飛ばず”の状態が続いている。

 実際、わが家にも東芝製のエアコンが2台あり、専用ホームゲートウェイとBluetoothアダプターを導入すればPCなどからリモートコントロールが可能になるはずだ。しかし、専用ゲートウェイだけで10万円もすると聞けば一般家庭が導入するはずもなく、現状では付加価値とコストのバランスを欠いたシステムと言わざるを得ない(それでもエアコンの標準的な機能として採用し続けている点はすごい)。

スマホ普及が追い風

 過去10年に渡って家電ネットワークを研究してきた大和ハウス工業の吉田博之氏は、エコーネットをベースに「住宅API」も開発したが、反応はいまひとつだったという。「スマートハウスは各社が取り組んでいるが、HEMS(home energy management system:省エネ管理)ばかりで、節電や環境のためという“個人の気持ち”頼み。やはりユーザーが“欲しい”と感じるものを作らなければいけない」(同氏)と指摘する。

ts_daiwasony040.jpgts_daiwasony029.jpg 大和ハウス工業の吉田博之氏(左)とソニーCSLの大和田茂氏(右)

 1つのヒントが、2010年2月に行った「スマートハウス」実験にあった。ここでiPhone用のリモコンアプリを用いてエアコンなどの家電製品を操作してみせると、まずマスコミが注目した。もちろん人気のiPhoneを使ったことが大きな理由だが、従来のように高価な専用端末やハードルの高いPC用アプリでこうはいかなかっただろう。

 一方、ホームネットワーク環境を考える上でもスマートフォンが登場した意義は大きい。なにしろ、高速なプロセッサと液晶画面を備え、無線LANやBluetoothによる通信が可能な使いやすい端末が、“すでに手元にある”状況を作ってくれた。さらに周囲を見てみれば、AV機器はネットワーク対応が当たり前となり、スマートフォンを無線リモコンにするアプリが人気を集めている。ソニーコンピュータサイエンス研究所の大和田茂氏は、「スマートフォンの発展はブレークスルーだ」と指摘する。もちろん、各家電の接続手段や橋渡しを行うゲートウェイ機器といった課題は残るものの、環境構築にかかるコストは大幅に抑えられる。

 もう1つ重要なのは、「家電では、ユーザーの気持ちに訴える技術が大切。そこを掘り下げる必要がある」(大和田氏)。エンターテインメントの要素を持ち込むことで商品としての付加価値を高め、ユーザーの興味や物欲を喚起する。“欲しい”と思う人が増えれば生産量も増え、ひいては導入コストも下がるという考えだ。

ts_daiwasony022.jpgts_daiwasony023.jpgts_daiwasony024.jpg ストーリーゲーム開発環境「Kadecot」(カデコ)の概要と実際の出力画面

 そのためのツールが、同社が秋に公開するアプリ「萌家電」およびストーリーゲーム開発環境「Kadecot」。Kadecotでは、話者(キャラクター)を決めて発言内容をテキストで記述するだけで基本的なシナリオができる。もちろんキャラクター画像やアニメーションデータを用意する必要はあるが、「Photoshop」から直接出力できるエクスポーターを用意するほか、Photoshopを持たない人でもテキスト形式の設定ファイルを自分で記述できるという。Android向けのゲーム開発言語というとハードルが高く感じるかもしれないが、その画面を見る限り、個人でも容易に取り組めそうだ。

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