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着実に進歩する各社のスマートテレビ戦略(2)IFA 2011(2/4 ページ)

» 2011年09月07日 15時54分 公開
[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

TVをより“スマート”にするスマートハブ戦略のSamsung

Samsungブース

 今回、おそらく最も巨大なブースを構えていたとみられる韓国Samsung。別エリアにある白物家電コーナー、商談ブースや外のテントブースまで含めれば、競合他社に比べても2倍近い面積を占めていたとみられる。IFA会期中にドイツの裁判所でGalaxy Tabの出荷中止命令を受け、展示コーナーから発表されたばかりの「Galaxy Tab 7.7」が急きょ撤去されるといった問題こそあったものの、「タブレット不在」という問題を除けばコンシューマー向け製品ポートフォリオも最も充実していたメーカーの1つだといえる。

 同社で興味深いのは、PC向けなどに利用される液晶モニターも含めてインテリジェント化を進めている点だ。スマートテレビに関して、ほとんどのメーカーではリビング向けの大画面TVを主軸に据え、どのように一般に浸透させるかで各社は試行錯誤を続けているが、汎用タブレットやスマートフォンとの連携、アプリを使った機能拡張といった方向性を見出しつつある。Samsungは自社のPC向けモニターにおいてもこういった拡張の概念を導入し、例えばモニターの近くにノートPCを持ってくるとWi-Fi接続で外部ディスプレイとして利用でき、コンテンツ再生や簡単なWebサーフィン、デバイス連携はPCなしで行えたりと、適材適所でデバイス接続ができたり、個々での動作が可能になるといった工夫が凝らされている。家電メーカーであればTV、PCメーカーであればPCといった形に偏りがちだが、このあたりは総合メーカーならではのアプローチだろう。

PC向けディスプレイなども含め、TV装置のインテリジェント化を積極的に推進している。その1つがWi-Fi経由でのPCからの画像転送。使用しているテクノロジーに関しては確認がとれなかったが、どのPCでもケーブルレスでWi-Fi経由でのディスプレイ接続が可能になるという(中)。同社のHub Monitorシリーズでは、ソーシャルネットワークやネットワーク動画プレーヤーなど、基本的な機能の数々をアプリとして実装することで、PCレスでモニターのみでの運用を可能にするという(右)

 スマートテレビ部分に関しては競合他社に近く、TV、スマートフォン、タブレットを使ったデバイス間連携やリモコンアプリ、そしてアプリによる機能拡張など、セオリーを一通りなぞっている感じだ。個人的に興味深かったのは、前述の裁判所命令でSamsungブースではタブレット製品の展示がなくなり、IFA全体ではT-MobileやVodafoneといった携帯キャリアの端末ディストリビュータブースで散見される程度だったのだが、唯一このスマートテレビのデバイス連携デモのところで初代Galaxy Tabを見つけることができた。Androidタブレットでは最大手の同社だが、それを使ったソリューションを晴れの舞台で披露できないところがなんとももどかしい。

こちらはいわゆるリビングルームに設置するタイプの従来型のスマートTV製品。アプリによるリモコン連携があるのは他社の戦略とほぼ一緒だが、ここで使用するのはGalaxy S IIとGalaxy Tab(初代)となる。単純にリモコンとしてでなく、TVと同じ映像をセカンドモニターとして見たりといったことが可能だ

先ほどのHub Monitor同様、大画面TVでもSamsung Appsと呼ばれるアプリ実行環境が利用できる。動画や音楽再生、ニュース等の情報取得、ソーシャルネットワーク、ゲームなどがアプリの中心だ(左)。スマートTV向けリモコン。キーボードつきもある(中)。Skypeによるビデオチャットを実行中。上部にオプションのカメラがついている(右)

 ちなみに、本来Galaxy Tab 7.7が展示されていたとみられるスペースには、同社独自のOSプラットフォームである「Bada」をベースにした「Samsung Wave 3」が展示されていた。GoogleのMotorola Mobility買収を受けてAndroid偏重からBadaへの投資を増やしていくという報道も出ている昨今だが、結果的にWave 3の展示スペースが一気に拡大してAndroid製品を凌駕した形となり、Androidから一歩引いた印象すら受けたSamsungブースの展示だった。

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